2018年8月8日水曜日

ILC建設、日本が誘致すべき!

ILCとは、インターナショナルリニアコライダーの略で、コライダーとは荷電微粒子衝突のことです。
これまでは大きな半径を持つ加速器で、このコライダー実験をやっておりました。有名なのがスイスにあるCERN(セルン)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で、全周で27kmもある大きさのものです。(山手線一周は34.5km)

この実験の主な目的はヒッグス粒子を確認することにあります。アインシュタイン博士から始まった統一場理論。その研究は進展し続け、ヒッグス粒子理論まで到達しました。ヒッグス粒子が何者かは、このサイトで判りやすく説明しています。
https://gigazine.net/news/20131009-what-is-the-higgs/

このセルンの実験で高エネルギー物理現象から生じる粒子を観測してきたわけです。そしてヒッグス粒子の確認はなされたようですが、何億回という衝突実験でわずかに確認されただけで、更なる大型加速器・アトラスも作られているようです。

しかしどんなに大きくしてもサークルですから曲線です。ですから研究者にとってどうしても不安定な部分が出てしまうわけです。

そしてそれを解決しうる手段として、直線で微粒子をぶつける「リニアコライダーが必要だ!」という結論になったわけです。

超電導コイルを使って加速する衝突実験。世界はリニア新幹線の技術に使われる超電導技術に注目したようです。そしてリニアコライダーの建設を日本で出来ないか、その誘致を日本に求めてきたのです。何しろ超電導コイルが量産されそうなのですからね。

大型で、しかも高精度の物理実験装置ですから地震大国である日本では無理だと断っていたようですが、地震は世界のどこでも起こる現象であり、日本の岩手・宮城両県にまたがる北上山地なら建設可能であるとの結論が出されました。

この建設に掛かる費用は現在の計算では8千億円。巨大プロジェクトとしては大した金額ではありませんが、どうも財務省の方々には理解が出来なかったようです。
「国家が破産しそうなのに、そんなものを作る金はない」というような意識で大反対だったようです。汚職の温床「文科省」も、財務省に圧されて消極的。何しろ国家予算と家計簿の区別もつかない連中ですから、判断の基準が国際社会の常識とは違うようです。

建設費の8千億円は日米欧で分担する約束ですから国際リニアコライダー(ILC)なのです。それでもこの建設費には「国民の理解が重要」などと言っているようです。
今月から日本学術会議が建設の是非を審議し、これらの結果を踏まえ、日本政府が年内にも建設の是非を最終的に決定する見通しだそうです。

どうしても日本に誘致をして欲しい国際物理学会です。多くの研究者が来日しています。ノーベル物理学賞のシェルドン・グラショー名誉教授(ハーバード大學)、バリー・バリッシュ名誉教授(カリフォルニア工科大學)が8月7日に記者会見し、「日本政府は勇気と英知をもって建設を実現させてほしい」と訴えておりました。

磁場にはN極とS極があります。電場には陽極と陰極があります。しかしマイナスの電子だけの存在もあります。そして電気と磁気は互いに関係があり、電磁石や発電機そして電磁波として、人間の制御がある程度可能になりました。しかし現在は重力だけが制御不能なのです。

アインシュタインの予言は、電子工学や核分裂反応で実証されてきました。理論物理学から実証物理学へと進展し、それの技術応用が出来て、われわれ人類に多大な利便性を提供してきました。
それでもまだ物理学の研究は続けられ、進展しています。

重力の謎に迫る研究で英国のピーター・ヒッグス博士が2013年に予言したヒッグス粒子。その発見のため莫大な費用が投じられています。
未知を既知に変える物理学。そのためにはいくら費用が掛かっても、「お金で解決出来るならやるべきだ」という学会の発想は、生産と消費しか考えないミクロ経済学にはなかなか受け入れられないようですね。

考えてみれば核分裂の実験も、それによって爆弾が作れるということで莫大な費用が投じられたわけです。戦争は「もし敵が先にそれを造ったら・・」という恐怖感から莫大な投資が可能になるわけです。しかし実証実験が成功すれば、我々の役に立つ技術への転換を考え始め、そして人類社会が進展するわけです。原爆が役に立ったかどうかはいろいろな考え方があるでしょうけど・・

では、人類は戦争を経由しないと進歩が出来ないのか・・いやそんなことは無い。物理学会は今、日本にそれを求めてきております。
莫大な投資。それは物理学の実証科学投資でもあります。もちろん兵器に使える何かが出て来るかも知れません。しかしそれ以上に未来の人類にとって役立つ何かが生まれる可能性の方が高いはずです。それを信じて投資を行う事が必要なのです。
だからこそ、高名な物理学者が来日して「日本政府は勇気と英知をもって・・・」と述べているわけです。

投資とは未来に向かって行う借金です。返済するのは我々の子供、孫、曾孫ですが、彼らにとっては重荷になどなりません。むしろ新しい仕事の場がそれによって出来るのですからね。
「孫子の代に借金を残すな」とは、「孫子の代の仕事場を作るな」と言っているようなものなのです。

莫大な量の超電導コイルを必要とするILCは、もしかしたら超電導コイルの量産によるコスト低下をもたらし、リニア新幹線の保守コストを安くするかも知れません。
ともかく民間では出来ない実証科学設備投資は、日本国が行うべきなのです。

日本国民の多くの勇気と英知が、このILCの実現に向けて発言をなさるように願って止みません。

0 件のコメント:

コメントを投稿