2015年12月7日月曜日

我が国の防衛産業は大丈夫か

経団連(榊原会長)が今年9月に出した日本の「防衛生産・技術基盤の強化や装備品の国際共同開発・生産の推進に向けた提言」では、「中期防衛力整備計画のもとでは、オスプレイやAAV7(Amphibious Assault Vehicle:水陸両用車両)などの高額な装備品が短期的に海外から導入され、国産の装備品の調達が大幅に減少している。」として、国内防衛産業の危機を次のように訴えます。

「防衛装備品の開発や生産には、特殊かつ高度な技能・技術力・設備等が必要である。防衛需要に対応した技術開発や基盤維持等の投資のためには一定の予見可能性が求められるが、中長期的な施策やロードマップが明確でない。防衛関連事業から撤退する企業も出て、一旦その基盤が喪失されると、企業の再参入は難しく、これまで培った技術的な優位性は失われる。」と言うわけです。

また、「防衛装備移転三原則によって欧米諸国等とは装備品の国際共同開発・生産の推進を図る一方、安全保障面で協力関係にあるアジア諸国等へは装備品の供与が進められている。しかし、わが国の防衛関連企業には、防衛分野の国際市場における実績がほとんどない。」と、原則があっても移転の手続を含む仕組みがないことも訴えております。

そして、「わが国が有する高度な技術開発力は、それ自体が他国に対する抑止力である。」としながらも、「最先端の技術開発力を失えば、わが国は防衛生産・技術基盤を海外の政府や防衛産業に依存することになり、装備品の自主的な運用が困難になるなど、大きな問題が生じる。」として「防衛事業に大きな影響が生じないよう、緩和策が必要である。例えば、国として一定程度の国内調達を優先することや、輸入装備品のメンテナンスなどを可能な限り日本企業が行えるようにすることが求められる。」としております。

さて、産経によりますとオスプレイや水陸両用車AAV7などの購入のしわ寄せが、いよいよ弾薬や被服など“地味”な分野の予算に及びつつあるようです。
「弾薬は設備産業だ。火薬などを扱うので設備の維持管理に大変な費用がかかる。ところが今は負のスパイラルに入っている。(予算削減で)操業度が落ち、単価が上がる。予算には上限があるので生産数が減る。この繰り返しだ・・・」と自衛隊向けの弾薬を作っている国内企業が窮地に立っていると言うわけです。

弾薬の需要は、日本では自衛隊以外にはほとんどありません。平成2年度には900億円あった予算も、平成27年度には500億円まで減少し、ハイテクとはならない防衛産業にしわ寄せが来てしまったようです。

その原因は、島嶼防衛など対中シフト移行に必要となる新規装備品を、防衛省が「まとめ買い」してしまったことにあるようです。
そしてまとめ買いはハイテク兵器であるオスプレイにまで及び、12機を揃えるのに4機ずつ3カ年度に分けて調達すれば1504億円かかるとして、12機をまとめて1321億円で購入することにしてしまいました。
そうすれば183億円のコスト減になると言うからです。

しかし、この考え方はおかしいと思います。たった183億円を節約して何になるのでしょうか。このお金は公共投資に該当するもので、スーパーマーケットでの買い物とは異なるものです。
アメリカに渡ったお金は貿易赤字分となり、日本の民間企業の輸出で取り返せます。民間企業は国内にそのお金を回すでしょう。
節約すれば、それだけ世の中にお金が出回らなくなるだけです。

オスプレイというハイテク飛行機は、1年ごとに進歩するはずです。不具合を改良したり性能を少しずつ上げたりするはずです。
1年ごとに4機づつ購入することに意味があるのではないでしょうか。

こうして年間予算がたの防衛装備品出回れば、国内の防衛産業も潤います。それは日本の安全保障にとって良いことではないでしょうか。
国際的にも、弾薬は原則として自国生産で賄うのは常識で、国内防衛産業の衰退は、総合的な「国防力」の弱体化を意味するそうです。
そうまでして183億円を節約しても、何の意味もないと思います。次年度予算で賄えば良いだけです。

自衛隊員向けの被服を作る縫製産業の関係者も、予算減で零細工場が窮状に陥っているそうです。まさか中共製の被服を購入するつもりじゃないでしょうね。もしそうなら、南米やアフリカに縫製工場を持っていって指導した方が余程意味があるように思いますけどね。

先日、自民党本部で開かれた防衛関係議員の勉強会で、この様な意見が業界関係者からも出ていたそうです。
この勉強会の事務局長である佐藤正久元防衛政務官は、「国内産業の基盤を維持するという防衛省の方針と、実際の数字が全然あっていない」と述べ、「国内防衛産業の衰退は、総合的な「国防力」の弱体化を意味する。地味だが不可欠な経常経費が削減され続ければ自衛隊の精強性は維持できない。単なる『業界の陳情』と見過ごすことは出来ない」と言うことでした。

出席議員からは、オスプレイ調達計画の再検討も必要だとの意見もあり、日本の防衛のあり方は再建党する必要がありそうです。

トルコ上空を17秒間侵入したロシアの戦闘機はトルコ側に撃墜されました。領空防衛が世界的にピリピリしてきています。日本の領空を飛行した中共の偵察機を、自衛隊がスクランブルで撃墜する可能性も出てきています。(相手の操縦ミスで事故が起きる場合も含めて・・)
中共との間にいつ戦争の危険が生じるかわからない昨今、総合的な「国防力」の弱体化は許されるものではありません。

防衛装備庁にはもっと防衛力強化につながるようなお金の使い方をして欲しいものですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿