2019年1月27日日曜日

米中経済戦争、閣僚級協議の行方

トランプ大統領は、メキシコ国境の壁建設に反対する民主党に譲歩する形で政府機関の再開に応じました。
35日間に渡る政府機関閉鎖で国民生活に危険が生じ始めたからだと言います。

空港職員の給料未払いで欠勤が続き、2400便以上の航空機に遅れが出たこと、そしてFBIに対し、犯罪組織などの内部の動きを通報してくる情報提供者への報酬の支払いが滞り、捜査に悪影響が出ていることなどがあったからだそうです。

しかし、3週間以内に壁建設のための予算措置の合意が得られなければ、「国家非常事態宣言」も辞さないというトランプ大統領の決意も表明されたとか。

そしてその3週間の中、今月末の30日と31日に中共との間で閣僚級貿易協議がワシントンで開催されます。ここに集中するためにとりあえず壁問題を休戦に持ち込んだのかも知れません。

どうやら習近平指導部が対米姿勢を転換し、大幅な譲歩策に舵を切るのではないかという見方が広がっているそうです。
中共の経済の成長減速が、共産党の統治基盤を揺るがしかねないとの危機感が出てきたからで、なんとかトランプ政権を治めたいという思惑のようです。

しかし知的財産権の保護などでは時間かせぎしたい思惑もあるようで、そこら辺を曖昧にしたまま対立回避をしようとしているようです。
昨年の10月のペンス副大統領の演説に驚いた習政権は、アメリカとの「新冷戦」になることを何としてでも回避したく、「譲るべき点は譲って関係を正常化させる」との対米方針を決定しました。

中共の雑誌、財新週刊が新年号に「いかに米国と交渉するか」と題した社説が掲載され、そこには「中共が(アメリカと)約束したことをきちんと実行するしかない」と述べられているそうです。
しかし「開放」や「核心的利益」が具体的に何を指すのかは不透明のままで、交渉結果を翻訳のごまかしで曖昧にし、中共側の都合のいい解釈でアメリカの認識とは違う展開をすることは大いに考えられることです。

そこには、いかにして中国共産党を守るか、言い換えれば共産党の既得権を守るかという保身が見えてきます。
トランプ政権は、おそらくこの共産党を潰そうと言う考えのようですし、アメリカの世論も多くが反中共になっていますから、対中交渉で曖昧な結論を受け入れるとは思えません。

産経の田村秀男氏によりますと、「失速する中共の経済は今や、破綻危機に直面している」と言います。
「日本や米欧の中共専門家やエコノミストの多くは習近平政権が融資と財政支出を拡大すれば、従来のように回復可能とみるが、そんな楽観論は基本的に間違っている。中共の特異な市場経済モデルを西側と混同しているからだ。」と批判しています。

そして「中共の金融経済は、共産党の指令のもと、中央銀行である人民銀行が流入するドルを買い上げて人民元を発行し、国有商業銀行を通じて融資する。企業や地方政府は工業や不動産開発に資金を投入し、景気を拡大させるという方法を取って来た。」として、「その異質さゆえに、中共はこれまでは高度経済成長を遂げ、2008年9月の「リーマン・ショック」を乗り切ったが、今回は不可能だ。」と厳しく現状を述べております。

その理由として「中共からのドルの流出が増え、流入が細っているからだ。」ということを挙げておられます。

そして「トランプ政権の米中経済戦争は、その中共に追い打ちを掛けた。人民銀行は景気対策に必要な融資拡大に向け、人民元の発行を思い通り増やせない。ドルの裏付けのない人民元は暴落リスクが高まるからだ。」と述べ、もはや過去のような経済対策は使えないとことを明言しました。

さらに「無理やり、人民元資金を増発しても、先行き不安が高まり、中共からの資本逃避が加速、株式や不動産市場は崩落危機にさらされる。」と絶望的なことを述べ、「中小企業向けや、『融資平台』と称する地方政府の不動産開発資金調達機関向けのシャドーバンキングは大きく縮小している。」とさらに厳しい中共経済を分析します。

不本意ながらこのような環境が金融引き締めを余儀なくして、地方政府は傘下の融資平台の債務不履行が続出する一方、融資を受けられなくなった中小企業の倒産が続出しているそうです。

米中経済戦争で、アメリカが関税アップを猶予した期間は3月1日までです。米中経済交渉が不発に終われば、中共の金融市場も不動産市場も一斉にパニックに陥る可能性は大です。
ですから今度のワシントンで開かれる「閣僚級貿易協議」は、中国共産党の命運を掛けた交渉になるはずです。

ただ、忘れてはいけないのは「トランプ政権は中国共産党を潰すために戦っているようだ」という点です。ですから安易な妥協はしないでしょう。
中共の経済がパニックになれば、その影響は我が国も被ります。リーマンショック以上の影響があることは間違いないでしょう。

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