2015年6月22日月曜日

遂に成立、発送電分離法

改正電気事業法が成立しました。この法律で発電事業と送電事業が分離されたわけです。しかし、これだけで良いのでしょうか?
発電事業は民間資金で投資され自由に企業化しても良いでしょうが、送電事業は国家の安全保障にかかわる問題を含むからです。

私は送電事業は国家事業として、基幹送電網は国の管理下に置く方が良いのではないかと思います。そして各県の電力網は県の事業として、そこから町や村への送電部門は市区町村が担当するようにして、戦争や自然災害に備えるべきではないでしょうか。

少なくとも送電事業関係は、それなりの法によって守る必要がありそうです。
そして送電網を超電導電線に切り替え、送電ロスを少しでも減らしていく努力が期待されます。現在の送電網は、電力会社によってコントロールされています。この制御で送電ロスは4%~5%程度に抑えられていますが、それでもその量は東京電力の場合で年間134億300万kwh くらいが送電網で失われております。

このロスは、現在の送電が交流送電であり、高圧で送電しますから電磁誘導によって空間に逃げてしまうからです。
その昔、トーマス・エジソン氏とニコラ・ステラ氏の論争があったことが思い出されます。エジソンは直流送電にこだわりますが、ステラ博士は交流によって高圧化し、送電線を細くした方が有利だと主張します。

結果はニコラ・ステラが勝ったようで、その後世界中の送電網は高圧化された交流送電となっております。
この時代、社会がどのくらい電気を要求するかが判っていなかったのでしょう。しかし、各国は富国強兵の時代となり、産業に電力が不可欠となって、ステラ博士の交流発電が主力となり、今日にまでつながっているわけです。

しかし、この論争はまだ終わっていませんでした。1986年、スイス・チューリッヒにあるIBMの研究所で、ベドノルツとミューラーという二人の研究者が、La-Ba-Cu-O系の物質によって、液体窒素温度で超電導現象が確認されたという研究発表がなされた時から、この論争は再燃し始めます。

それから30年以上、この液体窒素温度での超電導の研究は続けられ、磁性体などの改良も行われ電気エネルギーの効率的使用が格段に上がってきました。
そして現在、日本では古川電工や住友電工、日立電線、昭和電線などがこの超電導電線の開発で鎬ぎを削っています。

その結果、住友電工が量産技術の開発に成功し、ケーブルのコストを大幅に低価格化することに成功しました。
使用する資源について、ビスマスの資源量は問題ないそうですし、少量使用する銀については、デジカメの普及でフィルム需要が激減したため銀の相場が下がり、現状で超電導電線の使用する量ならば相場を大幅に上げるほどの心配もないそうです。
むしろ現在は資源としての銅の方が逼迫しており、超電導電線はその意味でも有利であると言うことです。超電導電線で大電流を直流送電にすれば電線は1本で済みますから、さらにコストは安くなります。

そして超電導を維持するための液体窒素で-196℃に冷却する方式については、中部大学で行われた開発が注目されます。
これは、動力を使わず液体窒素を自然循環させ、さらに熱の侵入を防ぐという冷却システムの技術で、消費エネルギーを減少させることに成功したのです。これで冷却システムで使用する電力量が大幅に下げられるようです。
これで「冷却コストを含めても、交流送電に比べて一桁から二桁は送電ロスを減らせる」と中部大学の山口作太郎教授が述べておられます。

さらに山口教授は、実験データを分析した結果、液体窒素の冷却装置は2kmごとの設置でも大丈夫ということがわかってきたと述べております。
2kmとは、現在の高圧電線の鉄塔間の距離よりも長いのではないでしょうか。

そしてこの超電導電線を高速道路の付帯設備として考えれば、維持管理費も大幅に減額されるのではないでしょうか。高速道路だけでなく、市中の生活道路にも超電導電線の埋設がなされれば、里山の景観から送電の鉄塔がなくなり、市街地から電柱がなくなります。

発送電と言いますが、今後は蓄電設備がこの送電網に参加してくるでしょう。リチュウムイオン電池とかアルミ電池などの二次電池の研究も進んでいます。
各家庭では、電気自動車による蓄電設備が普及することも考えられます。この蓄電設備の普及で、電力ピークを下げることが出来ますから、電気料金の減額化に貢献するはずです。それには明確で複雑な電気料金の課金システムが必要にはなるでしょうけど。

いずれにせよ、我が国のエネルギー政策が石油から電気にその主力を移していく必要があると思います。核融合炉も夢ではなくなった現在、電気エネルギーこそが国家の基幹エネルギーになる日もそう遠いことではないでしょう。

この発送電分離法案が、このような未来の入り口になることを祈念いたします。

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