2016年5月28日土曜日

安倍首相、サミットをリード

「今回は8年ぶりにアジアで開催されるサミットであり、海洋安全保障や北朝鮮問題といったアジアの課題について、時間の許す限り議論をしたい」・・安倍首相が議長としての最初の発言をしました。

その上で、「自由」「法の支配」などG7が共有する価値観を無視し、短期間で南シナ海の軍事拠点化を進めている中共の実態を示す物的証拠を示しながら、東アジア情勢や海洋安全保障をめぐる議論を進めました。

「欧州各国は日本との2国間会談では厳しい対中認識を共有するが、複数の国が同席する場ではとたんに消極的になる。彼らは覇権主義的な中共の手法を問題視しながらも、中共を刺激して経済的利益を損ねないよう及び腰になるからだ」とは、ある日本政府関係者の語る言葉です。

中共はG7各国の間の微妙な立ち位置の相違を把握していて、経済的影響力をちらつかせて欧州を牽制します。対中共では、欧州は地理的に軍事的脅威は直接受けておりません。しかし経済的には影響は大きく、そこが中共のつけ入る隙になっております。

しかし今回のサミットでは、「力による現状変更や規範の無視は許されない」とか「G7は共通の価値観を有する国際ルールの擁護者だ」、「海洋の安全保障や力による現状変更への反対には、明白で厳しい姿勢で臨むべきだ」などという安倍首相に同調する声が上がり、G7の共同声明文に期待が持てました。
もちろんこの中には、中共だけでなくロシア・クリミヤ半島の問題も含まれてはいるようですけど。
そして中共の経済に陰りが出てきていて、その先行きが不透明になっていることもあるのでしょう。

こうしてサミット終了後、議長としての安倍首相の、その結果報告(記者会見)には、「いかなる紛争も武力の行使や威嚇ではなく、国際法に基づいて平和的に外交的に解決すべきである。この原則を私たちG7はしっかりと共有している。世界のどこであろうとも海洋の自由は保障されなければならない。一方的な行動は許されず、司法手続きを含む平和的な手段を追及すべきである。そしてその完全な履行を求めていくことで私たちは一致した。」と、中共という言葉は使わずに、中共を牽制する文言が入ったわけです。

さらに安倍首相はこの記者会見で、ウクライナ問題を取り上げ、「ウクライナにおける紛争もまた、国際法に基づく平和的外交的手段によってのみ解決されると確信している。」とした上で、「ロシアには国際社会のあらゆる課題に対し、建設的な役割を果たしてもらいたい。シリア情勢における平和と安定を達成するためにも、プーチン大統領との対話を維持していくことが重要であると考える。」と述べ、今後安倍首相がロシア・プーチン大統領との会談を行うことに、G7の合意があることを印象付けました。

これは欧米を安倍戦略に取り込んだ中共包囲網の完成を見せつけるものであり、さらに今後中共の背後にあるロシアを安倍戦略に取り込むという、いわば中共に対する宣戦布告のようなものだと見えませんか?

そしてこの後、安倍首相はオバマ大統領と連れ合って、広島・平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花をしたのです。
オバマ大統領は世界に向けて「「核兵器なき世界」へ強い決意を表明しましたが、これも明らかに戦後のこれまでの歴史認識を覆し、今後、新たに発表されるアメリカ公文書館の極秘文書から展開される真実のための下準備とも言える行動でした。

この安倍戦略の徹底した中共包囲網に対し、中共も黙っては居りません。しかし彼らはG7で南シナ海問題が取り上げられることだけを牽制したかったようです。
「日本とG7のやり方に強烈な不満を表明する」との華春瑩副報道局長の記者会見では、日本に対し「サミットを主催し、南シナ海問題をあおり立て、緊張を高めた」と述べ、「南シナ海問題の議題化は先進国が経済について話し合う場というサミットの性格にそぐわない」などと小さくまとめております。
どうも安倍戦略が読めていなかったようですね。

さらに華春瑩副報道局長は、「客観的で公正な立場に基づき、無責任な言論をやめ、地域の平和と安定に資するよう望む」などと述べて、「南シナ海での軍事施設建設などは、完全に主権の範囲内だ。個別の国が『航行の自由』を掲げて中国の顔に泥を塗るのには断固として反対する」と、アメリカ批判のようなことも述べております。
王毅外相は、加害者であるべき日本が、広島で被害者にされてしまうことに対抗して、「南京も忘れてはならない」などと述べましたが、その南京も嘘であることは、もはや周知の事実になりつつあるわけですね。

このG7に合わせるかのように、米中戦争は次のステージへと移行します。5月25日、米商務省は供給過剰に陥っている鉄鋼の輸入を抑制する一環で、中共、台湾、韓国、インド、イタリアの5カ国から輸入する耐食平鋼に課す反ダンピング関税の最終税率を発表しました。

その中で、中共に課す反ダンピング関税の最終税率は210%となるそうで、中共で製造されたすべての耐食平鋼が対象になると言ううのです。
この前の週には、中共から輸入する冷延鋼板に500%を超える反ダンピング関税を最終決定したばかりでした。

ちなみに今回の最終決定で、インドの鉄鋼メーカーに課す反ダンピング関税は3~4.4%、イタリアは92.1%、などだそうですから、中共を意図したことは間違いないでしょう。
中共の商務省は、「中共政府は公正な待遇を受けるため、企業の権利を保護するために必要なあらゆる措置を講じる」などと発表しましたが、さて中共は、あとはどのようなカードをもっているのでしょうか?

伊勢志摩サミットで欧州を中共から切り離し、日米同盟を活性化させた安倍戦略は、今後は台湾、インド、そしてロシアをも取り込み、中共を追い詰めていく様相です。

国内に、多くの「反安倍グループ」を抱えながらも、安倍首相たった一人の「対中戦争」は、まだまだ続きます。

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