2019年9月17日火曜日

通貨供給、国債、そして税金

イメージして欲しい絵があります。2本のパイプがあってその先に風船が付いた絵です。
片方のパイプから空気を送り込みますと風船は膨らみます。もう片方のパイプから空気を抜きますと風船は縮みます。

空気を送り込む方を「統合政府の通貨供給」。空気を抜く方を「統合政府の税金」として、風船をわれわれの社会とします。
統合政府の通貨供給を続け、統合政府が税金を取らない状況であれば風船は膨らみ続け、やがて爆発するでしょう。これが究極のインフレです。
一方、統合政府の税金を取るだけで統合政府の通貨供給をしなければ、風船は萎みやがて固い塊となってしまうでしょう。これが究極のデフレです。

「統合政府の通貨供給」とは、通貨を発行しそれを政府が使って社会という風船の中に送り込むことを意味します。それは公共投資でも、公務員給与でも何でも構わないのです。
「統合政府の税金」とは、法によって決められた通貨で税金を支払うことを意味します。所得税であれ消費税であれ、あるいは相続税であれ何でも良いのです。

社会という風船は、その風船の皮に当たる「経済運営」と言うものが、どんどん丈夫になって行きます。それはその社会を構成する要員(国民)が増えても受け入れられるようにするためです。
技術の進歩や文化の進歩がそれを可能にして行くわけです。

こうして風船は常に大きく膨らむ可能性を持つわけです。もっとも大きくなりすぎると内部矛盾が生まれて2つの風船に分割されたりします。これを収めるのが民主主義であり、政治家の仕事です。
民主主義は、未来の想定を国民に判断させるシステムで、より多数の幸福が追求できるシステムです。しかし未来の予想ですから外れることもあります。この時はすぐに切り替えられるようにすることが「少数意見の尊重」という訳ですね。けっして多数が正しいことにはならないからです。そして国民は常に切り替えるべきかどうかを議論し続けます。公の場に置いてですが、それを広く伝え、意見が聞けるのがインターネットと言う訳です。

独裁政治の危険性は、風船が爆発するまで膨らませ続けたり、風船が縮み過ぎるまで酷税を取り続けたりするから危険なのです。
暗殺、虐待、戦争(クーデターも含む)は、独裁政権か、この民主主義の機能が正しく動かないと生じます。

問題は常に経済です。その風船が現在どのような状態にあるか、それを見ながら経済を運営していくのが政府(行政)の仕事です。
税金で行政の仕事がなされていると言うのは、考え方によっては間違っています。国家は通貨供給が出来る機関ですから、税収によって国家運営がなされるわけではありません。

国家の財政諸表としては金額の記録は残りますから、税収と政府投資の数字は出てきます。これを収入と支出の関係で見ればミクロ経済的判断となります。企業経営や地方自治などの財務なら判りますが国家になるとマクロ経済を使って観なければならないはずです。

クルーグマン教授とMMTのケルトン教授の論争で、「国債を民間に向けて発行して調達した資金でもって政府支出すること」と言うクルーグマン教授の発言に対し、「通貨を供給して政府支出とし、出し過ぎた場合(インフレが起きた場合)は国債を発行してお金を吸収する」とケルトン教授が発言したわけです。

クルーグマン氏の「国債を発行して調達した資金」が、国内に向けた国債発行か国外に向けた発行か、そこがボヤかされていますが、重要なポイントです。
対するケルトン氏の「先に通貨を供給して政府支出を行い、発行し過ぎた場合は国債でそれを吸収する」という方は、国債はあくまでも国内向けと言うことを意味するようです。

政府支出が先か、国債による民間からの調達が先かという問題に帰着するように思います。
「国債による民間からの調達が先」としますと、「その民間とは誰か」という議論をしなければなりません。国内から調達が出来ない場合は他国かあるいは国際金融機関からということになるでしょう。
しかし国内で「政府支出を先」とすれば、国内取引はその通貨で行えます。その通貨を使うための法律(例えば税法など)によってそれは可能です。

国内だけで考えると、国債による政府支出も政府による通貨供給も同じことです。しかし国債を他国に向かって発行すると、本物の「国家の借金」となります。
外国からの「国家の借金」を返済すると言うことは国内の生産性を上げるしか方法は在りません。

いずれにせよ、国家が借金をすると言うことは風船が膨らむことになります。
そして国内の借金はその国の通貨供給が増えていることを意味しています。だから風船は膨らむわけです。

税金は風船を縮小させることが目的です。国債も風船を縮小させますが、政府支出に回せば風船は変わりません。経済成長とは政府の借金が増えることと同じです。
プライマリ・バランスがとれていると言うことは、経済成長していないことになります。つまり風船は膨らまないわけです。

他国の風船が膨らむとき、自国の風船が膨らまないと相対的に縮小したことになります。それでいいと言っているのが財務省。結果的に今、円と金が同じように扱われることになったそうですね。つまりドルで持っているより円にしようか金にしようか迷うと言う訳です。経済成長しないから価格維持が可能だからでしょうね。

膨らまない風船の中で、増えられない国民。だから少子化になります。当然ですよね・・・

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