2014年10月5日日曜日

消費税10%に反対の外圧

安倍首相は消費税10%への政治判断を年末ではなく、この7~9月の経済指標の発表を持って早めに専門家に集まってもらって判断するようなことを示唆しました。

現状、消費税8%にしてからの消費動向は崖を滑り落ちるような勢いで悪化、大方の予想に反して7月ごろからの回復などはまったく見られませんでした。
先行きに強気だった企業の在庫はすでに増え始め、生産は今後減り、雇用にも悪影響が出て消費税の増収分は帳消しになるどころか、財政収支悪化につながるという、1997年度増税後の二の舞いになりかねない勢いです。

消費税8%を決めた昨年8月の「有識者会議」では、浜田宏一(エール大学名誉教授)、本田悦郎(静岡県立大学教授)、宍戸駿太郎(筑波大学名誉教授)、片岡剛士(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)が景気への悪影響やデフレ圧力の高まりを懸念して増税に反対しました。

しかし、伊藤隆敏(東京大学教授)、武田洋子(三菱総合研究所チーフエコノミスト)、吉川洋(東京大学教授)などが「景気の落ち込みは『軽微』だ」とか、「増税とデフレ脱却は両立する」、「消費増税に伴う景気後退リスクと、見送りによって財政の信認を損なうリスクを天秤にかければ、後者が重い」、「政府は少しでも先送りしていると思われることをすべきでない」などとの論陣を張って、安倍内閣にとうとう消費税8%を呑ませてしまったという経緯があります。

昨年はアメリカが日本の消費税アップを暗に支持していたことも事実です。ですから財務省は「消費税アップは日本の国際公約だ」などとおかしなことを言っておりましたし、また「日本国債が暴落する」などと何の根拠もなく恐喝じみた発言をする財務省だったのです。

現在の日本国債の評価をCDS(クレジットデフォルトスワップ)の指標で見ますと、2012年の段階で1.5%であったものが2013年には0.7%となり、2014年の消費増税前には0.5%を下回っております。
このCDSは、2%以上になった時に警戒を要するという意味を持ち、4%を超えると危険だと判断すべき値だということです。
それが下がっていることは、まったく暴落などのリスクはないことを意味するわけです。いったい財務省はどうしてあんな「嘘」を言ったのでしょうか?

現在のアメリカ・ウォール街は世界中の消費低迷に困り果てています。つまり世界中がデフレに突入し始めたからです。リーマンショック後のドルの大量発行の結果、一時はお金がBRICSに回って世界景気を下支えしたものの、そのお金が返済によって銀行に戻ってきていて、再投資先が無いままデフレに傾斜しているのです。

世界金融の最大のバックボーンである 欧州最大財閥ジェイコブ・ロスチャイルド家。そのロスチャイルドの家系からアメリカの財務長官になったジェイコブ・ルー氏は、9月に行われたG20の席上で麻生財務大臣に向かって「4月の消費増税は期待外れとなった」と述べました。
消費税率8%引き上げ以降、個人消費と投資が落ち込んでおり、「(日本は)経済活動の縮小による困難に直面している」と警告したわけです。

麻生財務相は、日本経済の現状や成長戦略などを説明し、「日本経済は緩やかな回復が続いている」と各国の懸念解消に努力していましたが、ルー長官が示した日本経済に対する「失望」感にはそれ以上の説得力があります。
事実上、国際金融(アメリカ・ウォール街)は日本に対し「消費税10%は止めろ」というメッセージを発したとみて良いでしょう。

消費増税10%に向かって突っ走っていた日本の財務省はアメリカという最大の支持者を失い、いわば梯子を外された形になりました。
すかさず安倍首相は内閣改造によって増税派だった谷垣元総裁を自民党幹事長に取り込み、彼の増税観をトーンダウンさせました。
G20から戻った麻生財相も、消費増税についてトーンダウンさせております。

今年の7~9月の景気指標は政府からはまだ出ておりませんが、ロイターなどの調査によりますと「8月鉱工業生産は予想を裏切る悪化」となるそうです。
また4月の消費増税後の景気けん引役とみられていた設備投資ですが、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏は「7─9月期は消費だけでなく、設備投資も持ち直さないだろう。結果として今年1月が景気の山となる可能性が高まった」と述べました。

つまり7~9月の景気指数の政府発表が、悪化傾向を示すだろうことは予想出来ているわけです。
そこで安倍首相が「消費税10%への政治判断を年末ではなく、この7~9月の経済指標の発表を持って・・」判断しようとしていることは、もはや10%増税は先送りの方向で考えていることを意味しているのではないでしょうか。

アメリカの支持を失った財務省です。増税に向けてまたどのような「嘘」を並べるのでしょうか。そして安倍首相は、このような財務省に対してどう対処するでしょうか・・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿