2019年2月2日土曜日

米中閣僚級協議、まだ溝は深く

1月31日に終了した米中閣僚級協議は、アメリカ側の要求と中共側の譲歩との間にまだかなり溝があったようです。

中共側は新華社を通じて「率直で具体的、建設的な議論を行い、重要な段階的進展があった」と報道しておりますが、アメリカ側は「進展はあったが、やるべきことはまだ多い」と述べております。

人民大学の時殷弘(じ・いんこう)教授は、アメリカ側が求める知財保護などの構造改革や、合意内容を実行させるための監視メカニズムについて、「中共の主権への侵犯や国内秩序への干渉となる可能性も高く、双方の立場の相違が最も大きい。アメリカ側が今後厳格に要求してくる可能性がある中共当局の国有企業に対する補助金の廃止に関しても、中共側ができる譲歩とアメリカの要求との間には相当な距離がある」と述べております。

今回の協議で、中共側は「米国の農産品やエネルギー産品、工業製品、商品化されたサービスの輸入拡大に力を入れる」と譲歩を示したようです。しかしアメリカは通信系の高度技術に関する知的財産権の問題を最重要視していると思いますから、このような譲歩では納得はしないでしょう。

時教授は、「仮に両国が基本合意に達したとしても、両国の構造的な対抗関係は継続する」と述べ、アメリカによる中共のハイテク産業発展に対する締め付けは今後も変化しないとの見方を示しました。

貿易協議は3月1日まで続くようで、米通商代表部のライトハイザー代表が訪中するそうです。
トランプ大統領は、3月1日の協議期限については「延長する必要はないだろう」と述べ、またファーウェイや同社幹部を司法省が起訴した問題については「今回議論していないが、いずれ話し合う」と述べたそうです。

ここまでを見ますと、訪中するライトハイザー代表が3月1日までに、「技術移転の強制や中共の市場の参入障壁、国有企業や補助金の問題」など7項目の懸案事項が解決されなければ、中共からの輸入製品にかける追加関税を、現在の10%から25%に引き上げることになります。

トランプ大統領は再選を目指し、そのためには景気が良い事が続かねばなりません。アメリカの景気はアメリカのGDPと強い相関関係を持ち、GDPはFRBの金利政策と同期しているようです。
そして株価にも連動しているとのことです。

ここに、米中経済戦争の影響が表れてきます。昨年の12月にブエノスアイレスで開かれた米中首脳会談で、2019年1月1日から25%に引き上げるとしていた制裁関税を3月1日まで延期したものの、その後の米中経済交渉はなかなか行われませんでした。

その間、アメリカは反中体制が強化されたのか、ファーウェイの副代表をカナダで拘束したり、ZTEを追い詰めたりしました。

ウォールストリート・ジャーナルによりますと、「トランプ氏は自身の仕事ぶりに対する評価を測る指標として、支持率と同様、ダウ工業株30種平均の動向に重きを置いている」とのことですが、株価急落を受けると、ホワイトハウス内外の顧問を呼び、急落を招いたのは米中首脳会談のせいではないと確かめようと躍起になっていた」ということです。(田村秀男氏ブログより)

つまりトランプ大統領は対中経済戦争において、その内容と景気、即ち株価の上下を意識しながら判断するだろと思いますが、アメリカ政府、あるいは国防関係は中共による「ハイテク窃盗」の方を重視しているように感じるのです。

このようにしてトランプ大統領と政府機関の間に齟齬が生じれば、これが中共のつけ入る隙を与えることになってしまうのではないでしょうか。
そしてさらにこの齟齬に、ディープ・ステートがつけ入ることが考えられます。
ディープ・ステートとは、グローバル経済を推進するリベラルリストで、トランプ大統領のような反グローバリストとは敵対しています。

そしてハイテク通信とは、もはや通信だけではなく、そこに「電子マネー」という国境を軽く超えられる資金移動の技術が含まれていると言うことです。
それを理解した中共が、5Gや6Gの先行開発(ハイテク窃盗)を行ってきたことはご存知の通りですが、そういう意味で、これまではトランプ大統領とグローバリストの中共バッシングは共同していたのですが、トランプ大統領が株価重視で中共と変な合意をしてしまえば、今度は反中共のグローバリスト達にトランプ大統領が非難されることになるでしょう。

このリベラリストたちはマスコミを牛耳っております。そして通貨覇権戦争が電子マネーの世界で行われようとしている時です。電子マネーのコントロールをアメリカ・グローバリストの掌中に置くことが目的ですから、今、人民元などに邪魔はさせたくないはずです。

反グローバリストの攻勢に対してグローバリストの反撃が始まったと言う事。そしてその目玉が「電子マネー」にあって、そしてそこに先行して中共が楔を打ち込んでしまった・・これが現在の世界情勢ではないでしょうか。

反中のうねりは、この「電子マネーに関する何らかの『手打ち』」がなされるまで続くでしょう。

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