核の話になると我々はすぐに核兵器とか原発を思い浮かべてしまうようですが。実際は近代物理学が生み出した理論の中に出て来る言葉であり、その実証実験の最初が不幸なことに原爆開発だったことでした。
アインシュタイン博士が「エネルギー E = 質量 m × 光速度 c の2乗」という関係式を発見して、キューリー夫人が核崩壊が現実に起きていることを発見し、それを瞬時に行えばとてつもない爆発が起きるだろうということで原爆開発が始まりました。
アインシュタイン博士は原爆にはあまり興味はなく、電場、地場、重力場などの「場」について研究をしていたようで、それがやがて「統一場理論」として発表されます。
現在は電場と磁場に関しては電磁気学として論じられていますが、重力場だけはまったく解りませんでした。
それでも挫けず世界の物理学会は研究を続け、1964年に英国の物理学者ピーター・ヒッグス博士とフランソワ・アングレール博士が「ヒッグス粒子」という存在を予言します。
「質量の起源の理解につながる機構の発見」として脚光を浴びますが、果たしてそんな素粒子が存在するのかどうか、実証実験はなかなか行われませんでした。
質量の秘密が明らかになれば重力の謎も解けるはずです。物理学会はいかにしてヒッグス粒子を見つけられるか、その方向に向かって進み始めます。
2012年になって、スイスのジュネーブ近郊にある欧州原子核研究機構(CERN)のATLAS実験チームが、ATLAS検出器によってヒッグス粒子の崩壊を観察します。
しかしヒッグス粒子の詳細が判りませんでした。そしてその原因が大型ハドロン衝突型加速器(LHC)という山手線ほどのサイクルで加速する装置だったからだという事なのです。
そこで物理学会はどうすればもっと制度を上げてヒッグス崩壊の実験が可能かどうかを検討し、結論として「直線で衝突させれば良い」ということになったのです。
そして提案されたのがILC(国際リニアコライザー)なのです。
物理学は我々の生活を進歩させてきました。電気や電波、そして磁場などの研究の成果が、われわれの周りにはいくらでも有ります。
そしてその物理学をさらに進展させることによって、われわれの生活を変えていくことが可能なはずです。
しかし理論物理学で到達した結果は、実証実験を必要とします。そのためには莫大な費用が必要になるのです。
ILCに必要な経費は8000億円。物理学の実験装置としては安い方かも知れません。これを日本に設置して欲しいと言うのが国際物理学会の要望でした。
しかも3000億円は国際機関が各国から集めて出資し、、日本は残りの5000億円でいいという話でした。
世界に対する日本の貢献がこれで上がります。そして未来の希望が見えてくるこの申し出に真っ向から反対したのが財務省でした。理由は「そんな金はない」という理由にならない理由です。
このような物理学の施設は確かにすぐに利益などは生み出しません。だからこそ民間企業などには出来ないので複数の国家にお願いするわけです。
財務省が「お金がない」と言うのは財務省にお金が無い、即ち財務省の権限内にお金が無いだけです。財政法という法律がありますが、これはインフレ防止だけに効果がある法律でデフレの時には逆効果になっているように感じます。そして法律ですから国会で変えることは可能です。
と言う訳かどうか、日本国政府は国内に建設を誘致する可能性を検討するため、欧米との国際協議に入る方針を固めて、3月7日に東京で開かれる物理学の国際会議で、ILCについて方針を明らかにするそうです。
日本政府の誘致に対する態度は平成32年度にも正式決定する見通しで、それまでは欧米とILCの運営や組織の在り方などの意見交換から始め、総額8000億円に上る建設費の分担についても各国の基本的な考え方を確認して行く方針だそうです。
やっと日本政府は、誘致に前向きな姿勢を国際物理学会に示し、日本政府は誘致を真剣に検討する意思があることを世界に示すことになりました。
少し希望が見えてきましたね。
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