2015年1月29日木曜日

緊急医療の現場で・・・

昨年の暮れ、静岡県の磐田市立総合病院に救急搬送されてきた女の子。その付き添いにブラジル人の父親と母親ですから、この女の子はブラジルの人だったのでしょう。

時は12月24日の未明です。静岡県菊川市に住むこのブラジル人親子。その女の子(6歳)が足の不調を訴えたため、父親が救急車を呼び、この病院に来たものです。

対応した当直の医師の診断した結果は、緊急を要しない病状というものでした。そこで医師はその父親に「もう一度診察時間内に来るように」と指示したのです。
ところが、この父親が納得しなかったのです。そこから口論となってしまいました。

口論の原因は日本語がうまく通じなかったこと。ブラジル人の父親は「緊急を要しない」という説明がわからなかったのかも知れません。
やりとりに苛ついたその当直医師が、思わず「くそ、死ね」などと言ってしまったということから、この話題がYouTubeに載ってしまい、男性医師が「小児科に行け」と語気荒く指示する姿がネット上に流れてしまいました。

父親が撮った映像(携帯電話での撮影)のようですが、映像を見る限りブラジル人の方がクレーマーのように見えます。
https://www.youtube.com/watch?v=Qhz8-Seha70
たどたどしい日本語で盛んにしゃべるブラジル人の父ですが、我々が聞いても何を言いたいのか良く判りません。
しかし、「問題が大きくなってもいいのか」と言うような言葉と、若い医師の「それなら訴えてください」などと言うやり取りは、因縁をつけるクレーマーと対応する店舗側のやり取りに酷似しています。
途中でビデオカメラの撮影に変わっていますが、これは母親が持ってきたカメラで取ったものでしょうか。

愛する娘が不調を訴え救急車で病院に行くとき、わざわざビデオカメラを持っていくでしょうか?
また、病院側の説明が悪かったにしても、病状から見て診察時間になるまで待っても大丈夫なように見えます。

まだ時間が経たないと判りませんが、その後この女の子の様態が悪くなり、当直医の診断ミスともなって来れば、病院側の問題とも取れるということになるでしょうが、ビデオを見る限りそれは「顧客対応の問題」にしか見えません。
しかし商業ならともかく病院ですから、顧客対応の問題とはならないのではないでしょうか。
「診断書を書け」という両親に対して、当直医は「規則があって書けない」と応答しています。その規則がどういう理由でそうなっているのかは判りません。他の病院でも通用する規則ならば、それは問題ないはずですね。

ビデオ映像がアップされたのは1月17日のこと。
それから騒ぎが大きくなり、男性医師は病院長から厳重注意を受けたそうです。また、同病院医事課の担当者は「医者として不適切。再発防止に向けて教育を徹底したい」という談話を出したそうです。

この病院側の対応も、どことなく「事なかれ主義」の匂いがします。
当事者の男性医師は「片言の日本語でコミュニケーションがうまく取れず、腹が立ってつぶやいてしまった」などと話しているそうです。

このような事件があると我々国民が困ることは、多くの病院がこのようなクレームに忌避感を持ってしまって、必要な緊急医療サービスに欠損が出来ることです。
24時間で緊急医療に携わっている病院はそれなりに大変厳しい勤務体制を取っていると思っています。それでも頑張ってくれることに、我々の生活の安心があるのではないでしょうか。

医療機関の問題は多くあります。どんな名医と言っても人間のやることですから間違いもあるでしょう。医療事故は後を絶たず、訴訟になるケースもあります。
しかしだからと言って病院がなくなってもいいという問題ではありません。間違いなのか事故なのか、或は不可抗力なのか、問題点を把握して再発防止に努めるしか方法はないはずです。

今回のケースはどうなのかは判りませんが、クレームのためのクレームであるケースもあるのではないでしょうか。事態が表面化することを恐れて「金で解決」という動きを病院側がすれば、クレームが増えて適切な医療に欠損が出てきてしまいます。

マスコミは「くそ、死ね」と悪態をついた部分だけを拡張して報道します。病院では患者は弱者であり、医師が権力を持っているかのように見えます。医師の階級制度も取りざたされ、能力ある医師が日の目を見ない実態もあるのかも知れません。
マスコミには慎重に今回の事件を扱って欲しいものですね。
それでも緊急医療は続けなければならないのですから。

今回のケースを「事なかれ主義」で終わらせることなく、「何があったのか」、問題の本質は何なのかを中立的な立場で徹底的に調べる必要があるのではないでしょうか。

その上で客観的で適切な判断がなされることを切に祈ります。

2 件のコメント:

  1. いつも政治経済ネタが多いデルタさん、今回はめずらしい記事ですね。事なかれ主義、日本人として根本的な問題かも、今年は、あの三島由紀夫生誕90年、もし生きていたら、今の日本人に対してなんといわれるでしょうか?

    返信削除
  2. mcscorpさん、コメントありがとうございます。

    あの三島事件の時より悪化している日本です。
    三島氏の「見たくない日本」が進化しているのですね。
    安倍首相は、三島氏にとって、日本復活の為の微々たる可能性でしょうか。
    でも、可能性が残っているのはいいことですね。

    返信削除