2016年12月21日水曜日

日露交渉は日本の負けだったのか?

産経の記事で、袴田茂樹教授(新潟大学)が、12月15~16日の日露交渉は日本の完敗だったと述べております。
はたしてそうだったのでしょうか。

袴田氏は、「プーチン氏は豹変してはいない」と述べております。つまり「四島は第二次世界大戦の結果露領になり、国際法的にも認められている」との強硬姿勢は変わっていないというわけです。

また、1956年の宣言に対して、プーチン氏は「56年宣言には、2島の引き渡し後両島の主権がどちらの国のものになるか書かれていない」という強硬発言をしていて、それも現在まで変わっていないということです。

しかし日本のマスコミがこのような発言を今まで国民に知らせず、隠してきたことが問題だと袴田氏は述べております。
プーチン氏は豹変したのではなく、また、石油の価格が上がったからとか、親露的なトランプ氏の米大統領選当選があったからと言うことはないということです。

サヨク・マスコミは、このようなプーチン氏の強硬な発言を国民に伝えず、いかにも安倍首相の失敗によって北方領土がロシア領になってしまったように見せて、安倍首相の足を引っ張る作戦だったのかも知れませんね。(もしかしたら裏側に中共が・・・)

袴田氏は、「首脳会談の日本側の主たる目的は、日露の領土交渉を進展させること、そのための経済協力の具体化だった。」と述べております。そして「結果は領土交渉の進展はゼロ、露が望む経済協力では8項目提案など政府、民間合わせて82件の成果文書を交わした。英紙フィナンシャル・タイムズも認めるように、露側の完勝、すなわち日本側の完敗」であると述べております。

日本側の主たる目的が領土交渉にあったとすれば、確かに袴田氏の言う通りでしょう。しかし時代はすでに日露問題は「日本の安全保障問題」になっていることは明白で、それゆえの日露交渉であるとすれば、必ずしも完敗とは言い切れないのではないでしょうか。

袴田氏は「プーチン氏は日米安保条約への懸念も新たに表明した。平和条約交渉は一歩前進どころか、明らかに後退した。」と述べております。米露対決が今後も続くのであれば、確かにそうかもしれません。
しかし、アメリカ次期大統領のトランプ氏はプーチン大統領と同じ立場で考えているようです。すなわち「自国の利益」であって反グローバルという立場です。
ですから米露関係は現在以上悪くなることもなく、むしろ今後改善の方向に向かうかも知れません。

そして、日本にとっての安全保障問題は、現在は明らかに「対中戦略」なのです。つまり「現在の敵は中共である」ことをはっきりと認識した上での日露交渉であるべきなのではないでしょうか。

今回の交渉では、「北方四島での共同経済活動が、平和条約締結の前提の如(ごと)き合意もなされた。」と袴田氏は述べておりますが、それに何か問題があるのでしょうか。
袴田氏が言うには、「露側は、共同経済活動は(安倍)首相の言う『特別な制度』下でなく、ロシアの法律下でという立場を譲っておらず、合意の実施は困難で、新たなハードルを設けたも同然だ。」と述べておりますが、ロシア側がロシアの法律を主張するのは当然のことで、そこにどのような形で日本側の主張を盛り込んでいくかが今後の交渉のポイントになったわけです。

この「特別な制度」には、日露間だけの共同経済活動にすることが明記されるはずです。これが北方領土の安全保障にとって重要な点ではないでしょうか。
つまりこの北方領土とその海域には中共の経済活動は入れないという点です。

まだこの「特別な制度」がどのようになるのかは判りませんが、共同の経済水域に無断で入り込む中共の艦船は、国際法にのっとって航行することが義務付けられるのではないでしょうか。いわゆる無害航行の義務です。原子力潜水艦でも浮上して通過しなければなりません。もし潜水した状態で航行すれば、侵略行為として攻撃も可能になるはずです。

現在もロシア領となっていますから中共は航行を控えているでしょうが、ここに日本の艦船が航行しても中共の軍艦は航行出来ないことになりそうです。

いずれにせよ「特別な制度」がどのようになっていくか、どこまで日本側の主張を持ち込めるかが今後の課題となったわけです。ロシアの法律を吟味し、北方領土での共同経済活動で行う技術的課題から、その法を変えなければならないような命題を示し、特別な制度を日本にとって有利に構築せざるを得ないように持って行きたいものですね。

82件の中にあると思われるシベリア鉄道のJR乗り入れですが、これは相互乗り入れにもっていって、ベーリング海峡のトンネル掘削計画を具体化してアメリカを巻き込みましょう。
鉄道をベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸にもっていくとすれば、日露だけの共同経済活動にアメリカを加え、さらにカナダも加えなければならない必然性が出てきます。ようするに中共を牽制すれば良いのです。
固く凍った海底のトンネル掘削には新しい技術も必要になるはずです。その開発共同研究を択捉島で行うのはいかがでしょうか。
このような鉄道計画となればカナダも参加してもらわなければなりません。相互乗り入れを日本、ロシア、カナダ、アメリカの4か国に持っていったらどうでしょうか。

シベリア鉄道のJR乗り入れには、このような発展性が含まれています。ユーラシア大陸側の鉄道はモンゴルも加えることが可能です。中共と接続したければ国境線に寄せて駅舎を作り、プラットホームを中共の新幹線と平行に並べて乗客の利便性を図り、線路の相互乗り入れはしないことですね。
そして鉄道の技術的リードを日本がしっかりと握っていくことが肝要です。

このように、日露共同経済活動は、やがてアメリカ、カナダも含めた共同経済活動に変わっていく可能性もあり、それを目標としながら日露平和条約の締結に向かえばいいのではないでしょうか。

袴田氏は、「G7諸国との関係も調整しながら、粘り強く領土交渉と経済協力を並行的に進めるべきである。」と述べております。
確かにロシアとの交渉は、ゆっくりと時間をかけて進めた方がいいように思います。遅すぎて困るのは日本側ではありません。そしてどう足掻いても、この国際間鉄道のような大きなプロジェクトとなれば、国際金融資本が出てくるでしょうし、それがなければ出来ないでしょうからね。

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