2012年11月27日火曜日

呑み屋にて


円山町にある呑み屋で、あるお年寄りといっしょになりました。
ビールをご馳走になって話が始まり、話題が選挙のことになってきました。どうやらそのお年寄りは70代後半のようで、ずっと自民党を支持してきたそうです。

しかし、こんどの安部総裁の言っている「日銀に国債を売って公共投資でばら撒く」という演説に苛立っておりました。
そんなことをしたら、「インフレになって大変なことになる」・・・というわけです。
そして私に同調を求めてきたのです。残念ながら、それを拒否しました。お年寄りは訝って「そうは思わないんですか?」と尋ねてきました。

私は「いま、日本には1000兆円という借金があります。そこで、もう1000兆円を単年度で借金(国債)して、それを公共投資でばら撒きます。そうすると物価は3倍、いや5倍くらいになりますね」と申しますと、納得されました。

そこで「即ち、借金は2倍ですが物価は5倍、即ち借金は圧縮されるわけです。貨幣価値が五分の一になるわけですからね。国家の借金というのは、そうやって返済するのが常識です」と言いますと、そのお年寄りは変な顔をして私を見つめていました。

そこで続けて「まあ、物価5倍のインフレでは国民は生活に困りますから、そこを制御して生活が困らない程度のインフレに持っていくのが、国家経済の本筋です」と延べ、そして「税金を上げて借金を返すというのは、根本的に間違っているでしょう?」と問いかけました。

そのお年寄りは、「どうして?」と言いた気な顔をして聞いておりました。
私は「日本政府の借金が1000兆円、そして国民の貯蓄が1000兆円。仮に税金で預金の全部を取り立ててチャラにすれば、日本政府の借金はゼロになります。しかし国民の蓄えもなくなります。・・・これにどういう意味があるんですか?」と問いかけますと、やっとそのお年寄りは、笑ってうなづいてくれました。

それ以上の話はしませんでしたが、公共投資での資金ばら撒きも、税金で貯蓄を取り上げる緊縮財政も同じことだと言うことです。(ばら撒けば、インフレで貯蓄の価値が目減りしますからね)
ただ、前者はお金の流通が活発になり、仕事がいっぱい出てくるということであり、後者はお金の流れが止まり、仕事が無くなり、失業者がいっぱい出てくるということです。

前者が「安倍総裁」の演説であり、後者が「野田首相と、その背後の財務省」が言っていることなのです。
そして「際限のないばら撒き」を規制し、歯止めをかけるのが「インフレターゲット」という発想であることは、もはや近代経済の常識になりつつあります。

このことを、日本は過去に経験しています。「高橋是清氏」が行っていたのです。彼は、いま安倍総裁が行おうとしているインフレターゲット政策を取り、恐慌脱出に世界に先駆けて成功しています。
しかし、インフレ傾向が出てきた時、ただちに緊縮財政へ切り替えたのです。
その時の公共投資に軍事費が入っていて、緊縮財政で予算がけずられたことに怒った陸軍。226事件で逸る軍人に殺されてしまいました。
しかし、これこそまさに「インフレターゲット」を世界で初めて実践した日本だったはずです。

ひとくちに「公共投資で資金をばら撒く」と言っても、政治家にとってそれは大変なプレッシャーになるはずです。それをやろうとした「小渕恵三首相」は、現職で倒れ亡くなりました。財務省に殺されたのかも知れませんが・・・
際限なく増え続ける国家の借金。どこまで続ければインフレ指標が出てくるのかわかりません。
公共投資と言っても、いまの土建業は借金まみれです。当然収入は借金の返済に周り、すぐに銀行へ戻ってしまいます。
結局は、民間の借金を国家が肩代わりするまで続くはず。それが終わって市中にお金が出回ってきたら、あっという間にターゲットを超えてしまうでしょう。どの時点で緊縮にスイッチするか・・・地獄のような日々が」続きます。
あの「安倍総裁」に出来るかどうか・・・まさに命がけの政策であることは疑う余地はありません。
(それに比べて、税金で返済などという戯言は、単に政治的なサボりでしかないのでは?)

そのお年寄りは、私と別れる前に一言。「でもあの安倍総裁の演説はまずいよ。みんなインフレを心配しているから・・・」
たしかにそうかも知れませんね。なにしろ財務省が指示してマスコミが煽っていますからね。

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