2013年10月10日木曜日

FRB議長、バーナンキ氏からイエレン女史にバトンタッチ

国債の追加発行が決まらないアメリカ・オバマ政権。そこでFRB議長がバーナンキ氏からジャネット・イエレン女史に交代しました。上院で承認はまだだそうですけど。
さて、アメリカの通貨政策はどう変わるのでしょうか?

ボラティリティ・インデックス(VIX)が前日比0.93ポイント上がって20.34になったとか。わけのわからない数字ですが、通称・恐怖指数と言われているもので、市場での投資家達の心理が「不安心理が強まった状態」になったのだそうです。

恐怖感とは感情ですから、先々が判らなくなると上がるのは必定。すなわちイエレン氏の考え方が市場にどう響くのか、それが判らないということでしょうね。

イエレン氏は2010年にFRB副議長に就任し、その後バーナンキ氏とともに景気を健全な状態に回復させるため、FRBが新しいリスクの高い政策を取るよう先頭に立って要求してきた人です。
すなわち、数兆ドルの米国債を買い入れることで長期金利を引き下げ、最終的に失業率を低下させること(量的緩和)を進めた人です。

この彼女の政策には、「この政策は景気回復にはほとんど役に立たず、インフレや金融の不安定化を引き起こす危険がある」と指摘する、日本の財務省のような考えの人も居ります。
しかし、停滞した景気を刺激するためには型破りな措置もいとわないイエレン氏なのです。

彼女こそ、故ジェームズ・トービン氏の秘蔵っ子として受け継いだ知的遺産を実践しようと、その信念には揺らぎはないようです。
ジェームズ・トービン氏とは、ノーベル経済学賞を受賞したエール大学教授のことで、かつてはケネディ大統領やジョンソン大統領にも助言をしました。
大恐慌時代のイギリスの経済学者「ジョン・メイナード・ケインズ氏」の考え方を基本の哲学として、通貨や財政などよりも高失業率や貧困などの問題にこそ政府は力をそそぐべきだという経済の本筋を通した経済学者です。

FRBとか日本銀行もそうですが、通貨発行を行う機関には常に背反する2つの任務があります。1つは雇用の最大化であり、もう一つは物価の安定ということです。
アメリカの議員には、物価安定を最優先課題と考える人も居て、イエレン氏は「インフレバイアス」がかかっているとなどと批判しているそうです。

しかし、イエレン氏はインフレバイアスを認めながらも「物価の急上昇は阻止する」という政策を訴えていると言うことです。
憶測や風評などは気にせずに、ただデータだけを信じ、そのデータを理解し整理して、慎重な作業を通して形成した自らの経済観に、絶えず疑問を投げかけたり、試したりしているイエレン氏です。
2009年から2012年までにFRB当局が行った公の経済予想をウォール・ストリート・ジャーナルが分析したところ、イエレン氏の予想の精度が最も高かったという事実もあるほどです。

安倍政権がアベノミクスでインフレターゲットを2%に設定すると表明しましたが、その2%とはイエレン氏が提唱した数字だったようです。彼女は2011年に「インフレが2%前後の水準にあるときの(物価上昇と失業率低下の)トレードオフを考えれば、2%は妥当な目標だ」と述べております。

安倍政権は、消費税8%を宣言してしまいました。その背後にアメリカの影があったとしたら、それがFRB議長の交代を意識したものだったのかも知れません。
消費税の引き上げで、アベノミクスは挫折する可能性が非常に大きくなりました。その消費税8%を宣言した後にFRB議長の交代です。
そして代わったイエレン氏は、アベノミクスが唱えたインフレ目標2%の提唱者だったのです。

アベノミクスが成功すれば、世界経済を日本がリード出来るところでした。しかし消費増税がそれをダメにし、変わってアメリカのFRBにイエレン氏が就任するわけです。
これでアメリカが再び世界の経済をリードする立場に戻る可能性が大きくなったような気がします。

通貨発行の根本理念は、「人類の幸福度を高める」ことであり、そのためには「失業の撲滅」は必須で、「政府と中央銀行は失業率の低下に貢献できる」という信念を持ち、「物価の急上昇は阻止するがインフレ傾向は維持する」という経済哲学が、現実にどうなっていくかはまだ判りませんが、少なくとも哲学なき経済政策よりも良いことは間違いないでしょう。

もしこのアメリカ経済が成功し、日本経済が再びデフレ地獄に落ち込むならば、その原因はアメリカの謀略にあるのではなく、「哲学とそれを実施する信念の欠落」ゆえに日本は地獄に落ちたと考えるべきなのかも知れませんね。

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