2015年4月29日水曜日

アメリカ外交は失敗か、それとも・・・

ジャーナリストの田中宇(たなかさかい)氏が、最近のアメリカ外交について面白い見方をしておりました。

アメリカは多極型の覇権体制を目指しているというものです。
最初はソビエト連邦を追い詰めるための経済会議G7の本質。これは英国が米国を牛耳り、先進諸国を率いてロシアや中国と対峙する構図だったと言うことから始まります。

NATOとG7は同じ構図で、経済的に台頭してきた日本を取り込みロシアと対立する体制だったと言うのです。
冷戦が終焉した後、ロシアが先進国に入れてくれと言うので、G8が出来ましたがこれは意味もなく、やがてG20という体制が出来上がりました。アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合、ロシア、中共、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンという構成で、何ともにぎやかな経済会議になっていますね。

G7とG20は構造が全く違っていて、ドル単独基軸通貨体制(ブレトンウッズ体制)から多極型の覇権体制へ持っていくためのアメリカの戦略だと言うのが田中氏の見方です。
アメリカには「自国の単独覇権よりも多極型覇権を好む傾向がある」ということで、それは覇権国が衰退すると、覇権国に取り付いていた資本家たちが次の覇権国になりそうな国を加勢し、覇権転換を起こす動きが強まり、覇権の延命策と自滅策の相克になり、世界大戦などが引き起こされているという現実を見てのことだと言う訳です。恐らくその通りでしょう。

しかし、真正面から多極覇権構想など出せるわけはありません。主権国家は自国の利益を最優先に考えますから。
そこでアメリカは、アメリカの利益を演出して喧嘩を売ることを画策すると言うのです。つまり、アメリカが国益重視でどこかの国と対峙して失敗すると、そこに多極型の構図が出来上がると言う訳です。

例えば、南米の反米的なベネズエラが原油安で財政破綻に瀕し、政権崩壊しそうになると、オバマ大統領が3月中旬に突然、ベネズエラが米国にとって脅威だとして敵視する発言を行い、ベネズエラ(や中南米全体)の人々の反米感情を掻き立て、弱体化していたベネズエラのマドゥロ政権が人々の支持を取り戻すようになります。

ベネズエラが再強化された後、米政府はベネズエラ敵視の姿勢を撤回したと言う訳です。中南米などに対しても、敵視して逆に台頭を誘発する「隠れ多極主義」を最近のアメリカは行っている・・という考え方です。

田中氏は、AIIBに対するアメリカの反対が、この多極化を意図したもので中共の台頭をむしろ促しているのではないかと見て、対中姿勢の安倍政権に警鐘を鳴らしているわけですが、日本が対中姿勢を取ったのは聖徳太子の時代で、それから一貫して日本は反中だったのです。冊封体制にならずに、日本の自主独立を守るにはこれしか方法が無かったのでしょう。

第二次大戦後、日本政府は自由主義側に入りソビエト・中共と対峙します。これもイオデオロギーではなく日本の国体がそうだったからではないでしょうか。
現在アメリカの属国のような日本ですが、これは武装解除が説かれず国防をアメリカに依存したままであることが原因だと思います。

田中氏はどうやら「アメリカ追従を止めて多極覇権に備えるべきだ」という意見のようですが、軍事独立が果たされていない(つまり憲法改正がなされていない)今、アメリカ追従は致し方ないのではないでしょうか。むしろ、アメリカ追従と見せて、AIIBのADBへの取り込みを画策し、中共の無謀な貸付や人民元の暴走を抑えるような画策をすべきではないでしょうか。

人民元のSDR参加に対してもアメリカは反対しています。しかし世界各国がアメリカの反対を押し切って人民元のSDR参加を今年中に了承するだろうと言うことです。そしてこれもアメリカの「隠れ多極化」政策なのだと言うことです。

覇権体制が単独国家の一極支配体制でなく、複数の大国(地域覇権国)が対等関係で立ち並び、談合する多極型になっていた方が良いと考えるのは、膨らみ続ける余剰資金対策と考えた方が良いように思います。
次の覇権国はどこかなどと、覇権国を使って資金運用し、利ざやを稼ぐ金融をアメリカは大嫌いなはずです。
豊かだった欧州は、第二次大戦後も貴族主義が生き残り、気が付いたら弱小国家群になっていました。徹底的に叩きのめされたドイツが元気なのは、資本を使って生産性向上に尽力したからです。

日本でも、戦後体制の中に官僚主義(教条主義)が生き残りました。威張っていた軍人がアメリカによって排除された後、アメリカから得た既得権益で生き残ってしまったのでしょう。私が使う「サヨク」とはこの様な連中のことです。

多極的覇権主義は21世紀の主流になるかも知れません。それは覇権国同士が経済的、文化的に競う時代です。軍事としてはテロ対策が主流になるでしょう。経済が破綻し無政府状態になった国家はテロリストの巣窟になるでしょうから。主権国家の軍隊は、世界の安全保障を協力して担うことになるでしょう。例え文化背景の違う国家同士でも・・・

文化背景の違いを吸収する多極覇権主義。弱小国はその文化背景に合った覇権国と同盟し、覇権国同士は常に調整し合える状況に置くこと・・・

だから「多極の覇権」が必要なのですね。

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