2016年4月11日月曜日

ドラゴン宇宙船、宇宙住宅開発

アメリカは宇宙開発を国家事業から民間事業へと移行すべく取り組んできました。その企業体がスペースX社です。そしてこの企業が開発した宇宙住空間モジュール「BEAM」が、このたび国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられました。

我が国も、JAXAという国立研究開発法人と、三菱重工業という民間企業に重心を移しておりますが、まだ国家プロジェクトとしての性質を持っております。
完全民営化か、それとも半官半民のような特殊法人の方が良いのか、意見の分かれるところですが、アメリカは営利を目的とした宇宙開発に向けて、スペースX社が頑張って居るわけです。NASAの支援は受けているそうですが。

さて、このたびスペースX社は打ち上げに使ったファルコン9ロケットの1段目の機体を、2段以降のモジュールと切り離した後、大西洋上の無人船の上に着陸させることに成功させました。
つまり、複数回使用することを狙った1段目の回収であり、この後の再使用に掛かるコストが使い捨てよりも安くなれば今後の打ち上げコストが国際競争の中で優位に立つことが考えられます。

これまで、この軟着陸によるロケット回収は何度も失敗を重ねておりました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm26038214

今回の打ち上げでは、完璧に成功させました。スペースX社の技術は三菱をはるかに凌いだようですね。
https://www.youtube.com/watch?v=rEKSevYoDgM

三菱重工も、H-2A/Bロケットの成功神話はもう卒業して、1段目回収と再使用の技術向上を狙って欲しいですね。今回のファルコン再使用型で、再び日本のロケット打ち上げ技術はアメリカに大きく差を付けられました。
打ち上げ時の噴射炎を見ても、H2Aの噴煙の煙のような軌跡は出ておりません。燃料も改良されていることが伺えますね。
回収の着地も見事です。無人船のプラットフォームのど真ん中に安定して降りてきています。

この映像を見る限り、アメリカのロケット制御のソフト技術が完全に日本を打ち負かした感じがしませんか?
日本は打ち上げは得意でしたが、地球帰還技術は全く出来ておりませんから。
この回収ロケットがコスト面でどのくらい優位になるかはまだ判りません。逆噴射燃料のコストとか各部の劣化が気になるところです。しかし、要となるのはロケット制御のソフトウエアの部分だと思います。そしてソフトウエアは劣化しませんし、発展していくだけですから決定的な優位性を持つはずです。
三菱の、使い捨て型の高価なロケットがもはや時代遅れになりつつあることは、この映像から見て取れますね。

また、このたびスペースX社が打ち上げた住空間モジュール「BEAM」は、宇宙船に搭載時は3・6立方メートル程度しかありませんが、それを宇宙ステーションに取り付けると4倍以上の16立方メートルに膨らむそうです。
そしてその素材は、ポリマー繊維などの複合材らしいとのことですが、明らかにされてはおりません。当たり前ですけど・・・

このBEAMは、スペースX社ではなく別の企業であるビゲローエアロスペース社が開発したものだそうです。今後2年間ほど宇宙飛行士が中に入るなどして活動し、宇宙からの放射線を遮蔽できるか、宇宙ごみ(デブリ)に衝突しても壊れないか・・などを試験するとのことです。

BEAMに使われるポリマー複合素材は、これから宇宙空間で空気で遮断されていない太陽光に直にさらされ、そして弾丸よりも早く破壊力が強いデブリにも晒され、それでも安全に住空間を維持できる素材を実験することにもなるわけです。

そしてこのようなポリマー複合材は、当然地球型の住宅にも今後取り入れられていくでしょう。つまり、今後建築設計のあり方も変わって行くと言うことを予感させるわけです。

そうなれば、地球環境での災害に対する対策、その建設のあり方も変わるでしょう。我が国が国土強靭化として津波防護壁や耐震構造の住宅などと過去の技術で考えていても、このような素材が開発されれば瞬時にしてその考え方が根底から変わってしまう可能性もあるわけです。

建築デザインも変わって行くでしょう。複合ポリマー外壁材が出来れば、建築フォルムの自由度も上がるはずですから。鉄骨とコンクリートの建築では実現できなかったさまざまな形式が登場することが期待出来ます。

このスペースX社の今回の打ち上げを見て、再びあのアメリカが戻ってきたように感じました。
粗野で、力まかせに夢を実現していくアメリカ人の底力です。最初は冷たい視線で見られ、狂人あつかいされるような事業ても、それを支えるアメリカの風土があるように思います。

スペースX社の宇宙船がドラゴンと命名されたのも、ピーターポール&マリーが歌った「Puff the Magic Dragon」という子供の夢のような歌から取られたと聞きます。
まるで鉄腕アトムの逆噴射のように、見事に無人船プラットフォームのど真ん中に着地するロケットは、まさに夢が実現した瞬間でもあったようです。

我が日本が決して真似が出来ないアメリカの夢の開発。しかしその夢をアメリカによって現実に見せられた時、燃えるのが我が日本のような気がします。
ライト兄弟がアメリカの空を飛んでから、やがて日本がゼロ戦を作り大東亜の空を席巻しました。それで奮起したアメリカはターボプロップを完成させゼロ戦を過去へ追いやったのです。

永遠のライバルのような日米の競争。今度は日本が頑張る番なのではないでしょうか・・・

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