2015年3月27日金曜日

マレーシアの「新幹線」

マレーシアの首都クアラルンプールと隣国シンガポールを約1時間半で結ぶ高速鉄道(全長約350キロ)の建設計画をマレーシアは持っています。

当然ながら中共の新幹線と日本の新幹線が受注合戦を行うことになります。日本の新幹線は「安全性能と運用(教育も含め)」を売りとし、中共は「世界最高スピードと価格の安さ」を売りにしております。

中共が発表している世界の高速鉄道スピードランキングでは・・・
1) トップは中共の韶関(広東省)-耒陽西(湖南省)間の和諧号24号で、時速316.6キロ。
2) 次は中共の衡陽(湖南省)-韶関(広東省)間のG1011号で、時速313.4キロ。
3) 次は中共の広州南(広東省)-長沙南(湖南省)間のG66号で、時速309.5キロ。
と、このようにして6位までが中共であることを誇示しています。

そしてフランス、スペインの高速鉄道が続きますが、時速300キロ前後の速度を記録していて、13位に日本の東北新幹線、「はやぶさ4号、5号」の大宮-仙台間で、時速263.4キロと続いたそうです。
そして広島-小倉間の「のぞみ1号、95号」が時速256キロ、岡山-広島間の「のぞみ53号」の時速255.7キロ、新横浜-名古屋間の「のぞみ301号」で、時速246.6キロと言うわけです。

しかし日本は2015年になってから、時速300キロの営業運転も始まっています。山陽新幹線を走る500系新幹線「こだま」がそうですが、大陸と違って日本国内ではスピードはあまり評価されません。

中共のマスコミは、「中共の鉄道は圧倒的な速さを誇っている」と報道しております。しかし新幹線はスポーツではありません。早ければいいというものでもないのです。
2011年、中共・浙江省を走る高速鉄道で多数の死傷者が出る大事故が発生しています。この事故では事故後の対応のまずさも露呈しました。

マレーシアのマスコミは「(日本の)新幹線は高い安全性が売りで、50年間、運行中の事故による死者は1人も出ていない」として高い安全性を称えました。
そして、マレーシアの高速鉄道計画実現に向けて、「日本政府は、技術担当者や運転士の訓練を含めた支援の提供に積極的であり、クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道の成功がもたらす2つの国の変化は、まさに過去50年で日本で起きたことそのものと同じになるだろう」と述べております。
さらに「都市間の移動時間を短くすることは、景観のみならず、政治や経済、社会状況などを一変させる。マレーシア政府の20年までに高所得国の仲間入りをさせるという野望の実現に近づく」と、マレーシアがこれから進む「豊かさへの道」を、高速鉄道に託しているような言い方です。

ここまで見ると、マレーシアはすでに日本の新幹線を買う気持ちなのではないかとも思えますが、陸続きの国は国境に於いて中共の新幹線と相互乗り入れする必要もあるわけで、日本側にとってやりにくい問題も出ているようです。

高速鉄道による経済発展への期待は、東南アジア全体にある期待でもあります。タイ暫定政権のプラユット首相は、「わが国に高速鉄道ネットワークが出来れば、低所得者を含む国民の生活が豊かになる」と述べ、2月末のテレビ演説で「今年中に具体的な進展」を目指すと表明してしまいました。
タイ王国が混乱に陥ったのも、貧困が撲滅できなかったからだ・・と言う思いがあるのでしょう。来日して安倍首相と会談し、関西経済連合会などとの懇談のため、東海道新幹線「のぞみ」の最新車両N700Aで移動し大阪に着いたあと、「(新幹線は)素晴らしい」と感想を述べました。
プラユット氏は中共で高速鉄道を利用した経験もあり、「乗り比べ」で新幹線の快適さや安全性を実感したようです。

先進国の英国では、ロンドンと主要都市間を結ぶ高速鉄道網が整備されていますが、車両製造を日立製作所が受注しています。その最初の車両が3月12日、英南部サウサンプトン港に陸揚げされ、これから試験運転がされるそうです。
エコノミスト誌(英国のマスコミ)は、「日本は高速鉄道の製造・運行面で世界的なリーダーである」として「日本の新幹線は模範として取り上げられ、英政府はその技術を習得したいと願っている」と述べています。

先進国のアメリカでも、サンフランシスコとロサンゼルスの間の高速鉄道計画が動き出し、その起工式が1月にカリフォルニア州フレズノで行われました。2029年までに完成する予定だそうですが、まだ車両や運行システムの入札はこれからで、日本や中共、欧州諸国などによる激しい受注競争が繰り広げられると思われます。
カリフォルニア州は地震多発地帯であり、中共のマスコミは「(発注者側は)価格面ではなく、安全性を重視する。楽観は出来ない」と述べております。

我が国の新幹線を売り込むとき、競争相手が中共の場合は、「運行の採算ベースの計算では、共産主義国家と自由主義国家では異なってくると思います。日本の採算ベース算出には、ビジネスだけでなく地方の特色を生かした観光資源の開発も念頭にあります。それをどのようにアピールしていくか、そこまで踏み込みます。」と言うのはいかがでしょうか。

これから開業される北海道新幹線の広報映像のURLを以下に挙げます。
https://www.youtube.com/watch?v=RrVwNeGQ7xc&feature=youtu.be
まだ採算がとれるかどうかが判らない北海道新幹線です。開業は今年の暮れ・・・皆さんはこの広報を見て北海道に行きたくなるでしょうか・・・行きたくなれば、この広報は成功ですね。

観光だけでなく、新幹線の消耗部品工場は現地に作り、その地の人を雇用するなど、「高くても、結局お得」という売り込みを掛ける対策も必要だと思うのですが・・・。

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