2015年6月14日日曜日

「財務省脳」ってご存知ですか?

経済学者の青木泰樹氏が使っていた言葉で、「経済成長による自然増収などたいした額ではないので、それに頼ってはならない。財政再建はあくまでも歳出削減と増税でやり抜くしかない」と主張する脳ミソのことだそうです。

そこからプライマリーバランスにこだわり、「増税」と「歳出削減」で財政の健全化などと言いながら財政を悪化し続けてきたのが財務省脳なのです。
小泉政権の時代、「歳出削減」の中で経済活性化を行うには「構造改革(規制緩和)こそが必要」などと叫んでおりました。しかし、それから10年以上を経た現在も潜在成長率は低下の一途をたどっているわけです。

青木氏は「潜在成長率を押し上げられなかったことで、構造改革は全く無駄だった」と断言しておられます。歳出削減をするのであるならば、それに見合った総需要拡大策をとらなければ景気が悪化することは間違いありませんが、財務官僚や有識者と言われる主流派学者はそれを構造改革で行えると考えたのでしょう。無責任な人達です。

多少、現実的に考える学者は、歳出削減分を供給能力の増加によって埋め合わせればよいと考えているようです。しかしこれは「造れば売れる」という「セイの法則」から出て来る発想です。
このセイの法則は19世紀中ごろから20世紀前半まで経済の主流でした。フランスの経済学「ジャン=バティスト・セイ」と言う人が言いだした自由放任主義の経済論です。

この自由放任主義経済学だけではダメだと言って、「有効需要の原理」を発表したのがジョン・メイナード・ケインズ氏でした。(何度も経済破綻がありましたから)
どうやら財務官僚や主流派経済学者達はケインズ経済学を学んでいないようですね。

確かに一時期、ケインズの理論は「社会主義」だと言われて批難されていた時期もありました。英国のサッチャー元首相もこの「自由放任主義経済」を推し進めた政治家です。

この「自由放任主義経済」から出て来る「歳出削減と規制緩和の組合せ」は、結果的に見て「デフレ化政策パッケージ」に他ならないと言うことです。
小泉構造改革から10年を経てもデフレは進行し続け、英国などは経済破綻に瀕しております。
ここまで明確になってきても、財務省脳はほとんど思考停止状態で「歳出削減、プライマリーバランス確保、国債残高を増やすな・・増税しか解決策はない」と言い続けているわけです。

国債残高の累増問題がこの発言の根拠になっているようですが、家計簿とは違います。現実には日銀が国債を大量に買い取っていて、ほとんど問題は出ておりません。
日銀は一般銀行から国債を買い取って現金を渡しておりますが、その現金を借りるはずの民間企業がまだ疲弊しています。ですから政府がさらに国債を発行して公共投資(軍事関係でいいですから)を行って市中に出さないと民需が湧いてこないのは当然です。
財務省脳の人達にはにはそれが全く分かっていないようです。

日銀が国債を買い取っても、バランスシート上の借金として数字として残ります。それだけのことです。この借金、だれも返せとは言わないでしょう。

アベノミクス第二の矢は財務省を軽蔑するかのごとく効きました。財務省の予算(予測)に対して2013年度は3.9兆円の税収の上振れがありました。
また、2014年度も税収予測が、消費税増税分を除いても4兆円前後の税収増があると言うことです。

このように財務省の予算(税収予測)がこれほど外れた原因こそ、経済成長による自然増収を過小評価したがる財務省脳にあると言う訳です。

経済成長による税収増のことを「税収弾性値(税収変化率/名目GDP変化率)」と言うのだそうです。これを低く見る財務省の悪弊、それこそが財務省脳の問題点と言う訳ですね。
財務省は現在も1980年代のデータから算出された、税収弾性値「1.1」を使って税収予測を立てているとか。
「税収=消費税(比例)+所得税(累進)+法人税(比例)」として、現実経済は平均的には長期均衡軌道上にあるとして、税収弾性値を1に近づけようとしているみたいですね。

しかし、需給ギャップが存在する場合、法人税率が所得税の平均税率を上回っている限り、経済成長による税収弾性値は「1」より大きくなるそうです。

その理由は、景気が上向くとき、労働分配率は低下するからです。なぜなら人件費の部分は景気に即座に反応しないからです。
必然的に景気拡大の恩恵は法人にもたらされ法人税収は増加し、さらに赤字法人も黒字化することによって納税側に加わります。
つまりデフレ脱却途上にあり、需給ギャップが存在する現在の日本経済において、成長による財政再建効果は大きい、少なくとも財務省の想定よりかなり大きくなるわけです。

この成長促進のための第二の矢をまだ続け、人件費の部分が増えてくれば民需に火がつきます。そうすれば経済はほおっておいても成長する局面に入るでしょう。そこで第二の矢を打ち止めにすればいいのです。第三の矢、「成長戦略」はここからスタートさせれば良いのです。

日本の敵は中共だけでなく、この財務省脳も同じ部類かも知れませんね。
財務省脳の健全化こそが、財政健全化より早めに行うべきではないでしょうか。

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