2011年4月8日金曜日

麻薬組織と戦った女子大生警察署長の顛末

メキシコ北部、チワワ州の米国との国境の町、プラセディスで2つの麻薬組織の抗争が激化、街の治安がどうにもならないほど悪化してしまいました。
10年前は、危険で夜道が歩けないなんてことはなかった安全で平和な街でしたが、麻薬組織が入り込んだとたんに、麻薬取引をめぐる抗争とみられる暴力事件で死亡者が急増し、危険極まりない街になってしまったのです。

そこに昨年の10月、大学で犯罪学を学んでいるマリソル・バジェスさん(20歳)が警察署長を志願、街の人たちと協力して麻薬組織と対峙しようとしました。
その背後にはホセ・ルイス・ゲレーロ新町長がいて「若いが、勇気と優れた行動規範を持ち合わせた適任者」として就任を懇願していたとのことですが。

プラセディスという街は、メキシコ北部チワワ州にある人口約8500人の町です。
彼女の作戦は、女性の職員をもっと増やし住民との交流を深め、「私の部下が一軒一軒訪問し、犯罪者を見つけたり、市民にふさわしい価値観を教えたりするようになれば」というもの。
2人のボディガードに守られながらも、自身は銃などを持たない平和の使者という出で立ちで、麻薬組織を待ちから追い出す決意だったようです。

しかし、プラセディスはヘスス・マヌエル・ラーラ町長が息子とともに暗殺されたり、昨年12月には28歳の女性署員が武装集団に拉致される事件が発生。現在も、署員の行方は分かっていないような状態。

メキシコのフェリペ・カルデロン大統領(48)は就任以来、軍を動員して麻薬カルテル撲滅作戦を展開。この2年間で37人のボスのうち、半数を逮捕または殺害したと成果を誇っているようですが、それが麻薬組織を怒らせたのか、2006年以降には麻薬組織に殺害された人の数が年間最悪の1万5273人に上っているとか。

暴力では麻薬組織を潰せないということでしょうか、この20歳の犯罪学専攻の女子学生を警察署長に据えた意味はそこにあったと思います。

しかし結果は・・・
麻薬組織は彼女に接近、犯罪組織から便宜を図るよう要求されはじめ、やがて従わなければ殺すと脅迫を受けるようになってきたとか。
脅迫は親族にも及び始め、そしてついにこの3月、就任から半年を経ずして、アメリカへの亡命を意義なくされてしまったとか。

世界中にはびこる麻薬組織。麻薬・覚せい剤の世界的蔓延は、世界規模での経済格差の広がりと、景気後退の悪循環が広がれば広がるほど活発になることでしょう。
武力を使っても、ソフト路線で対峙しようとしても、麻薬が裏ビジネスとして莫大な資金を動かす限り、抗争も激化していくことは当然でしょう。
アフガニスタンとか北朝鮮など、破綻国家は麻薬組織にとって絶好の製造場所であり、賄賂や独裁がはびこっている国家は、その流通を支える絶好の取引場所なのではないでしょうか。

最近、メキシコのタマウリパス州サンフェルナンド郊外で、8つの穴に埋められた59人の遺体が見つかりました。麻薬密輸組織とみられるグループにバスの乗客が連れ去られる事件があり、捜査当局は、その連れ去られた乗客の、殺害された遺体と見ているとか。どうやら麻薬組織から密輸への協力を迫られて断ったのが殺された理由のようです。
ここでは昨年8月にも72人の不法移民が、密輸への協力を断って殺されているそうです。
日本ではまだこれほど大勢が殺される事件はありませんが、このメキシコの凶悪大量殺人は、明日の日本かも知れませんね。覚せい剤の蔓延はひどいもののようですから。

どうすれば麻薬・覚せい剤の撲滅を計れるか、それを各国の善良な国民が考えること。少なくとも無関心ではいないことが、最大の防御なのかも知れません。
このメキシコの女学生、マリソル・バジェスさんの勇気には敬意を表しますが、どうも作戦がまずかったようです。
アメリカに亡命後も、諦めずに戦いを続けて欲しい・・・心理学とか社会科学などを学び、麻薬・覚せい剤撲滅の戦いを是非とも継続して欲しいと心底から思うのですけど。

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