2017年1月15日日曜日

なぜアメリカが貿易赤字なのか

トランプ次期大統領が大統領選後初の会見で貿易赤字の相手国として日本を名指しました。
これを受けて麻生財務相が、「日本側の対米投資や日本企業による雇用創出などの数字が(新政権の)耳に入るようにしないといけない」と述べ、アメリカに対する日本の貢献度などをアピールすべきだと応じましたが、そんなことはしない方が良いのではないでしょうか。

トランプ氏は反グローバルの立場です。対する日本の安倍政権はグローバル側にまだ居ります。何とかこの日本を反グローバル化させたいトランプ政権の方策があるのかも知れません。

アメリカの貿易赤字の原因は、アメリカが外国から物を買うからです。しかし、ドルで買うわけですから問題は無いはずです。ただドルの価値が次第に下がって行くというだけで、輸出側から見れば好ましいはずです。

もちろんこれはアメリカ国内に生産力があってのことですから、生産業をアメリカに引き戻すというトランプ氏の方針とも合致します。
企業経営から見れば赤字は大敵ですが、国家レベルで見れば、自国通貨建ての赤字ならそれほど危険はないはずです。日本の財政赤字と同じようなものですね。

もともとアメリカは生産力のある国家です。その生産力を押さえて他の途上国などに作らせて買っていたのは、自由資本主義世界を広げるためでした。
しかし中共は共産主義体制のままで輸出だけを増やしドルをため込んだわけです。そして事もあろうにドルに対して覇権を覆そうとし始めたわけです。

それまでは、中共も豊かになれば資本主義化して共産主義を捨て去るだろうという思惑があったのですが、それが外れたわけです。しかもため込んだドルを使ってアメリカ軍に対抗する軍備拡張をやり始めたわけですから、これはもう我慢の限界・・と言うことでしょう。

このアメリカの、途上国からの輸入政策で荒稼ぎしたのが「ウォール街」、国際金融資本だったようです。つまりグローバル経済の元締めです。
売れる商品を人件費の安い場所で作り、売値はそのままか少し安くすることで国際的な流通網を作り利ざやを稼ぎだし、それを株主配当へ回すという姑息な経済活動がグローバル経済でした。

そしてグローバル経済は個人主義であり市場主義で、「個人(株主)の利益」を第一義に考えます。しかし国家経済は国家主義で、「国益」を第一義に考えます。
つまりトランプ大統領の登場は、グローバル経済に対する「国家主義経済」への回帰の戦いであると言えるでしょう。

かつて、貴族たちによって生み出された資本主義は、資本家と労働者の対立を生み出し社会主義経済を作りました。しかし、複雑なシステムを必要とする技術開発が進んで、やがて企業家(経営者)が経済活動の主役となって、資本家はその影響力を失っていきました。
資本主義と社会主義の対立は、企業家の躍進によって過去のものとなって行きました。そしてそれを推進していたのがアメリカという国家だったのです。

企業家は常にイノベーションを繰り返しますから、官僚化してイノベーションに耐えられなくなった企業は淘汰されて行きます。
ところが、グローバル化は再び資本家を第一義にしてしまったのです。人件費の安いところで生産し、利益のほとんどを株主配当に回してしまうわけです。結果的に貧富差が広がり、資本家と労働者という古い対立が再現されてしまったわけです。

このバカバカしい回帰に反抗したのがトランプ旋風だったわけで、とりあえず「国家主義経済」への回帰が今、始まったわけです。
トランプ氏はこの対立を上手く利用し、「暴言」という形でグローバル化に警鐘を鳴らしました。それをアメリカの有権者が察知して、トランプ次期大統領の選出がなされたわけです。
なぜ「暴言」だったか。それはグローバル化推進で使われた大義が「人種差別撤廃」とか「弱者救済」といった人類愛的な偽装標語だったからでしょう。

英国のEU離脱、そしてアメリカでのトランプ次期政権の誕生で、今後「国家主義経済」が「グローバル経済」に対してどのような変革をもたらすか、そこが焦点になっていくでしょう。
グローバル化によって「漁夫の利」を得ていた中共などの途上国は、これから自分たちで技術的イノベーションを作って行かなければなりません。さもないと貧富差がますます進み、国家体制が崩壊してしまうことが考えられます。

ロシアはグローバル化に反抗し続けた先進国です。そして貿易赤字に苦しんでいます。そういう意味ではアメリカと同じはずです。だから表面上はトランプ氏とプーチン氏は馬が合うのではないかと噂されるわけです。
フィリピンのドゥテルテ大統領も、収奪的なアメリカに反抗していた大統領です。ですから綺麗ごとを重ねるオバマ大統領に反抗してきました。さて、トランプ次期大統領にはどう出て来るでしょうか。

もちろん、安易な「国家主義経済」ですと「国益の対立」を生み、戦争の危機にもなりかねません。国家の生産性がきちんとしていれば「貿易赤字」など何の問題もないはずです。
トランプ次期大統領の100日で、そのことを大統領が理解しているかどうかが判るはずです。そのトランプ政権まで、あと5日ですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿