2018年3月4日日曜日

MDは無意味・プーチン大統領

「矛盾」という言葉を思い起こさせます。日米が開発を進めるミサイル・ディフェンス(MD)システムに対抗すべく、ロシアのプーチン大統領は原子力推進エンジンを搭載したどこまでも飛べる高速巡航ミサイルと、マッハ10の高速小型ミサイル、そしてマッハ20のICBMを開発し、現在量産体制に入っていると言うものです。
これを上下両院と地方指導者らに対する年次教書演説でぶち上げました。

MDが楯であるなら新型ミサイルは矛です。
どんな楯でも貫く矛と、どんな矛でも貫けない楯を売っていた商人の話で、「ではその矛でその楯を突いたらどうなるんだ?」という疑問が出るという話ですね。
この話には続きがあるらしく、商人の答えは「槍と盾が勝手に戦うわけじゃないんだ。どっちが勝つかなんて、持った奴の腕次第で決まるもんだろ。」と言うものでした。

プーチン大統領は以前からMDによる防衛網の研究を止めるようにアメリカに進言しておりました。なぜなら冷戦時代の復活を望んでいたからです。
「核による恐怖の均衡が平和を維持した」という神話の復活に期待していたようです。しかしこの核の均衡論が嘘にまみれたものであることが少しづつバレてきたわけです。
アメリカにとって「時代の進展」を無視するわけには行かず、MD構想をぶち上げたのですが、それにプーチン大統領が大反対だったことは衆知の事実です。

MD構想はレーガン大統領の時代に始まったもので、俗にスターウォーズ計画というSFドラマのような名前が付いていました。(さすが元ハリウッドスターの大統領ですね)
これに驚いたのが当時のソビエトでした。ブレジネフ書記長は、これに対抗手段を打てず翌年末に辞任、その後ゴルバチョフ大統領に代わってから自由化の風が吹き始め、東ドイツが解体、ベルリンの壁が崩壊し、エリツィン大統領の時代でソビエト連邦も崩壊しました。

その後を継いだプーチン大統領です。MD構想は忌むべきものであって、このアメリカの構想を何とか潰したいのでしょう。
しかもMD構想はまだ実現にはほど遠いものです。しかしミサイル迎撃はすでに湾岸戦争やイラク戦争で実用化されています。相手はスカッドミサイルですからノドンやテポドンは迎撃出来ないかも知れませんが、その対抗処置として作られたのがPAC3などの迎撃ミサイルですが、まだ実戦経験はないと思います。

そこで日米の技術者が更なるMD計画を進化させようとしているわけです。ミサイルのスピードが速くなっていますし、北朝鮮のような直ぐ近くからのミサイルですと、発射直後にそれを感知するための衛星システムと、無人偵察機の組み合わせ、そしてイージスシステムとかXバンドレーダーの導入などによる早期検知が必要になります。

現在は北朝鮮がターゲットとして使われていますが、北朝鮮危機が解決すればその後は中共に対する監視活動が始まるものと思われます。
習政権は今後の軍事開発目標としてAIを活用した無人の戦車や航空偵察機、そして小型ミサイルなどを発表しましたが、どうもこれは自国民向けの兵器ともするのではないかと思えます。

ロシア・プーチン政権にとっては、何か対抗策を打たないと大統領選挙で負けてしまいますから、原子力推進エンジンを搭載の銃口ミサイルとか、マッハ10のスピードを持つ小型ミサイル、そしてマッハ20のICBM・RS28「サルマト」の大量生産をぶち上げたのでしょう。

確かにソビエト時代に、小型化した原子炉「ブーク」や「トパース」を衛星に積んで打ち上げたこともあり、宇宙空間での原子力利用技術はトップクラスのものでした。
トパースの技術は、ソビエト解体後にアメリカが購入したほどですから、その後ロシアがそれをさらに発展させていることもあるかも知れません。

しかしそれが巡航ミサイルに使うまでになっているのでしょうか。宇宙空間なら移動のエンジンとして電子利用も可能でしょうが、地上を低く飛ぶ巡行ミサイルのエンジンとしては不可能なような気がします。
高温となる炉の部分に液体水素などの推進剤を吹き付けて、超高温・高圧のガスにし、それを噴射するという方法もあるようで、アメリカでも1990年代には、NASAで原子炉を電気推進エンジンの電力源として使う構想があったようですが、実現には至っていないということです。これでは推進剤が無くなれば落ちてしまいますからね。

また、小型ミサイルの航空機搭載型でマッハ3の速度を研究している我が国ですが、ロシアがマッハ10のミサイルを量産化すると言うのはちょっと眉唾ですね。時速に直すと約13000キロのスピードになります。

対抗する日米の技術は、迎撃ミサイルではなくて電磁波によるミサイル制御回路破壊を目指します。
電子レンジの中に小さな電子機器を入れてレンジを回すとすぐに破壊されます。その原理を飛翔体に使おうとするものです。フェーズドアレイレーダーの指向性をあげて出力を上げるということですが、瞬間の電力量が膨大になりますので、やはり特殊な原子力発電装備が必要になるかも知れませんね。(高温ガス炉のさらなる小型化が必要です)
これからの核技術の軍事転用は、どうも爆弾ではなく電力関係になって行くようですね。
プーチン大統領の発言は次世代のMDシステムに必要な設計情報を提供した事になると思います。トランプ大統領は大統領報道官を通して「アメリカは本土を守り、力を通じて平和を維持する」と述べたそうです。

SFドラマから現実の軍事技術へ、矛と楯の競争は留まるところを知りません。それが安全保障の技術と言うものです・・・

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