2013年7月29日月曜日

終戦のエンペラーを見て・・・

アメリカはここまで日本文化を理解した・・・と言うような触れ込みで封切られた「終戦のエンペラー」を見てきました。
日本がポツダム宣言を受託したのが1945年8月15日。映画はその前の東京大空襲と、その後の原爆投下から始まり、原爆によって日本はポツダム宣言を受託したというところから、このドラマがスタートします。

厚木基地に向かう飛行機の中で、「天皇は独特のやり方で国民を再び団結させた」というセリフがあります。それが「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び・・」という玉音放送のアメリカの理解だったようです。
そして厚木基地に降り立つマッカーサーのセリフが、「武器を持たずに降りて、日本は戦争に負けたのだと実感させてやる」と言うものでしたが、本当はそうではなかったはずです。

危険だから武器を携帯するように勧める部下に、マッカーサーは「日本人は撃ったりしない」と自信満々で、武器を持たず、コーンパイプをくわえてタラップに出たという話でしたけど。
それは、フィリピンで日本軍と戦った経験を持つマッカーサー氏の、日本人の理解だったはずです。映画ではそこが語られておりませんでした。

映画は、「この戦争の真の責任者を探す」という進駐軍の目的を基軸に展開されます。戦犯を調査してもその答えは出てきません。そしてついに「天皇陛下」から直接聞くしかない・・・となって第一生命ビルで「マッカーサーと天皇陛下の会談が組まれたことになっています。

その流れの中で、調査した戦犯などの日本人が「陸軍の独走」をほのめかします。そして天皇陛下がこの戦争を終わらせたことを強調し、そして天皇陛下は真珠湾にも関係していないことも。
映画はこうして、天皇陛下との会談というクライマックスに向かうのです。

マッカーサーと天皇陛下の会談のシーンは、陛下がマッカーサーに「この戦争の責任は全部自分にある。国民にはない」と述べるところでしょう。
驚くマッカーサー、そして「陛下、どうかお座りください。我々は責任を追及するのではなく、この国をいかに再建するか、そのことで陛下のご協力がいただきたく・・・」というくだりで終わります。
何か物足りない終わり方で、だいぶ事実とは異なる歴史ドラマだと感じてしまうわけです。

私の知る事実は、会談は陛下からのご要望だったということ。そしてマッカーサーは、ナチスの戦犯の助命嘆願に辟易していた知人の話を聞いて(ニュルンベルグ裁判)、陛下も同じだろうと考えていたらしいのです。

ところが、会談の冒頭、このような「自分に責任がある(実際は「自分の身は閣下におまかせする」という発言だったような・・)」という発言をされたので驚き、それに続いて話された言葉が「国民は今、飢えている。食糧の援助が欲しい」と言われ、そして「皇室には2000年にわたって受け継がれた宝物がある。それで支払いたい」とまで述べられたと聞いております。

これに感動したマッカーサーが「陛下、ご心配には及びません。我々は食糧をただちに提供いたします。支払をいただくことはありません。陛下の宝はどうか陛下のもとに置かれますように」と答えたと言います。
マッカーサーはこの時「日本国民と天皇陛下の信頼関係」がいかなるものかを、ロジカルな説明ではなく、それでもはっきりと理解したのでしょうね。
映画ではここの表現がまったくなされていませんでした。ですから物足りなさを感じ、「これが何で『終戦のエンペラー』なのか?」と思ってしまうのです。

この頃の日本国民は「軍部の独走」とは思っていなかったはずです。当時の日本国民は負けた軍人を軽蔑していたかも知れませんが、軍部が悪かったとは思っていなかったでしょう。
それは東京裁判の中で作られた「軍部独裁」であって、ラジオ放送による「やらせ」があって、それが今に続く「軍隊=悪」という歪んだ常識を作り出してしまったのです。

そこらへんはまあハリウッド製の映画ということで我慢できますが、最後のシーンだけはやはり不満です。

またアメリカによる食料援助も、「小麦」を食わせて、やがて日本を大きな小麦市場とし、アメリカの小麦を輸出しようという経済的謀略だった・・・などとも言われています。
だからアメリカから輸入される小麦粉を、日本人はメリケン粉と呼んでいた・・・のかどうかは知りませんが、この謀略は半分くらいは成功したようですね。(今の若者は米をあまり食べませんから)

不明な点が多い「第二次世界大戦」の終末。ヤルタ・ポツダム体制によるその後の世界支配と、核と放射能を使った「恐怖の平和」の60年。
そして今、多くの技術開発が達成された時代に起こっている「世界規模での経済不況」。それが次第に第二次世界大戦前と同じような環境を呈しつつあること。
これからの平和維持には、第二次世界大戦の真実の追及を欠かすことは出来ません。

第二次世界大戦の本当の原因は何だったのか? 終戦後に行われた枠組み(戦後既得権)は何を意味するのか?
そんなことを研究する映画として、この映画を使うことは適切ではないようですね。

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