9・11で崩壊したニューヨーク貿易センタービルの跡地、グランド・ゼロ。
そこのすぐ近くにイスラム教のモスクを建設する計画が立ち上がったのは今年の8月3日。
ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が「世界で最も自由な都市がニューヨークだ。この事実がニューヨークを他の都市よりも強い、特別な都市にしている。夢を抱く人、一生懸命に働く人、規則に従う人すべてに(ニューヨークの)扉は開かれている」と述べ、事実上この建設計画を認める発言をしました。
市の経済的な思惑も働いたのでしょう。モスクはイスラムの礼拝場だけでなく、スポーツセンター、劇場、レストラン、デイケアセンターなどを併設した複合施設になる予定で、「モスクは欧米とイスラムとの架け橋となる」「地味なロウアーマンハッタン(Lower Manhattan)の風景を変えるものだ」「9.11以降のイスラム教徒に対する米国人の見方が変わる」との意見も多く聞かれるニューヨーク市民達でしたが、当然反発するキリスト教のグループも居るのは当たり前です。
同時多発テロによって、アメリカ国内で肩身の狭い思いをしているイスラム教徒たち。おそらくその悪いイメージを払拭することを考えての発案なのでしょう。
しかし当然ながら事態はそう単純には運びません。
同時多発テロから9年目の今年、フロリダ州ゲーンズビルにある「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」のキリスト教会が、9月11日にイスラム教の聖典コーランを焼却するデモを行おうと発案しました。
驚いたのはアフガニスタンに駐留している米軍のペトレアス司令官。そんなことをしたら米国の評判をおとしめ、アフガンに駐留する米軍部隊を危険にさらすと猛反対です。
しかし教会側は11日を「国際コーラン焼却デー」としてインターネットで参加者を募り始めたました。
リーダーを務めるのはこの教会の牧師であり、またホテルの支配人でもあるテリー・ジョーンズ氏(58歳)。反イスラム的発言を昔からしていた人のようですが、今回はコーラン焼却デモへの参加者をインターネットで集め始めたことから、このデモの支持者が数千人にも膨れ上がってしまいました。
それを知って、エジプトやインドネシアなどのイスラム教指導者がアメリカ非難の声明を出したほか、アフガンの首都カブールでは抗議デモも発生しているとか。
オバマ大統領は、「イラクやアフガニスタンにいる米兵を危険にさらす。ばかげた行為で、米国の価値観と完全に相いれない」として反対を表明しました。
そこで振り上げた拳の下ろし方として、ジョーンズ氏が持ち出したのが、世界貿易センタービル跡地(グラウンド・ゼロ)近くのモスク計画を中止することとの交換条件。
そして、この建設計画を主導しているイスラム教聖職者と、建設予定地の移動で合意したと発表して、コーラン焼却デモの中止を発表したのですが・・・
ところが今度はイスラム教聖職者が猛反発。ジョーンズ牧師が記者会見で「モスク建設場所を移動する合意」を発表して引き上げた直後、同じフロリダでイスラムの聖職者を務めるムハンマド・ムスリ師が、「合意に達したのは11日のニューヨークでの会談だけで、ニューヨーク側から移転の申し出はない」として、「モスク建設地の移動はしない」と言い出しました。
それに呼応するかのように、ニューヨークの聖職者・ファイサル・ラウフ師も「コーラン焼却の中止は喜ばしいが、交換取引はしない」と言い出す始末。
ジョーンズ氏は、「我々は騙された」と述べ、コーラン焼却デモは「中止ではなく、一時棚上げにしているだけだ」とするなど、泥沼化の様相を呈してきました。
日本が中共の間接侵略に手を焼いているように、アメリカもまたイスラムに手を焼いています。
「おとなの対応」が待たれるのですが、まだまだ危険なゲームは続くようですね。
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