2017年5月9日火曜日

マクロン氏が新大統領・フランスで

「国民戦線」のルペン候補か、それとも「前進!」のマクロン候補か、それで争われていたフランスの大統領選挙は、マクロン氏の勝利で幕を閉じました。

今回の選挙は、事実上の「EU脱退」か「EU残留」かが焦点だったようです。ルペン氏はフランス国民がEU残留派が多いと知って、選挙終盤にそのことを言わなくなりましたが、しかし結果は明らかにフランス国民はEU残留を求めたといって良いでしょう。

EU脱退を決めた英国にとっては残念な結果だったかも知れませんが、ドイツ・メルケル政権にとっては、とりあえずホッとした結果だったように思います。
しかし、フランスの経済は今、危機的状態にあります。この5月には鉱業・製造業がこの一年で3.7%も落ち込んだと発表されました。そして「上向きになる兆しはまったく見られない」とは経済アナリスト達の揃った意見です。

フランスでは所得税が約60%で、給与の半分以上が税金として取られてしまうようです。また消費税は20%、そしてその政府は国民に何もしてくれないというおまけがつきます。
フランスの労働者は皆「怠け者」だそうです。怠け者と言うのはフランスには週35時間労働制と言うのがあり、余り働かないからだそうですが、週35時間というと7時間/日労働で5日ですから余り日本と変わりませんね。
そこに大量のアラブ系と黒人が移民し続けていると言うのが実態だそうです。

マクロン氏であろうとルペン氏であろうと、このフランス経済はどうしようもないだろうと言うのが大方の見方で、EUに残留しても良いことはなさそうです。

ドイツと比較すれば、GDPはドイツよりも10%程低くなってしまったそうです。10年前はドイツと拮抗していたのですが。
そして経済規模はドイツの約4分の3になってしまったとか。

フランス国民から見れば、「フランスは手厚い給付制度と強い労働組合のおかげで、包括的な福祉国家を実現している」という見方と、「必要以上に大きくて介入ばかりする政府は長期的な衰退を招く原因でしかない」という見方があるとか。どう見ても後者の方が正しいように思いますけどね。

そして今回の大統領選挙では、前者の「フランスは手厚い給付制度と強い労働組合のおかげで、包括的な福祉国家を実現している」という見方が勝ってしまったようです。

マクロン新大統領は、少なくとも共産主義者ではありません。「ファシズムと共産主義は20世紀において最大の災いだった」と発言しておりますから、中道派に属するのでしょう。
しかし、ロスチャイルド家の銀行「ロチルド & Cie」に努め、2010年に副社長まで出世した人物で、2012年からオランド大統領の側近を務めていたと言います。

2014年にマクロン氏は、オランド政権の経済相となり経済改革政策(規制緩和)を盛り込んだ「経済の成長と活性のための法律案」(通称「マクロン法」)を議会に提出します。
しかし、与党である社会党から反発され、その他の方面からも多数の反対意見が出るなど混乱してしまいます。この時、首相だったマニュエル・ヴァルス氏がフランス共和国憲法49条3項に訴え、国民議会の表決を経ることなく法案を採択させたのです。2015年8月、この法案は発行されました。

昨年4月、「左派右派のあらゆる良き意思を結集」して「左派でも右派でもない政治」を目指すと宣言して「前進!(アン・マルシェ!)」と言う政治運動を始めます。
そして8月に経済相を辞任、「フランスの景気低迷や社会的な格差拡大に対し、独自の解決策を打ち出せるようにするためだ」と説明します。これが国民から大統領選出馬を見据えた動きとみられました。

そして2017年、大統領選挙に立候補したマクロン氏は、4月の第一次選挙でルペン氏との決選投票を決めます。
この時点で、フランス国民ははっきりとこれまでの右派と左派の政党に見切りをつけたのです。マクロン候補は「前進!」から、そしてルペン候補は「国民戦線」からの候補者で、共和党でも社会党でもありませんでした。

マクロン大統領率いる「前進!」は政党ではありません。そしてフランス国民は「現状維持」でマクロン候補を選んだのでしょう。
しかし「マクロン法」などを見ても判るように、規制緩和による経済成長の路線に持っていくように思います。これは国際金融にとっては良い方向でしょうが、国家・フランスにとっては、その歴史と伝統が「溶解」してしまう危険性を含んでいるように思います。
裕福層であるマクロン氏、反発もあるようで今後のルペン氏の動向も見逃せません。

頑固な保守の英国はEU脱退を決め、メイ首相は国民に支持を訴えております。英国もフランスも今は共通の災い、「移民と難民」を抱えて、「さてどうしようか?」という所に来ています。
両国の低迷する経済は、フランスと英国でどちらが先に回復していくかを我々は見ることが出来るでしょう。(両方ダメかも知れませんが)

今後ドーバー海峡が、ある意味でリトマス試験紙になるかも知れませんね。フランスは、次は6月の下院選挙が待っております・・・

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