2016年7月15日金曜日

仲裁裁判所の裁定、認めない中共

南シナ海の人工島を巡って、オランダ・バーグの常設仲裁裁判所にフィリピンが訴えていた問題で、仲裁裁判所の裁定が7月12日にでました。

先ずは海洋法に関する国際連合条約が明確にされたようです。内容は変わっているわけではありませんが、明記されたと言うことです。

島とは、高潮の時にも水没しない場合を言うのだそうです。そして人(どこかの国民)が住んでいれば、その島を中心としてEEZ(排他的経済水域)が主張できますが、人が住んでいない場合は単にその海域をその国の単なる領海とするのだそうです。

そして高潮の時に水没し低潮の時に現れる、いわゆる「低潮高地」の島は島ではなく「岩礁」として、この場合は領海とは定義しないと言うことが明確化されました。

その上で・・・
(1)中国が主権を主張する「島」は岩礁であって島ではないので周囲に排他的経済水域(EEZ)を主張する権利はない。
(2)それらの岩礁を埋め立てて人工島化するのは環境破壊であり国連海洋法違反である。
(3)南シナ海で他国の漁業活動を威嚇妨害するのは伝統的漁業権を侵すものである。
として、ほぼ全面的にフィリピンの主張を支持するものとなったそうです。

そして、南シナ海での領有権を主張するために独自に設定している境界である「九段線」の内側の海域について「中共が歴史的権利を主張する法的根拠はないと結論付けた」と述べ、「中共はフィリピンの主権を犯している」と裁定しました。
これによって「九段線」が否定され、当然この領空とする権利(防空識別)も否定されたわけです。

もちろん中共側はこれに反発、(この裁定を)受け入れられないとしました。そして戴秉国(たい・へいこく)前国務委員は、この裁定を「ただの紙くずだ」と言い捨てました。

これを聞いたアメリカのキャンベル元米国務次官補は、「8月の砲声を聞くことになる」と警戒感を示したのです。8月の砲声とは、1914年の第一次世界大戦勃発を意味する言葉だそうですね。

フィリピン政府は南シナ海で中共が主張する管轄権を否定したこの仲裁裁判所の裁定を、尊重するよう、中共政府に対し強く求め、モンゴルで15日に開幕するアジア欧州会議(ASEM)首脳会合でも南シナ海問題を提起する方針を明らかにした模様です。

中共はASEAN諸国に圧力を掛けます。ASEAN(東南アジア諸国連合)は南シナ海での仲裁裁判所の判断を支持する内容の共同声明採択しようとしましたが、議長国のラオスが「コンセンサスが得られなかった」として断念したとのこと。
カンボジアなど親中共の加盟国が反対したためと見られております。経済の実権を華僑に握られているASEANの国々にとってはつらいところでしょう。

このASEANの共同声明を必死で作ったフィリピンは、次の手として7月15日からアジア欧州会議(ASEM)首脳会合で、フィリピン側が全面勝訴した仲裁裁判所の裁定を、「関係当事者が裁定を尊重する必要性」を訴えるそうです。
先月末に発足した中共寄りのドゥテルテ新政権に対して、中共側は「裁定を紙くずと認識して棚上げし、交渉のテーブルにつくことを希望する」などと圧力を掛けております。

ASEMにはドゥテルテ大統領ではなくヤサイ外相が赴き、「ルールに基づく対応」を訴えるそうですが、ここには日本も参加しますから、安倍政権にとっても「いかにして中共を裁定に従わせるか」、その手腕がアジアの国々の前で試されるわけです。

中共はすでに、この仲裁裁判所の裁定の裏に「日米」が居るとして非難する構えです。仲裁人(判事に相当)を任命した柳井俊二・元国際海洋法裁判所所長が、政府の有識者懇談会の座長を務めたことから「安倍(晋三首相)による集団的自衛権行使の容認を助け、国際秩序への挑戦に大きな役割を果たした」などと訳の判らぬ批判し、仲裁人がフィリピンや「一部の国」から「報酬を受け取り、便宜を図った」などと妄想のような因縁を付けております。

実は中共こそが仲裁手続きを進めていた仲裁裁判所所長に個別接触を図ろうとしていたそうです。
裁判所からの公判参加要請には応じず、仲裁人への圧力につながるこのような行為を続けた中共側に、裁判所が悪い心証を抱き、かえって不利な裁定につながった可能性もあるそうです。

習政権は足◯いています。
中共が孤立していないことを人民に知らせようと、インドが中共の意思を支持したなどと嘘をついたり、沖ノ鳥島も岩礁だと因縁を付けて、あの海域に出て来るかも知れなかったり、フィリピン政府を恫喝したりしております。
沖ノ鳥島は高潮でも水没はしていません。ですから一応島の定義に入ります。しかし小さな岩が水面に出ているだけで、現在は周りを波消しコンクリートで囲って浸食されないようにしております。これが後日中共の言い分などで国際法上どうなるか判らないからです。

台湾の蔡英文総統は「(台湾の)権利を深刻に傷つけた」と裁定を批判しました。これはスプラトリー諸島のイトゥアバ(太平島)と言う島を台湾が実効支配しているからです。
これを島ではなく岩礁とされると、領海が失われ漁業に深刻な影響があるからかもしれません。しかし、島の定義が国際法上明記されれば、おそらく蔡政権は従うでしょう。「裁定を受け入れない」とは発言しておりませんからね。

中共はこれで明確に国際法上「アウトロー」になりました。このアウトローを慕う日本国民は、いったいどのくらい居るのでしょうか・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿