2017年5月から6月にかけて、人民元相場が大きく上昇しました。中共当局が対ドル取引の「基準値」の算出手法見直しを公表したからです。
こうしないと人民元安が続き、それによる資本流出に歯止めがかからなくなったからでしょう。そしてこの公表はうまく機能し、資本流出は収まったようです。
この経緯を振り返ると、人民元をSDRに入れるために、2015年の8月、人民銀行は人民元を突然切り下げました。無理に高く保ってきた人民元相場を市場実勢に近づけるとして基準値の算出方法を変更したためでした。
「市場の前日終値を参考にする」と表明し、多くの通貨からなる「通貨バスケット」も加味するルールを取り入れるなどして、実勢に沿う相場形成を目指すと宣言したのです。
もちろんこれが人民元をSDRに組み込ませるための戦略であることは間違いなかったようです。こうして2016年10月、人民元はドルやユーロ、円、ポンドに続き、国際通貨基金(IMF)の仮想通貨「特別引き出し権(SDR)」に組み込まれたわけです。
2017年3月、李克強首相が政府活動報告で、「国際通貨としてお墨付きを得た」と成果を強調しておりますから、やはりSDR入りは中共政府の悲願だったようですね。
しかしやはり共産主義国家です。当局は相場を管理し、基準値から1日当たり上下2%の変動しか認めておりませんでした。
これを各国に対して「完全な変動相場制へ移行する過渡期」との説明がなされ、また世界もそれを信じていたようです。
人民元安は、中共の輸出にはプラスに働きます。しかし当然ですが資本流出圧力が高まってきます。「明日はもっと人民元が下がる」と思えば誰だって人民元をドルに換えて外国に置いておこうとするでしょうからね。
トランプ大統領が元安戦術による中共の輸出拡大を批判し、「為替操作国」に指定すると公言したことも響き、投資家は米中為替戦争に不安を抱き、むしろ元を売る動きを強め、そこにアメリカの利上げが進み、ドルと元の金利差が意識され、元はますます売られるようになったのです。
また、中共景気の減速懸念も意識され始め、人民元はさらに安くなって行ったわけです。
そこにこの5月、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中共国債の格付けを引き下げてしまったのです。
この格下げで国債が売られれば、資本流出に拍車が掛かってしまうことは間違いなく、共産党首脳の人事を決める党大会を今秋に控えた習政権は何としても人民元を上げなければならなかったわけです。
さて、このような経緯を見てきますと、中共は人民元をSDRに入れるためだけに対ドル取引の「基準値」の算出手法を見直し、SDRに組み入れられたら再び算出手法を元高になるように変えたように見えます。
JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉氏は、「人民銀の恣意(しい)性が高まることになり、元の自由化・国際化に逆行する動きともとらえられる」と懸念を示しております。
国際銀行間通信協会(SWIFT)は、「貿易決済などに使われる通貨別シェアで、人民元は2015年8月に2.79%と日本円の2.76%をわずかに逆転。ドル、ユーロ、英ポンドに次ぐ『第4の国際通貨』にのし上がった。ところが、今年4月には1.60%と7位に後退しまった」と述べておます。
三菱東京UFJ銀行の藤瀬秀平氏は、「SDR構成通貨の一員としてふさわしくなく、国内外で元のプレゼンス低下を招くリスクを含んでいる」と指摘し、「投機筋による強烈な元売りが見込まれ、資本開放や変動相場制への移行、元切り下げなどを余儀なくされるリスクも台頭しかねない」と懸念を示しております。
今年3月のG20で、中共の肖捷財政相は「断固として保護貿易に反対すべきだ」と主張しました。もちろんアメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領を意識して述べたものです。貿易だけが自由主義で金融は保護主義(自国第一主義)と言うのでしょうか。
SDRに組み込まれて「人民元も世界通貨になった」ような錯覚にとらわれているのかも知れませんね。AIIBではそれに参加しないアメリカと日本にしびれを切らし、人民元だけを使った融資を目論んでいるようですが、人民元はドル経済圏の中国地区ローカル通貨であることは、まだ変わっていないのです。
国内の生産性をあげて貿易を拡大し、軍事力を強化して周辺国への威圧を高めても、肝心の信用経済(自由主義経済)が出来なければ、通貨は国際通貨にはならないことが判っていないようですね。
この経緯を振り返ると、人民元をSDRに入れるために、2015年の8月、人民銀行は人民元を突然切り下げました。無理に高く保ってきた人民元相場を市場実勢に近づけるとして基準値の算出方法を変更したためでした。
「市場の前日終値を参考にする」と表明し、多くの通貨からなる「通貨バスケット」も加味するルールを取り入れるなどして、実勢に沿う相場形成を目指すと宣言したのです。
もちろんこれが人民元をSDRに組み込ませるための戦略であることは間違いなかったようです。こうして2016年10月、人民元はドルやユーロ、円、ポンドに続き、国際通貨基金(IMF)の仮想通貨「特別引き出し権(SDR)」に組み込まれたわけです。
2017年3月、李克強首相が政府活動報告で、「国際通貨としてお墨付きを得た」と成果を強調しておりますから、やはりSDR入りは中共政府の悲願だったようですね。
しかしやはり共産主義国家です。当局は相場を管理し、基準値から1日当たり上下2%の変動しか認めておりませんでした。
これを各国に対して「完全な変動相場制へ移行する過渡期」との説明がなされ、また世界もそれを信じていたようです。
人民元安は、中共の輸出にはプラスに働きます。しかし当然ですが資本流出圧力が高まってきます。「明日はもっと人民元が下がる」と思えば誰だって人民元をドルに換えて外国に置いておこうとするでしょうからね。
トランプ大統領が元安戦術による中共の輸出拡大を批判し、「為替操作国」に指定すると公言したことも響き、投資家は米中為替戦争に不安を抱き、むしろ元を売る動きを強め、そこにアメリカの利上げが進み、ドルと元の金利差が意識され、元はますます売られるようになったのです。
また、中共景気の減速懸念も意識され始め、人民元はさらに安くなって行ったわけです。
そこにこの5月、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中共国債の格付けを引き下げてしまったのです。
この格下げで国債が売られれば、資本流出に拍車が掛かってしまうことは間違いなく、共産党首脳の人事を決める党大会を今秋に控えた習政権は何としても人民元を上げなければならなかったわけです。
さて、このような経緯を見てきますと、中共は人民元をSDRに入れるためだけに対ドル取引の「基準値」の算出手法を見直し、SDRに組み入れられたら再び算出手法を元高になるように変えたように見えます。
JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉氏は、「人民銀の恣意(しい)性が高まることになり、元の自由化・国際化に逆行する動きともとらえられる」と懸念を示しております。
国際銀行間通信協会(SWIFT)は、「貿易決済などに使われる通貨別シェアで、人民元は2015年8月に2.79%と日本円の2.76%をわずかに逆転。ドル、ユーロ、英ポンドに次ぐ『第4の国際通貨』にのし上がった。ところが、今年4月には1.60%と7位に後退しまった」と述べておます。
三菱東京UFJ銀行の藤瀬秀平氏は、「SDR構成通貨の一員としてふさわしくなく、国内外で元のプレゼンス低下を招くリスクを含んでいる」と指摘し、「投機筋による強烈な元売りが見込まれ、資本開放や変動相場制への移行、元切り下げなどを余儀なくされるリスクも台頭しかねない」と懸念を示しております。
今年3月のG20で、中共の肖捷財政相は「断固として保護貿易に反対すべきだ」と主張しました。もちろんアメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領を意識して述べたものです。貿易だけが自由主義で金融は保護主義(自国第一主義)と言うのでしょうか。
SDRに組み込まれて「人民元も世界通貨になった」ような錯覚にとらわれているのかも知れませんね。AIIBではそれに参加しないアメリカと日本にしびれを切らし、人民元だけを使った融資を目論んでいるようですが、人民元はドル経済圏の中国地区ローカル通貨であることは、まだ変わっていないのです。
国内の生産性をあげて貿易を拡大し、軍事力を強化して周辺国への威圧を高めても、肝心の信用経済(自由主義経済)が出来なければ、通貨は国際通貨にはならないことが判っていないようですね。
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