2015年5月25日月曜日

ハイブリッド戦争(H・War)とは何か

英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)が作った言葉、「ハイブリッド戦争」とは何か、そしてこの戦争で有効な兵器、戦略、そして戦術とはどのようなものなのでしょうか。

この言葉は、ウクライナ危機と中東の過激組織「イスラム国」の紛争に対して、英国が行ったこの戦争の分析結果から出てきたものです。

まずウクライナ東部で、プーチン・ロシアは「メディアを通じた宣伝」と「工作員や重火器の送り込み」などによって(複合化して)ウクライナ制圧を行った戦争。
そして、昔ながらの軍事的手法に、数年に及ぶ米軍との戦いを通じて研ぎ澄まされたテロのテクニックを加味し、地元に関する知識、連絡網を併せ持って(ハイブリッド化して)戦うISIL(イスラム国)の戦争。
これらの戦いを分析して、未来型の戦争として「ハイブリッド戦争」と名付けたようです。

核兵器によって、国家間で行われる従来型の戦争が出来なくなった昨今です。これまでは核保有国が幅を利かせ比較武装国に無理難題を押し付けていました。
しかし経済が次第に核保有国の優位性を奪っていきます。また同時に技術改革が進み、核兵器保有の危険性(発射前に自爆させられる技術)までが予測されるようになって、これまでの平和均衡が崩れ始めています。

不満を持った非核保有国の小国や、主権行使が核保有国によって歪められてきた国家が、新しい紛争を仕掛け始めたと言うことではないでしょうか。

イランが核開発と称してウランの濃縮を始めたとき、その遠心分離機のソフトウエアを外部から破壊させたハッキングをアメリカ政府は行っています。
装置を操作する要員に対して、何らかの形で近づき、ポルノDVDと称してディスクを渡すなどして、それを職場のコンピュータで見ると、仕掛けられたウイルスがシステム内に入り込み、遠心分離機を数日間止めてしまうことに成功したそうです。

この戦術は、核保有国の核兵器を破壊することにも使えますし、もしかしたら自爆させることも出来るかも知れません。
これ以外にも、相手の核兵器を格納庫で爆破させる新たな研究開発が盛んに行われていますから、核保有国にはこれから「持つことだけで安全保障にマイナス・・」という時代が来るかもしれません。
このように、第二次大戦後に作られた平和均衡はもうそう長くは続かないでしょう。そしてこの「ハイブリッド戦争」の時代に突入する可能性は高いと思います。

中共の侵略を見ていますと、明らかに「ハイブリッド侵略」になっています。先ずお友達になり、ハニートラップなどで操れる人物を作り、相手国政府中枢に影響力を確保し、経済支援という名目で具体的侵略を始め、中華街というコロニーを作って閉じこもり、そこから出す毒素で相手国を死滅する・・・というようなハイブリッド戦術を使っています。(4000年前から使っていたようですね)
中華街というコロニーを作るのは、相手国の法に従わないためです。治外法権などと言うのではなく、暴力団的な排他性を持ちます。

戦闘は好きではないようです。中国戦線で戦ったことのある元帝国陸軍の伍長は、「軍閥同士の戦いの現場に居合わせたことがあってね、あいつらの戦いは昼休みがあるんだ。戦闘が止まって何をしているのかを双眼鏡で見たら、弁当を食っていた。午後になってまた戦闘が再開されたが、夕方には終わって、皆野営地に戻るんだよ」と笑って話していました。戦闘員の多くは農民で、脅されたのかビジネスなのか、ともかくそのようなノリで戦っているようです。

現在の人民解放軍の兵士はどうなのでしょうか。「国家に忠誠を尽くす」とか「愛国心に燃えてる」などと口では言いますが、その国家とは中国共産党を指しているのでしょうか? 中共を国家と認めているようには感じません。地域の連帯性はあるようですが、国家観が形成されているようには思えません。

ですから謀略を使った無戦闘での侵略は得意のようですが、軍事を持って真正面からの戦いは「何とか謀略で避ける」ことが頭の良い華人と言う価値観なのでしょう。まさに「ハイブリッド侵略」大国の中共ではないでしょうか。

ハイブリッド戦争は、欧米諸国にとっては新タイプの戦争でしょうが、中国大陸から見ると歴史ある戦争方法なのかもしれません。

南シナ海の「埋め立て基地建設」も、そのやり方がハイブリッド侵略になっています。まずフィリピンにお友達として近づき、何らかの方法で政府中枢を動かしてアメリカ軍を追い出しました。その後埋め立てを始めますが、目立たないようにしています。しかしアメリカにオバマ政権が出来ると、急にその工事が早くなり、ついにアメリカ軍がフィリピンに呼び戻されました。大国のようにふるまう中共ですが、アメリカと中共の南沙諸島をめぐる脅吼を見ていると、西部劇を見ているようですね。

この地域を、アメリカ式の戦闘地域にするために、12カイリという国際法による線が引かれました。その外側でアメリカ軍が監視活動を行います。狼の集団が獲物を狙うように。
これで恐怖にかられた人民解放軍が先に発砲すれば戦闘開始です。これで先に手を出したのは中共になり、正義はアメリカ側になるわけですね。
発砲しなくても、次のステップは12カイリ以内に入ろうとする中共の艦船の臨検かも知れません。中共のメンツが潰されます。
中共は12カイリ内に入られたら応戦するしかなくなります。応戦しないと上陸して軍事施設撤去を求め、実力行使が始まります。そうなると習政権そのものが「弱腰対応」と非難されて政権を追われます。
応戦すれば、アメリカはハイテク兵器を駆使し始めます。中共はまだ核兵器以外の有効な手立てを持っていません。アメリカに対しては兵器はまだ貧弱です。

ハイブリッド侵略は、アメリカ式の「ガンマン決闘」という古い形の戦闘には弱いのかも知れませんね。
さて、習政権はどうするでしょうか・・・

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