2015年11月23日月曜日

ASEANでのバトル、日本対中共

11月21日にマレーシアのクアラルンプールで開催され、22日に閉幕した日米中と東南アジア諸国連合の首脳会議(ASEAN首脳会議)で、安倍首相と李克強首相のバトルが繰り広げられていたようです。

21日の午前中、安倍首相はクアラルンプールで行われたビジネス投資サミットに出席し、日本主導のアジア開発銀行(ADB)と連携して、インフラ整備のために100億ドル(約1兆2千億円)の協調融資を表明しました。
すると21日午後、李克強首相は、同じようにASEAN諸国のインフラ整備に100億ドルの融資を行うとASEAN首脳との会合で述べたのです。AIIBやシルクロード基金、中国-ASEAN投資協力基金などのプラットホームの機能を、十分に発揮して行うそうです。

このような投資に関する日中の競争は、ASEAN諸国連合にとっては都合のいい話ですね。
安倍首相が今後3年間で4万人の産業人材育成支援を行う方針を示しますと、中共側は2016年を「中国-ASEAN教育交流年」と位置づけ、ASEAN諸国に提供している政府奨学金の対象を、今後3年間で1千人増加することを表明します。

ともかく日本が動くと、中共側も逐一、対抗措置を取ってくるような、そんなASEAN首脳会議でした。

しかし、問題は南シナ海にあります。中共が軍事拠点化を進める南シナ海情勢について、各国首脳から「緊張を高める行動」などと、中共への懸念が相次ぎました。

安倍晋三首相が「南シナ海で大規模かつ急速な埋め立てや拠点構築、その軍事目的での利用などの動きが継続している。このような状況を深刻に懸念する」と指摘します。中共側は「人工島を軍事化する意図がないと対外的に説明している」とするのに対し、安倍首相は「言葉には具体的な行動が伴わなければならないとの認識を共有したい」と、批判を述べます。

李克強首相が「直接争いのある2カ国間による対話を通じた解決を図るべきだ」と主張したのに対し、中共と領有権を争うフィリピンが常設仲裁裁判所に仲裁手続きを求めたことについて参加国側は、「判決には法的拘束力がある」と中共に法の順守を求めます。

マレーシアのナジブ首相は、議長国として、南シナ海の平和と安全、安定の維持をASEANの責務と位置づけた上で、「国連海洋法条約を含む国際法に従い、争いを平和的な方法で解決することが重要だ」と述べ、「すべての関係方面に、自制と、状況を複雑にし、緊張をエスカレートさせる行動を避けるよう要求する」と強調しました。

オバマ大統領は、20日にナジブ首相との会談で、「南シナ海問題はASEAN全加盟国の問題だ」と強調しました。しかし、ASEANには貿易投資などで中共と深く結びついている国が多く、オバマ大統領はASEAN内の中共への過剰配慮に、いらだちを強めているように見えたとか。

しかし、これまで中立を保っていたインドネシアが、「南シナ海のほとんどで権益を主張する中共側の根拠となっている『九段線』は国際法に違反する」と言いだしました。そして、フィリピン同様、国際司法機関への提訴も辞さないという姿勢にかじを切ったのです。

そのインドネシアのジョコ大統領に対して安倍首相は、インドネシアの高速鉄道建設計画受注で日本が中共に敗れたことについて、「実現可能な最良の提案を行ったが、結果には失望した。手続きの透明性、実現可能性、官民の適切なリスク分担が不可欠である」と述べ、今後の公平な対応を求めますと、ジョコ大統領は黙って頷いていたそうです。

さらに安倍首相はインドネシアの大型インフラ整備について、「信頼関係、手続きや実現の透明性、官民のリスク負担が不可欠だ。協力を進めていくためにも認識を共有したい」とジョコ大統領に語り掛けると、大統領は、港湾や発電所整備での協力を求めたそうです。

南シナ海問題について安倍首相はジョコ大統領に「緊張を高める一方的な行動は国際社会共通の懸念事項だ」と述べると、大統領は「経済成長の基盤となるこの地域の平和と安定を希望している。国際法を尊重する立場だ」と答えたと言うことです。
そこで安倍首相はジョコ大統領に対し、安全保障分野の協力強化に向け、初の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を12月に開くことを提案し、ジョコ大統領はそれを承諾しました。

2年前のASEAN首脳会議で、安倍首相が中共の海洋進出を非難した時、参加18カ国で懸念を表明したのは8カ国程度だったそうです。
しかし今回は、南シナ海情勢で1カ国を除くすべての国が中共を非難し、国際世論で自制を促すことができました。

これは会議の直前、控室にいた安倍首相に、李克強首相が突然近づき語りかけ、同行した日本語の堪能な通訳とともに話を続けながら、各国報道陣がカメラを構える通路を一緒に歩く一幕も演出したそうです。
これが「友好的な関係を演出し、首脳会議で日本から南シナ海で厳しい批判がでないようにしたのではないか」というような憶測を呼び、ASEAN各国に「安倍を支持しないと南シナ海が中共に取られる」との判断が働いたからではないか・・との分析も出ているようです。

ともかく南シナ海問題で、今回はどうにか中共を抑えた安倍首相です。 ご苦労様でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿