2013年4月20日土曜日

TPP交渉と日本型経済システム


日米で行っているTPP交渉参加交渉で合意文書が発表されました。
見てみると、自動車も農業も保険も、すべてアメリカ有利に傾いております。安倍政権には交渉力があるといっていた首相ですが、どうしたことでしょうか?

アメリカが輸入自動車に掛ける関税は、TPPで認められる最長の10年を認め、米などの農産物を関税撤廃の例外とする話は先送り。
そして簡易保険(生命保険)の業務拡大は、当面の間は認可しないなどという約束をさせられる有様です。

しかし、安全保障分野では、北朝鮮の核ミサイルと中共の海洋進出に備えて、日米同盟を強化しアジア太平洋地域の安全と安定(法治)を強化することに合意したということでした。(覇権とは、その地域に自国の法律を適用させること。東シナ海で中共の法律を使わせないという意思表示です)

すなわち経済面を譲って、安全保障面を約束させたという構図です。70年近くも安全保障分野において「サヨク勢力」に抑えられ、軍事強化をしてこなかった「つけ」が、今回のTPP事前交渉で再認識させられた恰好ですね。

そしてTPP交渉とは別に、経済財政諮問会議で安倍首相は「日本型市場経済システム」について語っておられます。
すなわち、「米国のような市場万能・株主至上主義のシステムでは、個人や株主の収益だけが優先される。これに対し日本企業では、株主だけでなく、顧客、仕入れ先、従業員、地域社会など、あらゆる関係者の利益を考える経営がなされてきた。このよい面と、米国型の競争原理を組み合わせた新しい経済システム」を「日本型市場経済システム」と言うのだそうです。

これは、言い方を変えると「一方向型の経済システム」でなく「双方向型の経済システム(日本型)」ということで、中沢新一氏の「対称性人類学」という著述を読めば、安倍首相がどうするつもりかが見えてきます。そしてアメリカ人にはこれはわからないでしょう。もちろん中国人にも・・・。

山から木を切り出した後には、山の神に捧げもの(お礼)をするのが常識であり、それが日本の「植林」という行動に表れているというわけです(対称性の理念)。収奪する経済学から。収奪と返還を考慮する経済学の提唱、すなわち「一神教の理念」ではなく「八百万の神の理念」が日本型ということになりますね。

TPPでの交渉と言っても、それはほとんどアメリカとの交渉であり、経済破綻のアメリカが破れかぶれでなにをするか判らないという状況下の交渉であることが、日本国民の心配するところでしょう。
しかし、「非対称経済」を常識とするアメリカを相手にして、対称性の経済学を打ち出せば、少し長期の経済を考えれば日本が有利なのですよ。(額に汗して働けることの幸せです。失楽園の一神教には理解不可能でしょう)

安全保障の分野ですが、こちらは経済とは全く異なる分野です。
経済というものは、「今(now)」を考え行動の決定をするものです。ですから、いくら経済学を学んでも「明日の株価」は絶対に判りません。
これに対して「安全保障(軍事と自然災害を含む)」というものは「もしも(if)」を考え行動の決定をするものです。ですから歴史に「もしも(if)」は無いと申しますように、過去ではなく未来を考え準備するのが安全保障というものです。

経済合理性は経済だけで考えるもの。安全保障上の合理性は経済のそれとはまったく背反します。
無駄であっても備えることが重要であり、無駄であることを「良し」とするのが安全保障というものなのですからね。
巨大な堤防を莫大なお金をかけて作るのは経済合理性には合いません。しかしそれは「安全保障」の合理性には合うはずです。そしてそれが役に立たなかったら、それが一番良いのです。
同様に、F35戦闘機に莫大なお金を掛けても、それは「安全保障」の合理性には合うのですね。そしてF35の出番が無いのが一番良いのです。
このところ中共のおかげで、F15戦闘機が毎日のように役立っておりますが、これは決して良いことではありません。

オバマ・アメリカは、TPP交渉ではアメリカ国内の保険屋などの圧力で動いているようです。銃規制一つ出来なかったオバマ政権。ライフル協会からの圧力もあったでしょう。自動車業界からの圧力もあったり、また、アメリカの生産農家の圧力もあって、農産物の例外扱いが先送りにされたことも、安倍政権は判っています。
何とも気の毒な「オバマ政権」ですね。

TPP交渉における安倍政権の行動。7月の参議院選挙を乗り越えてから、もっと面白くなりそうですね。

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