2014年10月22日水曜日

ついに着工、リニア新幹線

2014年10月17日、17日、JR東海の柘植康英社長は東京・霞が関で太田昭宏国土交通相からリニア中央新幹線の着工の認可書を受け取りました。

20世紀の1973年、スタートしたリニア中央新幹線の基本計画では、まだ液体ヘリウムというものすごく高価なガス冷却による磁気コイルでしたが、IBMのチューリッヒ研究所のヨハネス・ベドノルツ博士とカール・ミュラー博士が1986年に発表したLa-Ba-Cu-O系超伝導体によって、液体窒素の温度での超電導が可能になり、急激に実現可能性が高まりました。
液体窒素であれば1リッター当たり1000円前後と低価格です。何しろ空気の大部分が窒素ですから空気を冷やせば取り出せる液体窒素なのです。価格は大体、冷却電気代プラスアルファくらいですね。
リニア新幹線の保守工場に製造ラインを作れば、もっと安価で供給可能になるでしょう。

それから約28年、さまざまな実験と改良が加えられながら、リニア新幹線はやっと東京ー名古屋間の工事着工という運びになったのです。

すでに実用化している上海リニアなど浮上式リニア鉄道は、磁気浮上10ミリで最高時速430キロまで出せるそうですが、常電導浮上方式ですから10ミリという浮上でも電気代がかなりかかるのではないでしょうか。
日本の場合は10ミリでは危険すぎるのです。なぜなら頻繁に地震が起きているからです。震度と浮揚距離を考え設計した時、どうしても100ミリの浮上が必用だったということで、超電導が採用されたそうです。(超電導でないと浮かない)

東京ー名古屋間の開通は平成39年を見込んでいます。つまりあと13年後です。総事業費は5兆5235億円になり、その全額をJR東海が負担するそうです。
東京ー名古屋間は40分の距離となり、時間だけみれば通勤圏にもできます。料金は東海道新幹線「のぞみ」の指定席料金に700円程度を加えれば可能ということです。

名古屋ー大阪間は平成57年になるということで、18年後です。その理由はJR東海の資金繰りでそうなるのだそうです。平成39年から東海道新幹線とリニア新幹線での利益を回して開発するために時間がかかるのだとか。

最高速度は500キロ/時です。700キロ/時のスピードまでは可能なはずですが、何しろ止める駅が多すぎます。 起点は東京駅ではなく品川駅で、神奈川県緑区に止め、それから山梨県の甲府あたりに止め、次に長野県の飯田市あたりに止め、岐阜県中津川市あたりに止めてから名古屋です。これだけ止めるためにはスピードを上げることは出来ないでしょうね。リニアは加速時よりも停止時の方が難しいそうですから。

リニア新幹線は陸上を飛ぶ航空機です。鉄路も車輪もありません。あるのは着陸する時のタイヤで、航空機と同じですね。
そこで航空機との顧客の奪い合いとなります。しかし、航空機はいつでも路線を変えられます。ですからリニア新幹線を補完する機能として生かされることになるのではないでしょうか。
同じく東海道新幹線も整備新幹線も、リニア新幹線の補完機能として位置づけられます。ともかくリニア新幹線は乗り方を現在のJR山手線くらいの簡便さにして欲しいですね。

新幹線は日本全体の発展のために開通させてきました。しかし、それによって都市集中化がかえって進んでしまったことも確かです。
高速道路網もそうでした。都市集中が進んでいます。大量消費地の方が産業的な意味で人を集めてしまう傾向があるのでしょう。経済合理性が生み出す都市集中化で、ますます過疎化が進む地方は、高速移動の進化をどう利用したらいいかが判らないようです。

今回のリニア新幹線の東京ー名古屋間開通で、名古屋圏が東京の“通勤圏”になることから名古屋の過疎化を心配する向きもあります。
50年前の東海道新幹線の開業後、大阪に起きた「ストロー現象」も、この高速移動による東京集中化が現実に起きたことを示します。東京に本社のある企業の多くが大阪の拠点を引き揚げてしまったことが理由でした。

今後の高速移動網の研究は、都市集中をいかに防ぎ、同時に地方分散化の流れをどう作るかにあると思います。
情報網の発達と、経済合理性だけでなく安全保障の合理性なども考え、それを国政に反映させながら税法などを使った分散促進策など、対応は複雑になって行くと思います。
しかし、都市集中が止まり、地方分散化が本格化すれば、自然に少子化問題なども解決へ向かうはずです。

また、超電導の維持管理のための設備が必要になりますから、日本全体の電力網も再構築すべきではないでしょうか。
高速道路網と電力網の併設と、超電導送電線による高圧電線網の廃止などで日本の山河の景観を良くすることも考える必要があるでしょう。
もっとも、高温ガス炉(原発)などを普及させ、発電設備の分散化も始めるべきでしょう。

リニア新幹線は、単に高速移動する電車というものではなく、そのことから社会変化を生み出し、うまく運用すれば多くの問題が解決するかもしれない可能性を持っています。

そのリニア新幹線の着工が決まったのです・・・

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