2018年5月24日木曜日

北方領土と北極航路・日露首脳会談

「ロシア経済の再建には日本の協力が必要」とはよく聞く話です。しかしロシア国民にとって、現在のロシア経済はそれほど悪いとは感じていないような節もあります。

長い共産主義時代、少量の食物を求めて長い行列に並んだ記憶が、まだ残っているということですね。ですからその頃と比較すれば、「まだ現在のほうが良い」という認識なのだという話を聞きました。

ロシア国民は「強いリーダー」が大好きで、それゆえの「プーチン人気」なのだそうです。モスクワとか、その他の近代化された場所では「反プーチン・デモ」が行われ、ジャーナリズムはすべて反プーチンです。
アメリカもジャーナリズムは反トランプですから、どこのジャーナリズムも同じようなものですね。

特にひどいのが反・安倍のジャーナリズム・・そう、朝日新聞です。野党の反・安倍も併せて、「反・安倍のための反安倍」と言う意味不明な国会論戦という感じですからね。

今年に入ってからさまざまな首脳会談が盛んに続けられております。そして5月26日にモスクワで安倍・プーチン首脳会談が行われるそうです。
6月と思っていたのですが、早まったのはやはり北朝鮮と中共問題のためでしょうか。
北方4島の返還も話し合われるそうですし、安倍首相は交渉に意欲を示しているということです。しかしロシア側は北極航路を中共から守るために、この北方4島が軍事的にも重要になってしまったことはご承知の通りです。

北方4島が千島列島には含まれていないことは、今から150年前の1855年2月7日に調印した日ロ通好条約に書かれたことです。すなわち日本とロシアの国境を択捉島とウルップ島との間に定めたというわけです。

その後1875年に樺太千島交換条約が結ばれ、我が国は千島列島(シュムシュ島からウルップ島までの18島。)をロシアから譲り受けるかわりに、ロシアに対して樺太全島に対する権限、権利を譲り渡したわけです。
この時点で択捉島とウルップ島の国境は宗谷海峡の国境に変わったのですが、北方4島と千島列島は一体化したわけではありません。

大東亜戦争で負けた我が国は、1951年のサンフランシスコ平和条約で我が国が千島列島に対するすべての権利、権限び請求権を放棄しましたが、あくまでも千島列島であって、そこには北方4島は含まれていないというのが我が国の主張です。根拠はこの日ロ通好条約にあるわけです。

もちろんロシア側は、樺太千島交換条約でこの区切りはなくなったと主張するでしょうね。つまり「日ロ通好条約」か「樺太千島交換条約」か・・という論争が北方領土問題と言うことです。

大東亜戦争末期、当時有効であった日ソ中立条約を無視して、我が国に対し宣戦布告し、我が国のポツダム宣言受諾後の8月18日には千島列島に侵攻し、その後29日から9月5日までの間に北方四島のすべてを占領し、一方的にロシアは自国に編入した・・・などとの恨み言は国際社会に通用しないと思います。あくまでも条約の解釈の正当性で国際社会に訴えた方が良いようですよ。

1956年「日ソ共同宣言」と言うものが締結されています。今は無きソビエト連邦との交渉ですが、ここでは「歯舞群島及び色丹島を我が国に引き渡す」として、国後・択捉島の帰属がまとまりませんでした。そこでこの問題は先送りされます。
ロシアに国名が戻ったあと、エリツィン大統領は「1956年の共同宣言は有効」と述べました。そして2000年にはプーチン大統領も「1956年の日ソ共同宣言は有効と考える」と発言しました。
しかしメドベージェフ大統領の時代に、この共同宣言が否定されようとしたのです。首相になってからも国後島を訪問したり、「歯舞・色丹島も返還せず」と言ってみたりと、真っ向からの北方領土返還拒否といった意思表示でした。

このことから、ロシア内部に返還反対派、すなわち反日のグループも居るということが判ります。反プーチン派と反日派がどのような比率になっていてどう絡み合っているのか、交渉ではそこも知らなければならないのですが・・

そして英国などが日露接近に不快感を示し、邪魔をすることも考えられます。英国はともかくロシアが嫌いなようですからね。国際金融資本も、自分たちの言うことを聞かないプーチン・ロシアが大嫌いなようです。
ですからプーチン大統領も「経済支援と北方領土返還をバーターする」などとは言えないわけです。アラスカをアメリカに売却したと言う苦い経験もあるようですしね。

一方我が国にとっては、中共の裏庭に位置するロシアとの国交正常化は、対中戦略として有効なのです。経済支援、あるいは技術協力などは我が国の安全保障にとっても必要不可欠になりつつあります。
そういう意味では経済支援などは安全保障に掛かる費用としては安いものだとも言えるのではないでしょうか。

そしてここにもう一つの要素、北極海航路が登場してきたのです。一般的に使われるメルカトル図法では解らない「北極海を真ん中にした地図」を見ると、北海道の港からベーリング海峡を通過して北極海を経由しヨーロッパまで行く航路は、インド洋・スエズ運河経由よりも近くなるわけです。

地球温暖化の影響なのかどうかは判りませんが、近年北極海の氷が非常に少なくなり、夏場は航路として使えることをロシアが発見しました。そこに割り込んできたのが中共です。北朝鮮の羅津港から宗谷海峡か津軽海峡を経由してヨーロッパへの航路です。(中共は羅津港を金政権から租借しました)
そしてこのことは、地政学的に軍事的にも組み換えが必要な事態になってきたわけです。これがロシア側が北極航路を中共から守る必要が出てきた理由です。

宗谷海峡と津軽海峡の両方に睨みが効く国後島と択捉島。そこにロシア軍基地を作るのはそのためですね。
北海道には軍隊が居ません。自衛隊の基地はありますが現憲法下では自衛隊は単なる公務員ですからアメリカ軍が背後に居ないと軍事行動がとれません。
それを知っているからロシアが不安になるわけです。ロシアはそれほどアメリカを信用しておりませんからね。
また同様に、アメリカ軍から見ても北海道の自衛隊からアメリカ軍の情報がロシアに抜けることも心配でしょう。

さて、このような情勢のなかで行われる安倍・プーチン会談なのです。どのように展開するでしょうか・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿