2016年10月29日土曜日

ドゥテルテ大統領来日

アメリカを嫌うのはドゥテルテ大統領だけではありません。フィリピンの国民の大半はアメリカ嫌いのようです。
その反動がドゥテルテ大統領の中共への歩み寄りであることは間違いないでしょう。そしてその反米であることが、フィリピン国民に受けているはずです。

中共で「軍事的にも経済的にも米国と決別する」と宣言したり、日本では「2年以内にアメリカ軍はすべてフィリピンから出ていってもらう」などと演説しましたが、それは感情的なものではなかったのかと思います。暴言大統領というイメージは、このような発言も暴言として扱うことが出来ますから便利ですね。
中共は、このドゥテルテ大統領に、インフラ整備のために約240億ドル(約2兆5千億円)の経済支援を約束しております。

フィリピンの英字新聞では、この中共の経済支援でインフラ整備支援を行うとした中共の企業に、南シナ海のスプラトリー諸島で人工島を造成した浚渫(しゅんせつ)会社などが含まれていると報じました。

「中共が大きくなってくれば、米国との間で衝突が起きる可能性はある」とか、「われわれは中共に対して同じ立場にあるのだから、手を合わせなければならない」などと言う発言も同様なのかも知れません。
日本の経済界での25日の演説では、「訪中では(議題は)全て経済だったと断言する。武器(調達など)は話さなかった」などと日本側を安心させるような発言をしておりました。

夕食会で安倍首相は、日本はフィリピンへの経済支援が現在トップであることを背景に、「日本とフィリピンの関係は深く温かく、家族や兄弟のようだ。両国の未来を大きく花開かせたい」と、八紘一宇を体現しているような言葉から始めました。
ドゥテルテ大統領も、「日本は真の友人であり、兄弟より近しい関係だ」と応じたようです。

日比首脳会談では、中共が軍事拠点化を進める南シナ海問題を念頭に、日米同盟と米比同盟のネットワークが地域の海洋安全保障を促進することを期待することが確認されました。
また、米国を敵視する姿勢を強めていたドゥテルテ大統領でしたが、アジア太平洋地域の平和と安定には米国の存在が重要との認識を共有する形となったようです。

南シナ海問題については、「国際法に基づき平和裏に問題を解決したい。われわれは常に日本の側に立つ」と、法の尊重をドゥテルテ大統領が発言しております。そして「(仲裁裁判所の)判決に基づいた話しかできない」と述べ安倍首相と同じ対応を述べられました。

日本側は、フィリピン海軍の警戒監視能力向上のため、海上自衛隊のTC90練習機5機を比海軍に有償貸与することを約束、そして比海軍パイロットの教育・訓練でも協力することも約束しました。
さらに、大型巡視船2隻とテロ対策のための小型高速艇の供与でも合意しました。

また、安倍首相はドゥテルテ政権の麻薬撲滅対策を支援するため、麻薬中毒者の更生支援策などを年内に具体化したい考えも伝えたようです。

このドゥテルテ大統領が安倍首相と会談している時と合わせて、ワシントンではケリー国務長官がベトナム共産党のディン・テー・フイン党中央宣伝教育委員長と会談しています。
そこで「南シナ海の平和利用と法の支配の尊重をベトナムと共有している」と述べております。
この会談は、ドゥテルテ大統領の中共接近を牽制する目的で行われたようですが、安倍・ドゥテルテ会談では、ドゥテルテ大統領も「法に依る解決」を述べておりますから、はからずも中共包囲網となる会談になったったようですね。

来日直後に行われた在日フィリッピン人との集会で、ドゥテルテ大統領はアメリカや欧州連合(EU)を指して、「この馬鹿どもは何も分かっていない」と暴言を吐いていましたが、その意味はこの安倍首相との会談などを見れば一目瞭然です。

つまり中共では「南シナ海の問題などは話すな」という習政権の言う事を聞いて、アメリカを追い出すとか中共とフィリピンは同じ立場にあるなどと述べていましたが、自分の心の反米では同じ立場だという意味だったのではないでしょうか。
南シナ海のことは一切話しておりませんでしたから、日本に来てから自由に発言できたわけです。

ドゥテルテ大統領は、習政権が約240億ドルを支援するということなど反故にされてもかまわない気持ちなのかも知れませんね。
ドゥテルテ大統領が帰国した後の中共で、支援反対の声(また税金を払うのか!)が上がっていることも知っているのではないでしょうか。

こうして見て来ると、ドゥテルテ大統領はなかなかの策士ですね。各国とも手を焼いている麻薬問題に、人権無視で現場での射殺を行い、ビックリした中毒患者が大量に自首するなど、効果を上げました。
フィリピンの国民の大半がアメリカ嫌いであることを、中共への接近と言う形で警告し、それを中和させるためにその直後に日本に来て「法の遵守」を掲げて南シナ海問題には日本の側に立つことを宣言しました。

フィリピンの国民がなぜ反米なのか、それは世界の近現代史を見れば解るはずです。フィリピンに在中している米軍も、アメリカの都合だけであって南シナ海問題では、まだ何の役にも立っていません。
そういうアメリカの尻を叩くのもフィリピン大統領の勤めなのであります。

経済的に弱いフィリピンです。いくら中共に「裁定の遵守」を叫んでも中共が相手にしないことは判っています。どのようにフィリピンの自主性を重んじながら持っていくか・・・
それをドゥテルテ大統領はずっと述べてきたわけです。その最初の狼煙が「人権」というもっともらしい大義への挑戦としての麻薬犯罪者の無条件射殺だったのでしょう。

経済的弱小国、しかし主権国家のフィリピンです。アメリカに頼らず、中共の軍事介入を遮断し、そして経済支援を日本に求める・・・したたかな外交が展開されています。
そして何よりもドゥテルテ大統領は愛国者なのです。

だからフィリピン国民の熱狂的な支持があるのでしょうね。
だから私も、「頑張れドゥテルテ大統領」と言いたいのですよ・・・

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