2014年2月13日木曜日

小説「永遠のゼロ」を読んで

百田尚樹氏の「永遠のゼロ」を読みました。戦争賛美の小説という論評に対して百田氏が「ろくに読みもしないで論評するとは・・」と述べていたことから、読んで見ようと思ったわけです。

間違いなくこの小説は戦争賛美などはしておりませんでした。また、特攻隊についても否定的なスタンスを取って書かれておりました。
読み応えのある小説で、空中戦の現実が生々しく語られ、実戦の経験があるとないとは、戦闘に於いて雲泥の差があることが描かれます。

小説は、姉弟の2人がお祖母さんの死をきっかけに、お祖父さんから「私は本当の祖父ではない。お前たちの本当の祖父は、特攻で戦死した」と聞かされ、ことの真相を調べるという設定になっています。主人公は、この本当の祖父である「宮部久蔵」という天才戦闘機パイロットであり、彼を知る多くの元兵士達の話として構成されておりました。

特攻での最期ですから、小説ではその最期の攻撃の場面を描くためにプロローグとエピローグに分けて、そこでアメリカ軍の空母「タイコンデロガ」の搭乗員の眼を通して、この天才パイロットの特攻の場面が描かれます。
この「タイコンデロガ」は実在のアメリカ海軍の空母で、1943年にバージニア州ニューポート・ニューズ造船所で起工され、1944年に進水、第二次世界大戦参戦と、戦艦ミズリーとともに東京湾での日本の降伏文書調印式に立ち会い、ベトナム戦争、アポロ計画での回収母艦として活躍しましたので、小説といえども爆沈はさせられません。

タイコンデロガは、終戦直前に一機のゼロ戦の特攻に合っています。この時突っ込んだ特攻隊員の亡骸を痛めつける海兵隊達を、その艦長が怒鳴りつけ「丁重に扱え」と指示、翌朝、敬意をもって丁重に水葬にされた・・という話が残っております。
ですから降伏文書調印式の時、このタイコンデロガの甲板には、その特攻で出来た大きな穴があったとか。
小説では、艦搭載レーダーをかいくぐり、海面すれすれを250キロ爆弾を抱えて超人的な操縦技術で突っ込み、近接信管付の砲弾も海面の反射ですぐに爆発して命中せず、敵新兵器を知り尽くしての特攻を行います。艦に十分近づいたところで、一気に上昇、一斉砲火を浴びて翼がもぎ取れても、艦の真上になり、そこから真下に突っ込んで・・しかし爆弾が不発(不良品)だったため、タイコンデロガは甲板に大きな穴が付いただけで轟沈はしなかったというわけです。
この特攻隊員が「宮部久蔵」だったということで、小説を締めくくっております。

さて、この小説で百田氏が最も言いたかったことは、第7章「狂気」の中ほどにある姉弟の会話ではないでしょうか。
「かつての軍隊は今の官僚組織に通じるものがある」という姉の言葉に、「ミッドウェーで大きな判断ミスをやり空母4隻を失った南雲長官、マリアナ沖海戦で作戦書類をゲリラに盗まれた福留参謀長、ノモンハン事件での失敗に続いてガダルカナルで馬鹿げた作戦を繰り返した辻政信参謀、インパール作戦の牟田口中将、みんな責任なんか取らされていない」と答える弟・・。
皆さん「帝国陸・海軍大学」を優秀な成績で卒業された方々で、つまり責任を取らせることが出来ない。そして仕方なく、それを命を持って支えたのが多くの名もなき兵士達だったという暴露をしているわけです。

この小説では「福留中将は敵の捕虜になって作戦書類を盗まれた。兵士には『生きて虜囚の辱めを受けることなかれ』なんて言っておいて・・・」と批判しております。
私の知人の元軍曹も、「『生きて虜囚の辱めを受けることなかれ』はひどい教育だったなあ」と怒っておられました。ジュネーブ協定は教えなかったのですね。
百田氏はそれ以外にも、帝国海軍のエリート達の意気地なさ、我が身大事で逃げている作戦など、辛辣な表現で暴露しております。

小説では一貫して「特攻は外道。やるべきではない」という信念を通しています。ただし妄想平和主義にはなっていないだけです。

戦後、生き残った元兵士達は、軍部の無謀な作戦・指揮(勝てたはずの戦いに負けていること)を批判したはずです。しかし、東京裁判による「日本軍国主義が悪かった」という「手打ち」に掻き消され、やがて軍隊への嫌悪感情に置き換えられ、サヨクに捏ねられて真意を伝えることが出来ず、多くの元兵士達は口を閉ざしてしまったようです。
彼らの多くは、その弔い合戦を経済活動によって報いようとしたようで、それが戦後の驚異的な経済発展につながったのではないでしょうか?

この小説はそこまで書いてはおりませんが、今の政治の現状、財界の体たらくなど、その真意を忘れて「銭の亡者」に成り下がってしまった日本への警鐘として、有意義な本であると思います。
「日本を取り戻す」には避けて通れないものを、百田氏は明確に示してくれたように感じました。
「映画」は見ようとは思いません。・・・(つづく)

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