2016年4月7日木曜日

税金逃れ摘発、パナマ文書

パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」がハッカーに狙われ、内部文書がインターネット上に流出してしまいました。
「モサック・フォンセカ」は、ハッカー攻撃で流出したことは認めましたが、自らの違法行為は否定しております。
タックス・ヘイブンとして世界中の政治家や実業家、そして俳優やスポーツ選手などがこの法律事務所で資産隠しを行っている可能性が高く、それが明るみに出た形になったようです。

その資産隠しの手法は、顧客の依頼に応じ、租税が優遇されるオフショア(「海岸線の外側」というような意味)に多数のダミー会社を設立し、租税回避や資金洗浄などを支援することを行うわけです。
この事務所は、「違法ではない」と述べていますが、他の国の法律ではなく、自国(パナマ)の法律で違反ではないと言うことなのでしょうね。

この流出した内部文書は、南ドイツ新聞が入手し、世界の報道機関で構成する「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が4月3日に検証結果として公表しました。
中共の最高指導部、政治局常務委員会の現及び旧メンバーの少なくとも8人の親族がこの事務所を通じて法人を設立しているそうです。その中には習近平主席の義兄1人が2009年に英領バージン諸島に設立した2法人も含まれているとか。

またプーチン大統領は、友人であるチェロ奏者のロルドゥギン氏を使って、資金をバージン諸島に設立した法人などを経由させ、キプロスのロシア商業銀行から受けた融資を関係企業に移動するといった手法を使っているそうです。

文書にはまだまだウクライナのポロシェンコ大統領やサウジアラビアのサルマン国王らの名前も登場するし、北朝鮮企業やレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに関係する法人、さらにシリア政府に軍用機燃料を供給する企業の名まで出ているそうです。

このような資金の脱税と不正資金移動について、どのように罰するのか、どの国の法律が適用されるのか、あるいは国際的な法律(これを条約と言います)が出来るのか全く分かりませんが、アイスランドでは首相の関与が指摘されたのを受け、野党が内閣不信任案を提出する構えを示し、ついに辞任に追いやられました。
習近平氏は、国内にその犯行がばれないようにテレビを監視し、その関連ニュースが放映されないようにしています。英国のキャメロン首相は言い訳に必死です。
公表されただけで、各国の内部で違法行為として取り締まったり政権を失ったりする動きが出てきているようですね。

さて、このパナマ共和国という国家は、どうして世界中の租税忌避に手を貸す国家になったのでしょうか。
北米と南米のど真ん中、赤道のちょっと北に位置する微妙な国家です。
モンゴロイドの先住民族、チブチャ族などがコロンブスの新大陸発見で追いやられ、スペインの植民地となります。
19世紀に幾多の独立戦争を経て、連邦国家コロンビア合衆国が成立し、パナマも連邦の一州として実質的な独立を達成しました。
コロンビアは地の利を生かして南北のアメリカ大陸を繋ぐ鉄道敷設とか、大西洋と太平洋を繋ぐ運河の建設権などを確保しますが、内乱などの影響があってなかなか実現できません。

スエズ運河建設に携わったフランス人実業家レセップスは、コロンビアから運河建設権を買い取り、1881年から1889年までパナマ運河建設を始めます。1886年に中央集権色の強いコロンビア共和国が成立したりして政治的不安定が続き、このレセップスの運河計画は失敗してしまいます。

20世紀になってセオドア・ルーズベルトがアメリカ合衆国大統領に就任すると、レセップスが設立した新パナマ運河会社から運河建設等の権利を買い取ることが議会で採決されます。

コロンビア共和国は、アメリカの計画をコロンビア議会の上院で否決してしまいます。そのためアメリカは、ラテンアメリカ地域における軍事的重要性からパナマ地方の分離・独立を画策し活動を始めます。
そして1903年11月3日にパナマ地域はコロンビアから独立を果たし、パナマ共和国が成立するわけです。
そのために、パナマ運河地帯の幅16kmの主権を永遠にアメリカ合衆国に認めるとの規定が定められ、パナマ共和国はアメリカ合衆国によって事実上支配されることになってしまいます。運河建設は1914年に完成しました。

こんな経緯ですから当然反米(反・米国資本)の動きも強く、多くの反乱や暴動が起きています。ノリエガ将軍などが権力を握り、アメリカに排除されたり、コロンビアのメデシン・カルテルとの関係を強め、世界中に麻薬を広めたりしております。
もとより法律などあってないような国家。脱税幇助もこの反米意識による戦いの一環かも知れませんね。
そんな中での、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」からの内部文書漏えい事件であることを、認識する必要があると思います。
ハッカーはどこの国のハッカーだったのでしょうか。

このパナマに、日本の税金逃れも加担しております。
よく日本のタンカーが「パナマ船籍のタンカー」などと報道されることがあると思いますが、これが税忌避の仕組みであることはお判りですよね。
日本国籍にするとあまりにも船舶の税金が高いのです。船は動きますから、寄港先のどこかに船籍を置けばよく、税の少ないパナマに船籍を置くことが通例化してしまったのでしょう。
ですから、その石油を使っている日本国民は、知らず知らずに麻薬国家に貢献していることになります。

南シナ海で有事があれば、これらのタンカーを守るのは日本の自衛隊でありアメリカ国軍ではないでしょうか。その防衛の任に当たる主権国家に税を払わないことが良いことなのかどうか、我々は考えなければならないと思います。
同時に、船舶に掛ける税金についても、公共の観点から考え直す必要もあるでしょう。このままでは、あまりにもみっともないとは思いませんか?

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