2014年4月20日日曜日

離島防衛のための装甲車、AAV7・・・?

日本の危機は尖閣諸島だけではない・・というわけで、陸上自衛隊と海上自衛隊の合いの子のような「水陸機動団」が企画され、陸自の指揮のもとで離島防衛を担うことになったのです。
つまり小さな島の防衛では、海から上陸して敵と対峙することになるため、海上を船のように進み、そのまま陸上に上がって戦闘行為を続ける必要があるからです。そのためには水陸両用の装甲車が必要となり、それがアメリカ軍が使っていた「AAV7」という水陸両用車だったということです。

全長約8m、幅3.27m、高さ3.26m、重量26トンというかなり大きなこの装甲車は、最大25名の兵士を乗せて海上をウォータージェット推進機構を用いて時速13kmで航行、そして陸に上がれば時速70km以上で走行できるそうです。
一台の価格は5億円、先ずは4台を購入して水陸機動団に配備し、作戦計画を立て、実地訓練を経て、そして離島防衛の任務に当たるというわけですね。

小野寺五典防衛相は、4月16日に霞ケ浦陸自駐屯地でこのAAV7に試乗し、そのあとの訓示で「(中共の海洋活動活発化で)水陸両用作戦能力の早急な整備のため、水陸両用車の検証を進め可能な限り早期に運用態勢を整えることが必要」と述べました。
ここで注意すべきは、「水陸両用車の検証を進め・・」という部分ではないでしょうか。つまりAAV7は検証のために導入するという意味に取れます。
おそらくこのAAV7は、三菱重工とかIHIあたりが整備担当企業になるのでしょうから、その後国産ということが念頭にあったのだろうと推察されます。密かに、そして確実に、ぜひ頑張ってもらいたいですね。

さて、このAAV7の実戦での状態を見てみますと、惨憺たる結果も見えてきます。
水上航行のため軽くする必要があって、装甲はさほど厚ないそうです。そしてそのためイラク戦争では多くの被害を出しています。
つまり陸上ではその大きさゆえに機動力が鈍くなり被弾することが多く、さらに装甲が薄いために撃ち抜かれて被害が出るというものです。

水陸機動団が今後遭遇する防衛任務はおそらく尖閣諸島になるでしょう。現在でも中共の幹線が周辺をうろつきまわっていますから。
しかし、ここにAAV7を投入することは難しいようです。海岸から500メートル前後は水深1メートルほどの浅いリーフであり、その後、水深2~3メートルの凸凹の激しいリーフが続く状態ですからAAV7の性能では踏破できない可能性が高いとか。

そこで防衛省は、水陸両用装甲車の運用のために「おおすみ」級輸送艦の改修を計画し、さらに搭載されている2隻のLCAC(大型ホバークラフト)の改修まで考えているようです。それは来年度予算に上がっている要求を見れば明らかだとか。

防衛省の作戦は、AAV7を自力航行で母艦から海岸まで到達させるのではなく、LCACに搭載して上陸するというものだと見られます。
でも、それならばなぜ水陸両用装甲車にする必要があるのか、LAV25など装輪装甲車などを使用すれば良いのではないかという疑問が出てきますね。

現実にアメリカの海兵隊はLAV25をヘリコプターで内陸部に運び作戦を実行しております。
LAV25は全長6.4m、幅2.5m、高さ2.7mで、重量12.8トンという比較的軽い水陸両用戦闘車です。ヘリコプターで運搬が出来るように考えられた八輪式歩兵戦闘車ということで、スイスのモワク社製装甲戦闘車両(AFV)ピラーニャ・ファミリーが原型だとか。
たしかに水上航行のスピードは時速12kmで、AAV7よりは遅くなります。ただし陸上では時速100kmで走れるそうですからAAV7よりも早いですね。(整地されていればの話ですが)

AAV7はブラジルの海兵隊も使用しているそうです。しかしやはりスイス製の8輪ピラーニャも併用しているとか。運用では苦労しているみたいですね。
英国の海兵隊は空輸も可能な不整地踏破性を有するBvS10バイキングなどを使用し、さらにシンガポール製のブロンコ(スウェーデン製Bv.206を原型とする)も採用していると言うことです。

さて、ほとんどアメリカの指揮下にあるような日本の自衛隊です。ですからアメリカ製を購入するのは仕方ないでしょう。
しかし、世界には多くの水陸両用戦闘車があるものですね。AAV7を使い、アメリカ海兵隊から学び、その上で日本で改良したAAV7で島嶼防衛をより完璧なものにすることが日本版海兵隊である「水陸機動団」の戦略なのでしょうか。
その上で、さらに強力で軽い装甲板などの開発も進め、島嶼防衛の切り札的な水陸戦闘装甲車を開発しましょう。

水陸装甲車の開発は、大雪のラッセル、海難事故での救助活動、震災時の救助活動にも使えるはずです。
このような装備から日本の軍事技術開発をスタートさせて、高度技術の育成に力をそそぐことこそ、本物の平和への貢献ではないでしょうか。
そして一般企業のような利潤一辺倒の開発ではなく、腰を据えた本当の高度技術は、このような開発環境からしか出来てこないはずですからね。

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