2018年10月26日金曜日

台湾・脱線事故、責任は?

台湾で特急列車の脱線事故が発生しました。
台湾北東部・宜蘭県(ぎらん)蘇澳(すおう)という所で発生した事故で、18名が死亡すると言う大惨事です。

この列車「プユマ号」を製造したのは日本、愛知県豊川市の「日本車輌製造」が2012年から2015年にかけて台湾に納入した車両だそうです。
まだはっきりとした自己原因は解っておりませんので、日本車輛から調査に出向くそうですが、マスコミは「運転士『ATP切った』と証言」などと運転手のミスの様に報じられております。

日本では「ATS」という装置で、「Automatic Train Stop(自動列車停止装置)」と言うものですが、ATPは「Automatic Train Protection(自動列車防護装置)」と言うもので、若干異なる装置のようです。

台湾では、「安全運行のために必要な装置である」と言う認識はあるものの、警報音がうるさく、こうしたシステムを“過剰”と捉えて嫌がる運転士もいるそうです。
事故を起こした運転手もこうした運転手の一人だったのでしょうか?

そして一番気になるのが、事故直前に運転士が動力の異常を通報していたことです。事故に合った乗客の証言にも、「何度か急停車していた」とありますから、列車事態にすでに異常が発生していたとも考えられます。

日本の場合、こうした異常が発生すると列車の運行を止めて対応すると思います。ダイヤは混乱しますが事故は防げますし、異常が発生していると思われる列車の乗客を別の車両に乗せ換えるなど、場合によってはバスなどの代替運行を行ったりしております。

今回の台湾事故は、列車がATPによって止まってしまうのでATPを切って運行を続けたようです。
台湾の夏は暑く湿度も高いわけで、電子部品にとっては過酷な環境です。その夏が終わったあたりが故障発生の可能性は高いわけです。
しかし、この季節は観光シーズンでもあります。故障と判断して列車を止めれば、大きな損失が出ることは間違いありません。

この運転手は損失の出ることの方を恐れたようです。そこでATPを切って運行を続けたと考えられないでしょうか。
運転に自信のあった運転手かも知れませんが、すでに列車の性能が高くなり、スピードなどもすぐに出てしまう列車で、これまでATPによって抑えられていた速度調節が、ATPが切られれば出来なくなることに、一瞬の遅れで気が付いた時は、100キロを超えるスピードとなり、もはや手遅れだったと言う事故の様に思います。

鉄道のカーブは実に微妙な設計です。とはいっても19世紀のアイディアですけど。レールと車輪をテーパー(円錐形)で設置し、カーブの遠心力とのバランスで左右の車輪の直径を変えて曲がります。

鉄道が進化してスピードが増すと、もはやこのカーブにおける速度調節は腕のいい運転手でも不可能になってくるのです。そこで電子装置を使って、カーブの時の速度調節を素早く、そしてこまめに行います。こうすることで列車のスピードが上げられ、目的地への到着を早く出来るようになった訳です。

東京の電車も同じです。昔に比べてスピードはかなり速くなり、駅への侵入速度もあがりました。乗客に違和感を感じさせないる停止曲線を、電子装置がきちんと制御するからです。もちろん発進の時も同じです。そして日本の電車はラッシュ時に列車の本数が増やせて、ラッシュ緩和の役に立ったのですが、同時に駅での列車接触死亡事故が増えました。

駅への侵入速度が速くなったからだと思います。歩きスマホなどで乗客の安全認識は下がっているのに・・・
そこで鉄道会社は、仕方なく駅に「ホームドア」を付ける必要が出てしまったのです。(あれは自殺防止扉ではありません)

今回の台湾での脱線事故は、こうした技術進歩の反面、人間の尊厳の負の側面が出てしまったような気もします。腕に自信のある運転手が、ATPを切ってしまうという事です。

最近購入される乗用車にも、このような電子安全装置が付けられております。バックする時など自分の車が鳥瞰出来る装置なども付けられ、バックミラーでも見えない死角にもセンサーが付けられて警告音が出されます。
しかし、腕に自信のあるドライバーはこの安全装置を「ピーピーうるさい」として切っているようです。切るかどうかは自由ですが、今後出て来るであろう走行中の車同士の通信dえ事故を防ぐ装置などが出てくれば、相手が切っていて事故が起きた場合は法的責任がいままでとは異なるように思います。

電子安全装置が警告を発した場合は、安全装置の故障も考えられます。しかしそれでも、列車を止めて調査をするように法規制した方がいいのではないでしょうか。
台湾政府に希望する次第です。安全合理性と経済合理性は背反するものですからね。

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