2012年5月3日木曜日

北朝鮮の妨害電波、軍事的に脅威となるか?


韓国で大規模GPS障害が発生しました。韓国国土海洋省が5月2日に発表したものです。
4月28日の早朝6時15分ごろから11時にかけて発生したGPS障害で、約250の航空機が影響を受けたということですが、旅客機はGPSをサブとして使用しているため、事故などは発生しておりません。

韓国政府関係者によりますと、「妨害電波が北朝鮮の開城の方から発信されたようだ」とのこと。そしてこの妨害電波はそれ以降毎日発信されているようです。
この障害は韓国中部の上空でも起きているようで、本当に妨害電波が発信されているのかどうかは、現在韓国の政府機関・放送通信委員会が詳しく調べているそうです。

北朝鮮が妨害電波を発信したのではないかという懸念は、先月、北朝鮮が韓国に「革命武力の特別行動」を予告していることから、韓国内でGPS妨害やサイバーテロなどの可能性が指摘されていたためです。

最近の電波は、高周波になっていて妨害電波がやりにくくなっているはずですから、GPSでも実際に妨害されたとなれば、近代兵器にとっても由々しき問題でしょう。
軍事的には、高周波デジタル通信の妨害手法としては大別して2種類あります。アクティブ方式とパッシブ方式です。

今回の障害が妨害電波だとすると、使われたのはアクティブ方式でしょう。
アクティブ方式は、実際に信号を受信できなくするノイズ・ジャミングと、信号の正当性を騙す欺瞞(ディセプション)方式があるということです。
ノイズジャミングは、照射することで自己の位置を明確にしてしまうので、遠隔ジャミングを行なうか、あるいは友軍機に同行するエスコート・ジャミングを行うか、その取り扱いは難しいようです。
また、友軍も同一周波数帯は利用できなくなってしまうという欠点があります。
そのために各種方式が考案され、「スポット・ジャミング」「バラージ・ジャミング」「スイープ・ジャミング」などが研究されています。

欺瞞(ディセプション)方式は、レーダーに捉えられた機影を騙すわけで、位置がずれるように反射波を作って送り返し、攻撃を回避する技術のこと。レーダー技術のひとつですが、これでは広範囲な妨害にはなりませんから、北朝鮮が使ったとすればやはりジャミングということになるでしょうね。

GPSの電波は、赤道上の静止衛星か振り子式に動く準天頂衛星から電波を出し続けることで測位が出来るわけですから、妨害を避けようとするならば複数の周波数を切り替えて使用すれば避けることが出来ます。
平時のGPSにはそこまで必要が無いということで、妨害しやすくなっているようです。

北朝鮮は、自国内の地理情報を出していません。先軍政治で国家自体が秘密隠蔽していますから、侵攻する時はGPSによって位置を確認しながらになるはずです。
例えば拉致被害者救出には必ずGPSを駆使した作戦になるでしょう。だとすれば、このGPS妨害は、このような時のための実戦訓練とも考えられますね。

そうだとすれば、この韓国の発表は、むしろ北朝鮮に自信を付けさせる結果になったようです。

この北朝鮮の技術的進歩は、日本の準天頂衛星にも、周波数を切り替えて測位情報を発信する技術を取り入れなければならないということを意味しているのかも知れませんね。

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