2019年1月17日木曜日

EU離脱は拒否されたのか?

メイ首相が必死に行ったEUとの離脱交渉。そしてまとめた離脱案が英国議会で否決されました。与党議員らの多くが、このメイ首相の離脱案に反対したからです。

野党・労働党の読者が多いガーディアン紙は、「与党から大量の造反者が出てメイ首相は歴史的敗北を喫した」と書きました。
労働党のコービン党首は「採決で政権への不信が決定的になった」として、内閣不信任案を提出したそうです。

しかしこの否決の票には「離脱反対派」と「EUとの妥協案に反対」という2つの背反する意見が混ざっているように思います。
すでに決まった「EU離脱」は、おそらく英国民の多数を占めていると思うからです。

EUとは、もともと欧州各国の貿易をスムーズに行うことが目的で始められ、国境を低くすると言うことでやがて人々の交流もスムーズにしようと、パスポートなしで国境を行き来出来るようにしていったものです。
ここまでは結構うまくやっていたようですが、それでも英国民には「EU参加以降良いことが一つもない」といった不満はあったようでした。

ここにさらに共通通貨という政策が持ち込まれ、「ユーロ」という国家を背景にしない通貨が作られたのです。「通貨発行は国家主権の一つだ」と言うことで英国サッチャー政権はユーロに参加しませんでしたが、ここから歯車が狂い始めたと見るべきでしょう。

ユーロを支えたのは経済の優等生であったドイツです。ドイツの生産力がユーロを支えましたが、それでも次第にじり貧になって行きます。ユーロ参加にギリシャなどの赤字国が参加してきたからです。

そこに近年、中東からの移民を大量に受け入れるというEUの決定がなされて、アラブの春とかシリア問題などが重なって大量の経済移民が欧州に押し寄せました。
「安い労働力」などは思い込みに過ぎず、いきなり医療保険とか失業保険などを要求され、あっという間に欧州の社会福祉ステムが壊され始めたわけです。

フランスでは「イエローベスト・デモ」が起こり、ドイツでは「ドイツの為の選択肢」が台頭するのは、このようなEUの政策に対する反発が具現化しているということでしょう。

このような中にあって、EUがブレクジットを警戒するのは、英国がEUを抜けた後、フランスやイタリアがEU脱退を言いだしかねないからです。
欧州の主要国が抜けてしまえば、事実上EUは解体されたのと同じことになります。

そこでEUは、英国・メイ首相との協議で他の加盟国がEU脱退を言いださないような離脱条件を示したようです。行き詰っていたメイ首相は、それでも協議はしたのでしょうが、結局その妥協案を呑まされてしまいました。

そしてこの妥協案を以て英国議会に臨みましたから、与党側からも反発が出てメイ首相の提案した「EU離脱案」が拒否されてしまったわけです。

これを見たEU側が、すぐに「もうこれ以上英国とは交渉しない」と言ったのは、これ以上少しでも英国に有利にすると他の加盟国からも離脱国が出て来る可能性が大きいからだと思います。

さらに英国側にはアイルランドの問題があります。北側の英領アイルランドと南のアイルランド(独立国)のあいだの問題です。アイルランドはEU加盟国であり離脱はしません。この北と南の間には国境があるのですが、北アイルランドでは英国統治の継続を求める人々と、アイルランドとの併合を望む人々が紛争を繰り返してきた経緯があります。この紛争を収めるために「開かれた国境」を重視してきたのですが、英国とEUの合意案では英国全体が事実上、関税同盟に残り、北アイルランドはEU単一市場の一部ルールがさらに適用される・・となっていたのです。
ここが与党が反対した大きなポイントだと思います。確かにこれでは完全なる離脱にはなりませんね。

こうして英国のEU離脱は再び暗礁に乗り上げてしまいました。

しかし。このEUやユーロの問題は所詮「貿易の合理化追及」の手段でしかないわけです。そこに国家主権問題やら移民問題やらを絡ませるグループが居るからややこしくなっていますが、今後はこの貿易部分は「電子マネー」がかなりの部分を解決してしまうことが予想されます。

EUという縛りが無くても、ユーロという決済通貨は無くても、カードやスマホで国外の商品を買うことが可能になるでしょう。異なる通貨の換算はネットを通じて瞬時に計算されますから、何のもんだ主なくマルクでフランの買い物が出来るようになります。貿易も様々な流通ルートが出来て、これまでのような信用状や船荷証券といった複雑な手続きは不要になるはずです。無くなるのではなくコンピュータで瞬時に行われ、売買当事者は意識する必要が無くなると言う意味です。(だから中共との間で5Gを巡って戦争になるのですが・・その件は別途に)

ブレグジット問題。なんだか貿易の過去の因習にこだわっている、無意味な騒動のような気もするのですけど・・・

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