2017年3月17日金曜日

農業の産業化、では産業は・・

「くしふるの大地」という株式会社をご存知でしょうか。
大分県竹田市久住町白丹7549番地にある、社員10名の小さな企業です。農業を行う株式会社で「久住農場」と「重政農場」という2つの農園を所有し、高原野菜とか露地ものの野菜を生産し、流通ルートを立てて営業しております。

平成27年に、やっと農地法が改正され、株式会社の農業参入が可能になった直後に創られた会社のようです。
https://www.kushifuru.com/

「くしふる」とは、宮崎県の高千穂町にある「くる触神社(くしふるじんじゃ)」から取ったようですが、古くは「櫛ひ大明神」や「くしふる大明神」と称せられ、また「二上(ふたかみ)神社」、「高智保皇神社」とも呼ばれていたそうです。明治43年に「くし触神社」と正式に決まり、以降「くしふる神社」とひらがなで表示されることが多くなったそうです。(「くし」という漢字が難しいため)

福岡県、熊本県、山口県でスーパーマーケットを展開しているHalloDay(ハローデイ)という店舗が、農場で生産した野菜の大口販売先と言うことです。
また、くしふるの大地は「株式会社『力の源ホールディングス』」のグループとして動いており、このグループ配下にある「一風堂」ラーメン店も販売先の一つのようです。

ハローデイは、生鮮食品の新鮮さをアピールポイントのひとつにしていて、徹底した品質管理に基づく安全性に加え、買い物が楽しくなるような新鮮な情報を消費者に届けることを目指しているようですが、農家の多くは情報化が進んでいるとは言えない状況で、生鮮野菜の仕入れの情報をいち早く正確に知る仕組みの構築が経営課題として持ち上がっていました。

このハローディが抱えるテーマを、NEC九州支社のICT化支援事業の営業担当者が聞きつけ、農業のIT化に積極的な農業生産者として「くしふるの大地」を紹介されたところから、農業の産業化が動き出したようです。

先ずは原価を把握したい農業従事者と、仕入れ情報を把握したいスーパーのICT(Information and Communication Technology=ITにコミュニケーションを加えたもの)化に着手します。

これまでのカンと経験に頼ってきた農家ではなくて、農業という営利事業を成立させる第一歩は「原価管理」にあると考えていたのは、「力の源ホールディングス」の清宮俊之社長でした。
そして農業に生産性の向上やカイゼンなどの経営感覚を取り入れ、情報をICTで共有化し、「くしふるの大地」の作付け計画から栽培管理、出荷・販売に至るすべてのオペレーションを管理出来るようにしたとか。

そして清宮社長は、「原価管理がきっちりできれば、農業経営が見違えて良くなるはずだ」と述べております。

スーパーマーケットやラーメン店を販売先として、くしふるの大地の農業生産はITCの活用によって、高原野菜とか露地栽培野菜といった「高級食材」の生産企業として世界に展開することも可能かも知れません。
鮮度を輸送の環境と時間の制約の中でいかに保つかという技術開発も、今後進んでいくでしょうから。
ただ国際流通資本から横取りされないように気を付けなければいけませんけどね。

さて、このように農業が産業化していく中で、これまでの産業はどうなって行くでしょうか。
生産性向上の進んでいる日本の産業界です。「足りないのは消費」と言っても言い過ぎではないようですね。

そこには消費者の求めるものが多様化し、個性(趣味的要素)が強くなっていることが考えられます。生活必需品でもこだわりのないものは出来るだけ安く買おうとしますが、趣味的こだわりが出てきますと、お金にいとめを付けずに購入するという「消費動向」です。

産業の生産性が、コピー製品の生産性であることはご承知の通りです。けっしてプロトタイプの生産性ではありません。
需要の多様化とは、プロトタイプの多角化ということになります。しかし、プロトタイプとは「試作品」でもありますから、そう簡単に生産性の向上は見込めないのです。

農業は先ず「食の安全」を確認し、そして原価計算から配送計画、消費者に届くまでの時間をいかに短くするか、などがICTによって、より産業化していくでしょう。
しかし、農業は消費者に材料を提供するだけです。食材は加工工場によってスナック菓子になったり、一括仕入れのチェーン店でお弁当とか冷凍食品に加工されたり、レストランのシェフによって高級料理になったり、家庭で家族料理になったりして付加価値を与えられていきます。

もしかするとこの産業化された農業は、産業の未来形を示しているのかも知れませんね。
繊維産業はすでに、生地を作る工場と、それを着る物としての付加価値を付けるための量販工場やデザイナーズブランドといった工房があります。
デザイナーズブランドは、プロトタイプから商品までが少数生産であり、また顧客ごとの製品(オーダーによるプロトタイプ作成)に変わりつつあるようです。

自動車やバイク、自転車などもこのような繊維産業の形式に変わっていくかも知れません。家電なども可能性はあります。

生産性向上も、もはやステレオタイプ生産の設備投資だけの問題ではなくなり、消費者も含めた生産性の考え方が必要になって来るようですね。

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