2016年6月3日金曜日

ケイコ・フジモリは大統領になれるか

2016年4月に行われ、ケイコ・フジモリ氏が得票数第一位となったペルーの大統領選挙ですが、過半数に届かなかったために、2016年6月5日に再度二位だったクチンスキ氏との決選投票をおこなわなければなりません。

そして今、来週の日曜日に迫ったことで、反フジモリの声が大きくなってきております。ケイコ・フジモリ氏は、アルベルト・フジモリ氏の娘であり、アルベルト・フジモリ氏は元大統領であり、その任期中に行われたとされる汚職事件や人権侵害事件などで有罪となり、現在収監中なのです。

アルベルト・フジモリ氏は1992年12月に発生したペルー日本人人質事件で、強硬手段を使った救出劇を演じ、日本人を救った我々にとっては英雄でもあります。
しかし、彼のやり方を「独裁政権だった」という噂が流れて、それを彷彿させるような、反ケイコ・キャンペーンが盛り上がっているわけです。

まだわずかにケイコ氏の方が優勢と言うことですが、あと3日ほどで、どうなるかは判りません。
アルベルト・フジモリ元大統領を人権侵害事件などで批判し、ケイコ氏の当選阻止を目指すデモが首都リマなどで行われる予定があるそうです。
5月29日の調査では、ケイコ氏が54・8%の支持を得たのに対し、クチンスキ氏が45・2%ほどであったそうですけど・・・

アメリカの大統領候補ドナルド・トランプ氏が「メキシコと合衆国の間に高い塀をメキシコの費用負担で作らせる」などと言ったのは、不法労働者の入国だけではなく、麻薬の密輸阻止が目的だったと考えられます。
ことほど、南米のメキシコ、コロンビア、ペルー、ボリビア、パナマなどは麻薬の生産地で、特にペルーからはコカインが大量に輸出されているそうです。

この麻薬撲滅を目指すペルー政府の撲滅キャンペーンと、ドラッグ・ディーラーたちが遠隔操作するコカとコカインの生産地の麻薬小作人との戦いが続くペルー中部のワジャガ・バレーなどが、強硬手段を使いそうなケイコ・フジモリ氏を牽制しているのかも知れませんね。

もともとペルーでは、その昔からインデォ達の間でコカの葉は疲労回復剤として使われていた歴史があり、それが違法な麻薬であると言う認識は薄いはずです。
そしてそのコカの栽培の方が、穀物の生産などよりも収入がはるかに高いとなれば、その生産をやめることはないでしょう。

麻薬小作人が頼るのはコカインの仲買人で、その仲買人と繋がっているのがドラッグ・-ディーラーたちなのでしょう。こうして出来上がる麻薬組織は、麻薬撲滅を図る政府の取り締まりに対して、軍隊のような武器で対応しておりますが、その豊富な資金に物を言わせて各政治家への賄賂攻勢も半端ではないはずです。

当然選挙ともなれば、このような麻薬資金も動くでしょうし、麻薬小作人の票も一票であることに変わりはありません。
アルベルト・フジモリ元大統領の人権侵害が問題になっているようですが、麻薬組織の殺人事件などは人権とは関係ないのでしょうか。
元大統領がこのような組織に対して人権無視の殺戮を行ったとして、殺された者が麻薬組織につながっている麻薬小作人だった場合、そしてその小作人がやっとコカの栽培で生計を立てていたとしたら・・・人権問題になるのでしょうか?

アルベルト・フジモリ元大統領に持たれている不信はこの点にあるように思います。
あの日本大使館人質事件での強行突入は、日本人人質の命を犠牲にしても、フジモリ大統領の力を見せつけるための強行手段だったという人も居ります。
そして人質の命を救ったのは、テロリスト達の中にいた一人の14~5歳の少年であって、その少年は突入した警官によって射殺されたそうです。

殺されたテロリストの首に付けられた傷などには、インデォの昔からのメッセージ的要素が刻まれ、それには「俺に逆らうとこうなる」というような意味があったとか。

また、日本の歌手「中島みゆき」さんの作詞した「423」という歌は、何ともやりきれないあの人質事件の、日本のテレビに映し出された光景をうたっておりました。
http://gakufu.gakki.me/m/data/DT00095.html

このような強烈な手段をもいとわない父親の元で育った娘が、父親と同じ行動を取るかどうかは判りません。ですから娘の選挙に父親のイメージをかぶせるというペルーの国民が正しいかどうかは判りません。
また、ペルーのような麻薬シンジケートとの戦いと日常生活が混ざってしまった国民を、その地獄から救い出すには、ある意味では強烈な手段が必要なのかも知れません。

日本国民としては日系のケイコ・フジモリ氏に大統領になって欲しいものですが、例えODAなどの経済援助を日本が実施するにしても、このような国家に対してどのように貢献していくべきか、かなり難しい問題ですね。

ともかく6月5日の選挙結果を静かに見守りましょう。

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