2015年6月2日火曜日

X-37Bの目的は何か

5月31日、アメリカ空軍はフロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、「X-37B」というスペースシャトルタイプの無人機を打ち上げました。使用したロケットはアトラス5ロケットでした。

このX-37Bは、全長が8.9m、高さ2.9m、翼幅4,5mという過去のスペースシャトルの約4分の1の大きさで、人間は乗ることが出来ません。

極秘のミッションなのかどうか、その打ち上げ目的は明らかにされていませんが、今回は恐らく機能テスト的な意味を持っているのではないでしょうか。(もっとも、今回で4回目の打ち上げですけど)

南シナ海の情勢が緊迫する中、米中戦争をいかに戦うかが焦点になっているアメリカの軍事事情です。人命尊重という見地からかどうか、アメリカ軍人が死なない戦争を目指す技術開発のすさまじいスピードは、中共が南沙諸島を信じられないスピードで埋め立てているのとの競争なのかも知れませんね。
フィリピンから米軍が撤退したのが1991年、中共が南沙諸島に入ってきたのが1995年でした。この無人シャトルの開発は1999年からボーイング社で始まっています。

秘密に包まれたこのロボット宇宙船について、発表されていることは・・・
1.小型の人工衛星を積み込むのには十分な貨物室がある。
2.キセノンガスを使うイオンエンジンに似た次世代の電気エンジンを持つ。
3.複数回の再使用が可能である。
4.グローバルフォーク、プレデターなどの無人飛行技術を進化させている。

極秘のベールに覆われたこのロボット宇宙船ですが、専門家などから様々な評論が出ております。
「宇宙から敵国を監視する無人偵察機や、宇宙から敵国を爆撃する『宇宙爆撃機』として使用できる。」(欧米メディア関係者)
「(現在は)監視や偵察、ミサイル警報、気象予測など多くが宇宙科学に依存している。燃料コストを下げることで宇宙船運用の柔軟性や寿命が向上する」(米空軍研究所宇宙ミサイルセンター司令・トム・マシーロ少将)
「特定できないが再利用可能な宇宙船の運用概念の進展を(この宇宙船は)後押しする」(空軍広報担当・クリストファー・ホイラー氏)
「宇宙空間で太陽光などに長期間さらされた際の宇宙船への影響の調査」(米軍事防衛専門のニュースサイト、ディフェンス・ワン)
「敵国の人工衛星を破壊して代わりに積み込んだ自国のスパイ衛星を宇宙空間に配備する(逆スパイ衛星)」(機密情報研究家・スティーブン・アフターグッド氏)

無人機とは、最近出てきたドローンというラジコンの飛行機とは違います。基本的な自立飛行が出来て、そこにミッションを記述したプログラムが送られ、それに基づいて一連のミッションをこなすのが無人機です。
地上で操作するパイロットは、自立飛行の映像を見ながら、チェックポイントが発見されるとその部分の偵察プログラムを送り、情報収集に努め、爆撃を行う場合はターゲットを見つけた後はそれを見失わないように操縦しながらピンポイント爆撃を行うわけです。

操作技術は、月面探査や火星探査ロボットで経験済みですが、今度は地球上空の衛星軌道で安全保障目的で行うための開発だと思います。
月までの信号往復時間は2.6秒、火星までの信号往復時間は25秒ですから、地球衛星軌道であればほとんど地上と変わりませんね。

21世紀になって、安全保障の概念は国家間紛争だけではなく、自然災害も含めて安全保障とする傾向が出始めています。
ですからトム・マシーロ少々が言うように、「監視や偵察、ミサイル警報、気象予測」が同一線上に並ぶことは新しい安全保障の概念からくるのでしょう。
気象予測から、海の異変、火山活動、地震監視など総合的な安全保障の手段としてのロボットシャトルを開発していると言うのが正解ではないでしょうか。

シャトル化するのは、これらロボットは常に燃料の制限があるからです。燃料切れを起こす前に基地に帰還し、満タンにして再び宇宙へ向かうわけです。
そういえば鉄腕アトムも常に「エネルギー切れ」に苦しんでいましたね。

監視、偵察、そして必要ならばピンポイント爆撃。そして気象情報の取得と、その他の自然情報の取得。
アメリカが南沙諸島を監視すると述べた裏には、単に偵察機を飛ばすのではなく、宇宙高度からの無人機による監視を示唆していたとも思われます。

「南シナ海は歴史的にも中共の領土。人民解放軍はここを守る」などと勇ましいことを言っていますが、相手がアメリカのロボット兵器であればどうなるでしょうか。
南シナ海のど真ん中、公海上に埋め立てた小さな島は、ロボット爆撃ですぐに壊滅させられること、理解出来ているのでしょうか?
応戦したところで、相手はロボット。そして死んでいく兵士は生身の人民解放軍兵士なのですよ。

安全がほぼ確定したところで、海兵隊が上陸していきます。そこは太平洋戦争時と変わってはいませんけどね。

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