2014年5月27日火曜日

日本の対露制裁、プーチン大統領の反応

ロシア編入に賛成したクリミア共和国の住民投票。それを非難する欧米の反応。プーチン潰しのアメリカは必死にロシアを非難します。
そしてアメリカはロシアの資産凍結、VISAとMasterCardの決済を出来なくしてしまいました。正確にいうと「ロシア銀行」「ソビンバンク」「インベストキャピタルバンク」「SMPバンク」の4つの銀行の取引を停止したわけです。

このアメリカの強行制裁に対して、仕方なく日本はこの3月に、ロシアに対する査証(ビザ)発給要件緩和に関する協議の停止と、両国間の新投資協定など3つの協定締結交渉の開始を見合わせるなどの制裁処置を発表しました。(なにしろ日本は軍事関係のソフトウエアを全部アメリカに握られていますからね。)
それは4月のオバマ大統領訪日を考慮した結果の内容で、かなり緩いものです。

来日したオバマ大統領はこの日本のロシア制裁にご不満のようでしたが、安倍首相ははっきりと「日本には北方領土の問題があり、ロシアとの交渉中だ」と大統領に説明していました。

さて、それから2か月ほど過ぎて、プーチン大統領が反応します。欧米に合わせて日本が対ロ制裁を発動したことについて「驚いた」と不快感を表明し、日本との北方領土問題について「交渉のプロセスを止めた」との指摘を行いました。しかし、ロシアには交渉の用意があるとも述べ、秋に予定されている訪日については明言を避けました。

今回のクリミヤ問題から始まったロシア非難は、アメリカ・ウォール街の「プーチン潰し」の一環のようです。しかし、アメリカの思惑ほど制裁はうまく行かず、かえってプーチン大統領の方が強気で出てきました。
オバマ大統領の対応のまずさからかも知れません。

ここをチャンスとばかりに中共・習近平主席がロシアに秋波を送ります。制裁を受けてG7から追い出されてしまったプーチン大統領は5月20日に中露首脳会談を上海で行い、習近平国家主席にもろ手を挙げた歓迎を受けています。

東シナ海で同日始まった中露海軍の合同軍事演習を2人の首脳がそろって視察する異例のパフォーマンスも行い、江沢民元主席にも合うなど日米や周辺国を牽制し、軍事協力の強化も行うことで“同盟関係”を確認したようです。

そして今回のサンクトペテルブルクで記者会見になったわけですが、どうもプーチン大統領がどう考えているのかが判りません。
米国主導の制裁に日本が同調したことに対する不満を表明しましたが、「ロシアには交渉の用意がある」と述べるなど安倍首相への呼びかけとも取れる発言です。

プーチン大統領はアメリカのウォール街と戦っています。ですからアメリカのプーチン潰しはウォール街が主導していると見た方がいいでしょう。
しかし経済制裁は厳しいもので、それは中共などと手を組んでも何もなりません。そんなことは百も承知のプーチン大統領、狙いは日本の経済にあります。
そのために北方領土を餌にする手口は昔も今も変わりませんが、安倍政権にも少しでも現状を進展させたいとするバイアスがかかっていることも事実。

日本が対露制裁に踏み切ったことを「驚いた」などと表現する大統領ですが、そうせざるを得ない日本の事情は承知しているはずです。
安倍首相もまた、したたかに動きます。TPP交渉参加に踏み切り、「交渉を速く進展させろ」などとアメリカの顔色を窺っているようですが、どうやら甘利大臣には「簡単に妥協するな」と言っていたらしく、交渉は難航し、現在もまだ100%の妥結には至っていません。

中共に対しても「前提なしでの話し合い」を提唱し、「ドアはいつでも開けてある」などと述べています。そしてまったく話し合いは行われていません。それでも日本の景気は回復基調となり、日本は全く中共を必要としていないことを裏付けます。
「戦後秩序を守れ」と言う中共に対して、「戦後レジームからの脱却」の行動を取り続ける安倍首相。後に引く気は微塵もありません。
自民党内部でも弱かった安倍基盤が強くなってきているようです。安倍首相をいじめていた老害議員も、発言の場がこともあろうに「共産党・赤旗新聞」になってしまいましたね。

この安倍首相が、対露交渉でどのような振る舞いを見せるか、楽しみでもありますが同時にちょっと心配でもありますね。
もしかしたら、プーチン大統領には現在のところ、オバマ大統領でもなく、まして習近平主席でもなく、一番気になっているのは安倍首相なのかも知れません。もちろん交渉相手として不足ないからです。

この秋に予定されている安倍・プーチン会談。北方領土交渉はカムフラージュの話題であり、実は「崩壊する中共とそれに巻き込まれるアメリカをどうするか」などという内容だったら面白いのですけどね。

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