2019年9月11日水曜日

苦境に立つジョンソン首相

「ヨーロッパは一つ」という欧州の夢、産業革命以降の戦乱の欧州は、植民地支配による豊かさの恩恵の奪い合いでした。
第二次世界大戦で疲弊し、戦時中の日本軍の活躍があって、日本を叩き潰した後に植民地の独立が相次ぎ、経済的に没落していった欧州です。

そうなって、やっと「ヨーロッパは一つ」を実現しようと言う動きが始まり、EUが出来ました。しかし、やってみると欧州各国の利害得失が表出し、まとまることが大変だったようです。

欧州各国政府の上にEU政府がある様な構造で、EU加盟国はEU税を支払わされていました。
もちろん全国民から徴収するわけですから、国民の間には不満もあったようです。
まとまらないEUを何とかまとめていたのは英国で、また、英国はEUの市場として多くの物を購入しておりました。
英国国民は「EUに加盟してからろくなことが無い」と感じていたようです。

富裕層は財産の隠蔽を計ります。いわゆるタックス・ヘイブンという地域に財産を隠し、課税のがれをしたわけです。(昔から植民地の利益などを隠していたという話もありますね)
スイス銀行や、小さな島の独立国などを使って隠蔽するわけです。EUはそれを認めていたようです。EU設立時に裏取引があったのかも知れませんね。もしかしたらEUそのものが租税回避を裏目的にしたものだったのかも知れません。

なんとなくそれがバレてきて、キャメロン首相がEU離脱の国民投票をやったら、52%の離脱賛成でEU離脱が決まってしまったわけです。つまり48%がEU既得権で儲かっているか、EUを利用した租税回避を行っている富豪が居ると言うことも考えられます。

ただ、ある調査機関の世論調査によりますと、あの時の国民投票に投票しなかった有権者の内、合意なし離脱を支持するのはわずか21%。反対はその倍近くの43%に上るそうです。

国民投票EU離脱に投票した人も、合意なし離脱に賛成か反対かを問えば、「賛成」を選んだのは73%だったそうです。
つまり27%は合意なしブレグジットは「良い」結果ではないと思っているわけですね。

キャメロン首相の後を継いだメイ首相は、ブレグジットでEUの提案を大幅に取り込んだ法案(つまりEU離脱骨抜き法案)を議会から否決されて首相辞任となってしまいました。
この時、英国議会はEUに有利な離脱を拒否したわけです。

アメリカのトランプ大統領は、この時英国に対して「合意なき離脱を支持する」という声明を発表し、EU離脱後はアメリカと英国で2国間協定(2国間FTA)を結ぼうとエールを送っています。

そして「合意なき離脱」を排除しない・・としてEU側と交渉するというボリス・ジョンソン氏が首相の座に就きます。(離脱が10月31日を変えない)
EU側はメイ首相に示した案から譲歩はしないと、まだ態度を硬化させていますから、もはや「合意なき離脱」しか無くなって来た様に見えます。

この問題の核心にあるアイルランド問題で、ジョンソン首相はアイルランドのレオ・バラッカー首相と会談しましたが、「どうするか具体的な案を持ってくるのはジョンソン大統領の方だ」として問題解決には至っていません。
バックストップ条項を見直し(撤廃ではなく)、EU側が合意に向けた譲歩案を示すことは考えられるようなのです。

英国は国民投票のやり直しはしません。
そして9月9日、欧州連合(EU)からの離脱延期を求める野党法案が裁決され、エリザベス女王が裁可してしまいました。
この離脱延期法は、10月19日までにEUとの新たな離脱協定案が議会で承認されない場合、来年1月末までの期限延期をEUに求めるようジョンソン氏に義務づける内容です。
与党保守党の造反(裏切り)議員が21名も出て、その結果でした。もちろんジョンソン首相はこの21名を除名します。

そしてジョンソン首相は、4日に否決された総選挙の前倒しを求める動議を英下院に再び提案するそうです。現在の世論調査では保守党は支持率で最大野党・労働党に10ポイントの差をつけており、ジョンソン氏は総選挙で保守党が過半数を確保し、法案の撤回が可能と見込んでいるからです。

野党「労働党」は、現在過半数の議席を持っています。そして英国は解散総選挙は英下院の3分の2以上の賛成が必要なのです。
ですから野党労働党は、ジョンソン首相の解散総選挙の動議に反対する構えです。

「合意なき離脱」も、解散総選挙も出来ないと、ジョンソン首相に残された策は何でしょうか。
ここまで追い詰められても、ジョンソン首相は離脱延期の回避を諦めないそうです。

世論調査で、「EUが離脱協定について交渉再開に応じない場合に英国は合意のないまま離脱すべきか」と質問すると、合意なし離脱の支持者が46%で、反対の39%を上回ったそうです。
また、「英国が10月までにEUを離脱するための条件に、英国とEUが合意できない場合に合意なし離脱を支持するか」と質問したら、50%が反対し、賛成は38%に留まったそうです。

つまり英国民もどうしたら良いのか決断が出来ていないように思います。英国がEU離脱を望むのは、EU側の官僚体質に問題があるからだ・・と言う事をもっと英国民に知らせておけば、また世論調査の結果は変わると思いますけど。
2度も延期を認めたEUは、3度目を認めるかどうかわかりません。フランスもドイツも追い込まれていますから。ジョンソン首相はバックストップ条項の妥協案をEUに呑ませる自信があるようにも見えます。

諦めていないジョンソン首相。さすがにジョンブル魂(不屈の精神を持つ本当の意味での英国人)の国ですね。ぜひジョンソン首相には「ジョンブル魂を見せてやる!」と言って欲しいですね。

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