2015年6月4日木曜日

町工場の未来は明るい

産経に、「舞い上がれ! 小型飛行機『STOL CH-701』」という記事が出ていました。
東京都墨田区で高速通信機器の製造などを行っている「ソネット」という町工場の社長・林博昭氏(71歳)が中心となって進めている「飛行機作りのプロジェクト」の記事です。
http://www.sankei.com/premium/news/150529/prm1505290009-n1.html

記事によりますと、林さんが10年以上前に米国で手に入れた「STOL CH-701」という飛行機のキットがあって、買ったはいいけど時間がないまま放置していたところ、それを聞いた「すみだ中小企業センター」の相談員が、墨田区の町工場の活性化になるとして区内の工場主や町工場の作業員らに呼び掛け、集まった皆さんが「みんなで、他ではやっていないようなことをやろうって盛り上がった。いい年したおっさんたちが集まって作業している」ということに相成ったと言う訳です。

キットと言っても、欧米のキットは日本のプラモデルのようなものではありません。図面と材料が渡されるだけで、後は「顧客が勝手にやれ」と言うもの。判らなかったら自分で勉強しろ・・とばかりに突っぱねます。
日本のキットのように、お客様第一で「フールプルーフ(馬鹿でもできる)」ようにはなっていないのが常です。

だからこそ「クラフトマン」達は燃えるわけです。キットは「すみだ中小企業センター」の一角に運ばれ、毎週水曜日の夜に集まって作業をしていると言うことです。
町工場の集まりですから、板金工や金属加工、電気関係など、さまざまな職種の人が居ります。ですから水平尾翼の骨組み作業とか、アルミ合金をかぶせる作業など専門職のアドバイスのもと、楽しく作業が進んでいるようです。

このプロジェクト代表で、プラスチックの真空成型を行っている「吾嬬製作所」の松村昌幸専務は、「いろいろな業界の人と、知恵を出し合うことで、新しい加工方法が生まれるなど、面白い化学反応が起きている」と嬉しそうです。
「災害時に短い距離の滑走で飛び立ち、物資が届けられる飛行機があれば」と言う林さんの思いから始まったプロジェクトです。飛行機が飛んだら、次は人の乗れる無人機などに発展していくといいですね。

最近さまざまな「異業種交流」が生まれております。共同受注とか相互取引など、主に経営に役立つような集会が毎月1回ぐらい行われているのが一般的です。
しかしこれではビジネスに偏りすぎて面白くなくなり、結局は会合後の呑み会に重点が移ってしまうわけです。
共同受注とか相互取引がうまく行っても、その金額が大きくなると取引上のトラブルが発生し、他の会員にも影響がおよび解散などになることは多々ありますね。
詐欺まがいの会員も入ってきたりしますので・・・

アメリカで始まった「FabLab(ファブラボ)」というムーブメントは、我が国に入ってきましたが現在まだ不活性です。商業主義に嵌ってしまった日本では、FabLabもどこかの企業のバックアップがついて、デジタルファブリケーションなどに特化して、つまらない「工作の集い」になってしまったようです。

アイディアを具現化するには、「燃えるような情熱」が必要です。「芸術は爆発だ」とは故)岡本太郎氏の言葉ですが、アーティストだけでなく、クラフトマンにも言えることですね。
この「燃えるような情熱」をいかにして紡ぎだすか、そこがFabLabなどの課題なのですが、そこが判っていないようです。

この墨田区の「飛行機作りのプロジェクト」は、年齢に関係なく、一番難しい「燃えるような情熱」を紡ぎだすことに成功したようです。
すべてがボランティアでありながら、もし完成すれば全国に向けた宣伝効果も出ます。あの飛行機を作った工場ですとも言えるようになるかも知れません。

我が国にはきわめて多くの中小零細の町工場があります。何か機械を1~2台持って内職的な加工作業から、重い金属の加工などまで、職人として働く社長も多いわけです。

この工場を、「一般開放」したらどうでしょうか。
他の工場の職人さんでも使えるようにするわけです。各工場独特の作業性をレクチャーする教室もどこかに設けます。一般の趣味の参加も教室経由なら受け入れます。
我が国だから出来るFabLabを構築していきます。機械は有料で貸し出します。作業の出来ないお客様はその工場の職人の仕事として受注も出来ます。若い職人も生まれてくることでしょう。

さまざまなアイディアが集まるように工夫し、「燃えるような情熱」を紡ぎだす工夫をします。こうして町工場の活性化を図るわけです。
現在は、下請け孫請けの町工場ですが、このようなやり方で直接客と向かい合うことが可能になって行きます。
町工場が無くなっていくのは、コストダウンを図る大手企業の産業主義に基づく合理化が原因です。しかし、このようなオープンファクトリー化による事業転換が経済の活性化にも役立つかもしれません。
「良いものを安くすべての人に」というスローガンから、「私だけの高級ブランド」というスローガンに切り替える時ではないでしょうか。

現在は「良いものが安く、すべての人は持っている」時代なのです。そして我が国の職人技こそが、我が国の宗教の原点(神技)でもあります。
若き「神技」の卵を育てるためにも・・・

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