2019年4月21日日曜日

iPS網膜・世界初の臨床研究

京都大学の山中伸弥教授が研究し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した「iPS細胞」1年間の臨床実験を経て成功したと言うことです。

山中教授は、ノーベル賞受賞のあと、京都大学にiPS細胞の研究機関「京都大学iPS細胞研究所(CiRA=サイラ)」を立ち上げ、若き研究者の育成と、iPS細胞の応用分野としての「再生医療」と、iPS細胞を使った創薬の研究に取り組んでおります。

サイラの目的は、これらの研究を産学共同で行うことで研究費を民間から調達するわけです。このような研究には莫大な運用資金が必要になります。
iPS細胞だけという訳ではありません。あらゆる研究には多くのお金が必要なのです。自分達の生存期間には到達しない研究の成果は、若い研究者を育てて繋いでいくしかありません。
それが大学の研究所の使命であり、国家的事業なはずです。

ところが、財務省のPB黒字化という間違った政策のために、国家からの経済支援が難しくなっています。国民の声で資金を出す様に仕向けても、そうするとPB黒字化などと馬鹿なことを言いながら他の予算を削ると言う、国家の未来を壊し財務省の権限だけを強くする政策を繰り返しています。
iPS細胞研究にも競争的資金と言うのが政府から出ているそうですが、その分どこかの予算が縮小されているのでしょう。

山中教授は、このような財務省に頼りたくなかったのかも知れません。ノーベル賞受賞という知名度が彼を助けます。
サイラには多くの日本国民や企業からの資金が集まり、壮大な研究が続けられております。

今回のiPS細胞の応用臨床実験の目的は、iPS細胞から作られた網膜が、その細胞の提供者ではない他人の患者に移植しても大丈夫かどうかだったと言うことです。

この臨床研究は、サイラの高橋淳教授の奥様で、元京都大学助教授で現在は理研におられる高橋政代プロジェクトリーダーのもとで行われたと言うことです。
このプロジェクトは、理化学研究所と神戸市立医療センター中央市民病院などで構成されたチームで、他人のiPS細胞から作った網膜を、重い目の病気の患者5人に移植した世界初の臨床研究と言うことです。

この移植後、5名の内の一人に軽い拒絶反応が出て、網膜にごく微量の水がたまったとのことですが、ステロイド剤を投与した結果改善し、網膜細胞が定着するなど術後1年の経過は良好と言う事です。

今後も移植後の経過を見ていくのでしょうが、まずは1年経過で成功と言うことでしょう。この成功を受けて、iPS細胞の研究は今後さらに進むことでしょう。

iPS細胞の研究には、このほかにiPS細胞ストックプロジェクトと言うのがあるそうです。
健康なボランティアの方に細胞を提供してもらい、医療用のiPS細胞を作製します。そしてあらかじめ安全性の確認を行い品質の保証されたiPS細胞を保存し、必要に応じて国内外の医療機関や研究機関に迅速に提供できるようにすることを目的とするものだそうです。
この方法ですと、患者さん自身の細胞を使う「自家移植」と比べると格段に時間も費用も抑えられると思われ、サイラ基盤技術研究部門の高須教授らのグループと研究支援組織の医療応用推進室が協力して、サイラ内に設置された細胞調製施設(FiT:Facility for iPS Cell Therapy)にて細胞を作製・保存するという研究だそうです。

今後はiPS細胞によって多くの臓器などが作られ、疾患で臓器を失った患者さんに再生医療で完治させることが出来るようになって行くことでしょう。

しかしこれは考えようによっては恐ろしいことでもあります。ある個人のコピーなどが出来る可能性など、人間としての倫理性が問われる問題も含んでおります。

そこでサイラには、倫理研究部門も作られました。iPS細胞に関わる倫理問題について担当しているそうです。
上廣倫理研究部門という部門で、2013年からサイラに設置されたと言うことです。

再生医療の前は生体肝移植でした。いわゆる臓器移植には人間の倫理性が問われ、また犯罪と結びつく例もあって、この問題への対処が必要とされたわけです。(臓器売買・中共の例など)
再生医療であっても、ドナーとなる人の同意などさまざまな倫理上の手続きが必要となり、この倫理研究部が組み込まれたとのこと。

そして今後、このiPS細胞の技術がさまざまな不治の病を治すことが可能になると同時に、人間の生命に対する価値観、そして死生観にまで影響をもたらすことが考えられます。
そしてさらに、今後宇宙へと巣立っていくであろう人類にとっても、iPS細胞の技術によって環境適用・生体改造などへと発展していく可能性もあります。

倫理問題は、宗教を超えて未来の人類に突き付けられる刃かも知れません。
サイラの研究が、このような範囲までもサポートしていかれることを期待いたします。

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