2015年3月11日水曜日

「ドームの下で(Under the Dome)」

やっと中共でも大気汚染と水質汚染を告発する報道が出てきました。作ったのは柴静(チャイ・ジン)という女性で、昨年1月までは国営中国中央テレビ(CCTV)の著名女性キャスターだった人。美人でスレンダーな身体から発する説得力のある話し方で、中共の若者を感動させています。

媒体はインターネット上のYouTube。 2月28日に投稿されてから、1日で1億5000万回を超すアクセスがあったと言いますから、その広がりも極めて大きいようです。
当然、報道統制下にある中共ではきわどい内容となります。「どんな報道よりも胸に迫る」と称賛の声が相次いだ訳ですが、故に反響の大きさを問題視した共産党と政府はドキュメンタリーの規制を決定したわけで、関連報道を禁じる内部通知を出し、動画を次々と削除しているそうです。

もちろん、消去される前にコピーによって拡散していますから、我々日本からでも見ることは可能です。
https://www.youtube.com/watch?v=T6X2uwlQGQM
この動画は、中国語で行われています(当然ですね)。漢字の字幕が付いておりますので、よく意味は判りませんが字幕から日本語の意味を感じながら見ることで想像は出来ます。全体で1時間43分の大作です。
まあ、いつ削除されてしまうか判りませんので、ご覧になりたい方はお早目に・・・

柴静氏が約100万元(約2千万円)を自己負担して制作し、しかも自らが演壇に立って多くの若者に話しかけたり、政府や企業の関係者にインタビューをするなど、八面六臂の活躍をしています。
アメリカを始めとした公害問題への取り組みや、水俣病のフィルム、石原慎太郎都知事の排ガス規制への取組のニュースなども使用して、説得力のあるドキュメンタリーとなっております。

柴さんがこのドキュメンタリー「ドームの下で」を作るきっかけとなったのは、自分のおなかの子に良性腫瘍が見つかったことからだそうです。
出産直後にその子供を手術したそうですが、とても危険な手術だったとか。そこで「汚染の取材を始めた」と述べております。手術は成功したそうですが・・・
(ドームとは汚染された大気のことです)

有害物質を含んだ濃霧のリスク、その発生源と行政の取り組みなどを、綿密なデータを示しながら、今、国民一人一人が行動を起こさないと解決はしないことを訴えます。
この動画をご覧になれば判りますが、柴氏の講演を聞いている若い人たちの真剣な表情が印象的でした。
YouTubeを見た人達からの書き込みも1日5万件以上あると言いますから、動画をネットで見た人達も真剣だったのではないでしょうか。

共産党宣伝部が関連報道を禁じる通知を出した理由は、どうやらガソリンなどの品質基準を主導する国有石油企業を批判する内容があったからのようです。

李克強首相は5日、全国人民代表大会の中で環境汚染に強い姿勢で取り組む姿勢を表明しました。しかし中共では環境問題に関しては、法の制定と実行は全く別物だということです。
ルールが出来ても(特に地方では)ほとんど守られず、当局も見て見ぬ振りをするそうです。
厳しい環境規制で企業が倒産して失業者が激増することを恐れているとか。失業者の増加は、共産主義体制を揺るがしかねないと思っているからのようです。

「公害問題はどの国でも同じようなものだなぁ」とも感じます。日本でも九州のチッソ水俣での水銀中毒問題が長い戦いとなりました。産業優位であり、経済発展の足を引っ張るものだとの観念があったからです。しかし、環境対策の必要性を訴える議員が選挙で当選するなど、激しい民主主義の戦いの末に裁判は勝訴し、賠償責任が認められてきました。大気汚染も、自動車の廃ガス規制などでは「厳しすぎる」などとアメリカ側から指摘されたこともありました。

それでも日本国民は譲らなかったのです。民主主義のもと、公害対策技術はビジネスとしても成功するようになり、日本の経済成長にも貢献してきました。

公害対策は、利潤追求にとってはマイナスの要因です。経済発展を優先するのか、それとも公害対策を優先するのか、この排反問題を「公害対策優先」としない限り対策は打てません。
どうやら今、中共で行われている全国人民代表大会では、経済優先での体制の安定を選んでしまったようですね。

しかし、いくら経済優先を行い今以上の発展を望もうとも、もう昔のような発展は出来ないのではないでしょうか。輸出依存度の大きい中共経済ですが、その輸出先の国々がデフレで低迷する時代に入ってしまうからです。

ですから、公害対策を優先して経済を発展させるような仕組みづくりの方が、外需に頼らない需要喚起が出来たはずです。
そうすれば中共はさらなる発展の可能性があったと思いますが、一党独裁の政治では無理なんでしょうか・・・

このドキュメンタリーは世界中で見られていると思います。公害対策が共産党に出来ないようであれば、民主化の道しかないことは世界中が知っていることですよ。

2 件のコメント:

  1. 昨夜のNHK9時のニュースでは、中国の政府関連富裕層の子供達がアメリカで、贅沢三昧の生活をしていて、中国本土からも非難されているとか。本人たちは、アメリカ永住権を獲得しようとしてます。環境問題も大きいですが、格差も問題ですね。

    以下、NHKサイトから引用
    中国人が米国の永住権 若者たちが求めるのは…
    いまアメリカで、永住権を取得する中国人が増加しています。その数、年間およそ8万人あまり。この10年間で倍増しました。中でも増えているのが、富裕層の若者たちです。アメリカに留学した後、現地にとどまるケースが増えているのです。そして、アメリカでの派手な生活ぶりも、ますます目立つようになっています。彼らは、祖国中国から、冷たい視線を向けられながらも、アメリカにこだわっています。

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  2. mcscorpさん、いつも読んでいただいてありがとうございます。

    華人はモラルも尊法精神もないようで、アメリカの法律が「アメリカで生まれた子供にはアメリカ国民になる資格がある」としているのを悪用、お産ツアーなるものを組み妊婦が大挙押し寄せ、アメリカで子供を産んだりしています。

    法律を教条主義的に捉え、その善なる意味を無視する野蛮な行いです。同じ人間として悲しくなりませんか?

    遠からずアメリカと中共はぶつかるでしょう。軍事的衝突となるやもしれません。
    日本国民は心の準備をしておきましょうね。



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