2017年8月11日金曜日

グアムへ攻撃か、北朝鮮ミサイル

2017年8月9日、北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍司令官は米領グアム周辺への中距離弾道ミサイル「火星12」の「包囲射撃」計画として4発を同時にグアム沖30~40キロの海上に撃ち込む計画案を検討していると発表しました。
そしてこの計画を「8月中旬までに最終完成させる」と表明したそうです。

この中で金洛兼(キムラクキョム)司令官は、「火星12は、島根県、広島県、高知県の上空を通過することになり、射程3356・7キロを1065秒間飛行した後、グアム島周辺30~40キロの海上水域に着弾することになろう」と説明し、そして「金正恩朝鮮労働党委員長に報告し発射待機態勢で命令を待つ」と述べたそうです。
北朝鮮のミサイルの飛行システムには中共のGPSが使われているはず。つまり中共がOKしなければミサイルの制御は出来ないことはご承知の通りなのですけどね。

この発射の目的は、「グアム島の主要軍事基地を制圧、牽制し、米国に厳重な警告信号を送るため」と述べておりますから、米軍の軍事的圧力に対抗するためということでしょうか。
もちろんこのような威嚇射撃がアメリカを怒らせるだけで圧力回避にはならないことを承知の上でしょう。

国連安保理では、ロシアと中共がアメリカに対し北朝鮮の制裁攻撃を認めておらず、中東のアフガン攻撃やイラク攻撃の時の様には行きません。
イラつくアメリカ・トランプ政権をさらにイラつかせ愚弄するのが北朝鮮・金正恩委員長の意図するところかも知れません。(いや、中共の意図かな?)
問題はグアム島の周辺のどこら辺がグレイゾーンとなるのか、その見極めが必要でしょう。近すぎれば米軍に対して先制攻撃を掛けたとして、アメリカに報復攻撃の口実を与えてしまいます。かつての日本軍が行なった真珠湾攻撃のように利用されないことが必要なのでしょう。

そしてもう一つの目的は、ミサイル迎撃システムが何の役にも立たないことを世界中に見せつけたいのかも知れません。
わざわざ「島根県、広島県、高知県の上空を通過する」ことを明らかにしていますから、そこで撃ち落とせなければ、日米同盟にも亀裂が入ることも意図しているように思います。

しかし、もし迎撃ミサイルの4発の内の何発かに命中させれば、あとは精度向上が課題となって、ミサイル時代を終焉させるかも知れません。
このことは核の時代の終焉をも意味しますから、「核なき世界」を標榜する平和主義者にとっても朗報のはずなのですが、もちろん彼らはそんなことは言わないでしょう。

発射後、1065秒の飛行です。つまり17分ほど。迎撃側は発射の瞬間を察知できるかどうかが決め手ですね。これまでのように着弾してから「発射されたもよう」などというような技術ではミサイル防衛は不可能です。

湾岸戦争の時、フセイン大統領が「敵はミサイルをミサイルで撃ち落としている」と叫んでいました。当時はスカッドミサイルで、しかも何日もの間絶え間なく撃ち続けていましたから、最初の頃は米軍基地が直撃を受けていましたが、すぐにパトリオットによって飛行中の迎撃が出来たわけです。
しかし今度は至近距離であり、しかも4発だけという限定攻撃ですし、北朝鮮のどこから発射されるのかもわかりません。米軍がどこまで北朝鮮内部をステルス偵察機を使って掴んでいるか、そこも明らかになるわけです。

北朝鮮(もしかしたら中共)の対米戦術は冷静であり、しかも目的が明確です。これに対するアメリカ・トランプ大統領の発言は「北朝鮮は炎と怒りに見舞われる」などといった情緒的(文学的)な言葉で軍事行動に踏み切るような恫喝をしておりますが、このような感性では戦争は出来ません。

マティス米国防長官は、「アメリカと同盟諸国は、地球上で最も適切かつ準備万端で強固な防衛能力と攻撃能力を備えている」と強調し、その上で「米国務省が外交的解決を目指し全力を尽くしている」と述べました。大統領よりはまだ冷静なようです。

おそらく北朝鮮はアメリカとの2国間直接交渉を望んでいるのでしょう。金一族の体制への保障や核保有国と認めさせること、そして朝鮮戦争を終結することなどを「サシ」で話したいのだと思います。
どのようにして、この直接交渉を可能にするか、そこがティラーソン国務長官の手腕に掛かっているわけです。8月中旬と言うのは、もしかしたらティラーソン国務長官の調整が進んでいるのかも知れませんね。

そこで交渉をより有利に進めるために、グアム島周辺へのミサイル攻撃で恫喝しているとも考えられます。
そしてなにより習政権のアメリカ側なのか反米なのかあやふやな態度も、北朝鮮に対米直接交渉を画策する理由だと思います。
そして中共の経済が、もはや断末魔になってきていることも背景にあるようにも思います。

アメリカ軍はグアムに6機のB1戦略爆撃機を配備して、長距離空対地ミサイル(JASSM-ER)など精密爆撃を実行する準備を整えたそうです。こちらもあとはトランプ大統領の命令待ち。
瀬戸際の交渉はなされるのでしょうか?

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