2017年5月7日日曜日

日本の鉄鋼に関税・トランプ政権

特に日本だけではありませんが、トランプ政権は輸入品に関して高率の関税をかけ始めました。
アメリカに不当な安値で輸出している炭素合金鋼に対して掛けたものですが、日本、韓国、ドイツなど8カ国に反ダンピング(不当廉売)関税を掛けることが正式に決まったそうです。

その税率は、JEFスチールなどの製品が48・67%、東京製鉄などの製品が14・79%だそうです。そしてその他の国、韓国、ドイツ、オーストリア、ベルギー、フランス、イタリア、台湾の炭素合金鋼には148・02~3・62%の反ダンピング関税を課すことにして、さらに韓国には韓国政府が輸出補助金を出しているとして、相殺関税を4・31%上乗せするそうです。

炭素合金鋼とは、刃物やバネ材などに使うものですが、炭素鋼に比べて高価です。小さいものなら安い炭素鋼でも十分なのですが、大きな刃物やバネなどになると炭素鋼では熱処理の時にムラが出て良い製品が作れません。炭素合金鋼なら大きな製品が安定して出来るのです。

ほとんどの軍事物資には鋼材が使われます。その材料を輸入製品に頼っていたのでは確かに安全保障上問題になるでしょう。
そこでアメリカの鉄鋼業をバックアップするためにトランプ政権はこのような関税を掛けたのでしょうか? そしてアメリカの鉄鋼業はこれによって息を吹き返すことが出来るでしょうか。

さらに、自動車産業などもこの炭素合金鋼を使っているはずです。関税によって調達コストが高くなれば、あるいは国産の高い炭素合金鋼を使うようになれば、当然コストがアップします。
自動車を輸出したいのであれば、それは逆効果になるのではないでしょうか。

炭素合金鋼のアメリカの需要は伸びているようです。韓国の対米輸出は2015年に30万トンになり、それは2013年の約4.2倍だったと言います。日本からの対米輸出は2015年で7万1200トンで、13年の約1.6倍だったそうです。

アメリカの鉄鋼業が低迷したのは、設備投資の遅れが原因ではないでしょうか。日本が転炉を完成した時、アメリカはまだ平炉であったことを思い出します。
日本の製鉄業がアメリカを凌ぐようになったのは、この設備投資競争に先行できたからだったと思います。

その後、鉄鋼にもさまざまな改良が加えられ、クロム鋼やクロムモリブデン鋼、そしてニッケルクロムモリブデン鋼など「質量効果」の改善に各国とも努力してきました。
このような鉄鋼の改良には高額な研究費がかかります。試験炉を作って合金を作り、物性試験を繰り返す必要があるからです。

鉄は他の多くの元素と結びつき、微量であっても極端に性質を変えてしまうことがあります。日本刀が「神がかり」的な作り方になったのも、水に含まれる微量なイオン金属が作用して始めて名刀が打てたからではないでしょうか。

最近はコンピュータシミュレーションで配合を絞り込むことが出来ますが、それでも最終的には実験によって配合比が確定するわけです。

もしかすると、このアメリカの鉄鋼業に設備投資をさせなかった背景に国際金融資本がいるのかも知れません。鉄鋼関係の利益を株主配当で持っていってしまい、投資の方は人件費の安い国へ持っていってしまうという癖が、アメリカの鉄鋼業を衰退させたのかも知れません。

国際金融資本の人達は国境を嫌います。金融が、出来るだけ自由に資金移動の出来ることを望んでいるからでしょう。ゆえに反国家主義になりやすい体質のように思います。
国境を低くし、自由になれば平和になるなどと思っている人達がおります。しかし現実はモラルが下がり格差が広がり、テロリストが横行し始め、これまでとは違った残虐な闘争が生まれてきたのです。

かつて、新日鉄のどなたかが「鉄は国家なり!」と断じたことがありました。その後、随分「揶揄」されていましたが、今になって思うとまさに正論だったようです。
国際金融資本に入られると、鉄鋼業は衰退するようです。研究費が無駄として配当に取られてしまい、融資を求めると人件費が高いなどと言われて拒否され、そして国際競争に負けていくわけです。

鉄鋼業から反国家主義を排除し、国家の命運を掛けて再生することがトランプ政権の目指すものなのかも知れません。

しかし鉄鋼は他の産業の基礎ともいえる分野です。課税は他の産業のコストアップを招き、場合によっては輸出競争力を下げてしまいます。
トランプ大統領の適切な判断を期待するのですけど・・・

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