失敗することが判っているのに、欧州の夢を捨てきれず始めてしまったユーロ経済圏。
加盟国の通貨発行権を奪い取って、共通通貨「ユーロ」にしたのですが、国家経済の運営が出来なくなりデフレ状態が始まってしまいました。
この欧州のデフレ化を、「ジャパナイゼーション」と呼んでいるようです。金利がマイナスになり、お金の流れが少なくなり故に物価が安くなるという悪循環が始まった訳です。
日本の財務省が、プライマリバランスなどというおかしな指標に振り回されて経済を低迷させ、20年近くデフレ状態を続けながら、未だに脱却できない状態を見ながら、ユーロ圏もそうなってしまうことを何とか回避しようとする動きが始まったようです。
そんな中、追い詰められるEUの中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、「MMT(原題通貨理論)をもっと研究する必要がある」との見解を発言したそうです。
MMTはケインズ経済学を基本とする通貨システムの考え方で、マクロ経済学の源流から派生したもの。EUが作り上げたユーロの発想とは全く異なる考え方ではないかと思うのです。
ようするに通貨とは物やサービスの生産可能性に匹敵する量を発行し、発行し過ぎた状況(インフレ懸念)が出てきたら税金や国債の発行などで通貨を吸収する・・という考え方ですね。
物やサービスは通貨によって生産され販売されます。ですから通貨が無ければ経済がスタートしないわけですから、先に誰かが通貨を借り出して生産をスタートし、その後経済循環によって次第に経済社会が大きく、つまり豊になって行くわけです。
そして最初に通貨を借りるのが個人ではなくて政府であるとするのがMMTの考え方です。個人が借金する場合は返済の可能性を考えますし、信用の問題もあります。このような問題は政府ですと無いわけです。
先ず個人では死亡する場合があります。いや、確実に何時かは死ぬわけです。しかし政府は余程のことが無い限り死亡することはありません。つまり借金の期限が来たら借り直しが出来るわけです。それも何十年を経過しようと、借入可能な訳です。
借入金額がどんなに膨れ上がろうと、そのお金は必ずその通貨が通用する圏内にあります。そして通貨は個人が(銀行などを経由して)借りたり貸したりしながら生産を高め、同時にその消費を高めて豊かになって行くわけです。
そしてその通貨をコントロールする手段が、税金による回収と、国債などの発行による資金回収で行う訳です。
また、長期に渡っては経済が成長するわけですから、自動的に借金は目減りしていきます。これも一種の回収になりますね。
主流派経済学とは違いますね。国債を発行して集めたお金で公共投資をするとか、徴収した税金で社会福祉を充実させ、高齢者などの生活保障に使うなどと言った経済談話は「嘘」と言うことです。
今、千葉の台風災害で電線の地中化が話題になっていますが、その為に必要な費用は政府借金(国債か財務省債券)で行えば良いだけです。工事に幾ら費用が掛かろうと、その工事を請け負うのが日本国民であるならば、支払われたお金は国内に流通します。国内の生産性に余裕があれば、それでインフレになる心配は在りません。
プライマリバランスと言うのは、ある期間(例えば1年間)に収入と支出が同等に近い状態であることを言います。バランスしていると言う訳ですね。
これは企業会計とか家計簿には必要なことです。また地方公共団体も同じです。通貨発行出来ないからです。
これはミクロ経済と言います。通貨発行が可能な場合はマクロ経済と言って区別されます。通貨とは、決済期限のない借用書のことです。日本の「円紙幣」は日銀の借用書と言うことになっています。
ドラギ総裁が「MMTを検討しろ」と言ったのは、このままではユーロ圏がデフレから抜け出せなくなるからでしょう。
それは日本の財務省を見て、「日本の様にはなりたくない」と感じたからだと思います。経済のジャパニゼーションだけは回避したい・・・
あと1か月ほどで英国がEUから脱退します。EU既得権者がボリス・ジョンソン首相にさまざまな圧力を掛けていますが、首相はのらりくらりとこれをかわしています。
何もしないで、EU側も何もしなければ自動的に「合意なく離脱」が可能になるからです。そして英国が抜ければ困るのはEU側であって英国側ではありません。
10月の公判くらいになればEU側が何らかの妥協案を仕掛けてくることも考えられます。しかしそんなものにはジョンソン首相は乗らないでしょう。
英国が抜けた後のEUは、疲弊し衰退するでしょう。その前に真剣にMMTを検討する必要があるのでしょうね。
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