2015年6月8日月曜日

急がれる情報守秘の世論形成

陸上自衛隊の元幹部(60歳・平成21年退官)が、ロシア大使館関係者らと接触し、職務上知り得た情報などを漏洩していた可能性が出てきたとか。
警視庁公安部が、この元幹部の自宅を家宅捜索したり、事情を聴いたりしているそうです。

容疑は、「陸上自衛隊の戦術などについて記述された『教範』と呼ばれる冊子を譲渡した可能性がある」ということらしいですが、重要性の高い情報を漏洩させた可能性もあると見て捜査が続けられているとか。

この元幹部が接触していたのは、ロシアの「参謀本部情報総局」(GRU)に所属している人物で、この機関は多数のスパイを「外交官」として世界各国の大使館などに送り込んでいるそうです。

このようなスパイ事件が、我が国で摘発されることは稀でしたが、法改正がなされ今後は増える傾向にあるのかも知れません。
そして問題なのは、軍事情報だけでなく日本の民間企業のハイテク技術や、同盟国の米国がもたらす最先端の軍事技術などもGRUの標的になっているということです。

GRUの標的は自衛官だけでなく、日本の電機大手子会社の関係者にも伸びております。2005年に、この電機大手子会社関係者に接触してきた在日ロシア通商代表部員と名乗るロシア人が、半導体関連など、軍事にも転用可能な技術情報を、現金の見返りにして、この関係者から入手していた事件がありました。

2008年には、ロシア大使館の元2等書記官が内閣情報調査室の男性職員に近づき、やはり現金の見返りにして、政府の施策に対する世論の動向や海外の反応に関する調査・予測などの「内部資料」、中共関連や衛星など機密性の高い情報などを渡していた事件もありました。

戦前、日本にはこのような情報漏えいを防衛する機関とか、国外情報を収集する機関がありました。映画によって有名になった「陸軍中野学校」もその一つだったはずです。
戦後、この日本の情報戦略が杜撰であったような噂も出ました。現実にどうだったかは判りませんが、少なくとも現在よりはしっかりしていたと思います。

戦後70年。武装解除され、GHQやサヨクの監視の中で日本の情報防衛はまったく廃棄されてしまいました。そう、国民の意識の中からも・・・
それが北朝鮮の拉致事件のような、国民の生命と財産をも守れない腑抜け国家になってしまった原因ではないでしょうか。
北朝鮮だけでなく、中共や韓国もさまざまな形で日本から技術情報などを盗み出し、市場などで日本のライバルになったようにも感じます。

またこの状態が続けば、友好国からも情報に関しては友好ではなくなってしまうでしょう。敵国に情報が筒抜けの状態では、注意せざるを得ませんからね。

安倍政権のもとで、この情報戦略も練られております。しかし70年のブランクは厳しく、すでに戦時中に情報部員として働いていた経験者は一人も居りません。(亡くなりましたから)
だからといって、このまま放置しておくわけにもいきませんね。2013年に成立した「国家安全保障会議」から日本の情報戦略がスタートしました。

残念ながら日本はいまだ武装解除されたままなので、国防軍がありません。ですからこの国家安全保障会議も行政機関として機能させるしかなく、日本の情報防衛と、世界からの情報収集がどこまで出来るかは疑問でもあります。なにしろ公務員という立場だけで、軍人という立場がありませんからからね。

情報関係は商売ではありませんが、取引がなされます。金銭によって情報を買う場合もありますし、情報同士を交換する場合もあるでしょう。スパイ映画でもこの様なシーンが出てきますが、現実はもっと切実で、人間関係も重要な戦力の一つです。

このような人間関係を中心とした諜報活動を「ヒューミント(HUMINT=Human intelligence)」と申します。そして最近の諜報活動として「シギント(SIGINT=signals intelligence)」が重要視されております。
これは通信、電磁波、信号等を媒介とした諜報活動のことを指しますが、電話の盗聴、インターネット、メールなどの盗聴と分析、水中音響情報などによる敵潜水艦の情報、偵察衛星・無人偵察機などからの情報、さらにビッグデーターの処理のようなソフトウエアサイエンスに基づく諜報活動と、こちらの幅も広くなっております。
インターネット上で無料で使えるメールやSNSの中には、このシギントの戦略の一環だと考えられるものもあるようですね。

このシギントは、世界を網羅する情報ネットワーク(インターネット)によって収集した情報を地球規模で分析し意味を捉えていく方法が求められます。(もちろんヒューミントも含めますけど)
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5か国(アングロサクソン国家)が連携して行っています。これを「ファイブアイズ(5つの目)」と呼んでいるようですね。

このファイブアイズのネットワークをさらに拡張し、日本などの非アングロサクソン国家も入れて、電子マネーの動きなども諜報活動に融合させていけば、世界は本当に「神の目」を具体化したことになるように思うのです。
その為に、我が国も早急に情報局を再整備する必要がありそうですね。それには国民の理解が必要ですけど・・・

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