2012年8月7日火曜日

アメリカ・キュリオシティ、恐怖の7分間を克服


アメリカ、NASAが、2011年11月に打ち上げた火星探査機「キュリオシティ」が、昨日未明、無事火星に到着しました。
先ずはおめでとうございます!

火星にも薄い大気があり、着陸には地球帰還と同様の摩擦熱が生じます。その熱の温度は摂氏1900度と言いますから、やはりとても難しい軟着陸です。
キュリオシティは全長約3メートル、重量900キロという巨大なもの。

2004年1月25日に火星に着陸した火星探査機「オポチュニティ」は全長 1.6 m で重量180 kgというものでしたから、今度の キュリオシティはかなり大型になっています。
この大きな探査機を搭載したカプセルが、火星大気圏に突入するときのスピードは時速2万1200キロという速さです。
オポチュニティまでの火星探査機は技術の粋を集めた巨大な「エアバッグ」に守られて火星に着陸・・と言うよりは落とされていました。
しかし、キュリオシティには、このエアバック方式は使えません。重いこと、そして大きいからです。

しかも有機化学および宇宙科学のラボが搭載されていて、その実験設備は、これまで火星に持ち込まれた機器の中でも群を抜いて複雑で、高い能力を持っているとか。
キュリオシティに付けられたマニピュレーターも大きくて、とてもエアバックでは守りきれません。

NASAの研究者たちは、このエアバック方式を断念し、さらに複雑な手順を採ることにしました。
その第一段階が、カプセルの向きを整え、耐熱シートが必ず下(突入先端方向)に向くようにして、その摩擦熱に耐えることと、その摩擦によってカプセルを原則させること。

第二段階は、超音速対応パラシュートを用いてカプセルの速度をさらに大幅に減速させること。

第三段階は、「動力つき降下ビークル」を使うこと。このビークルはカプセルを脱ぐ形で現れ、8基の逆噴射ロケット(マーズ・ランダー・エンジンと呼ばれる)を使ってさらにスピードを落とし、滑空状態に持って行く。

第四段階として、ビークルが探査車と運搬機を静止状態に近いところまで減速したあと、火薬が仕込まれたボルトを点火し、耐熱シールドから探査車を切り離す。
この状態で、火星地上から18メートルまで降下させます。

第五段階は、この着陸プロセスで最も斬新な(そして議論を呼んでいた)「スカイクレーン」の登場です。滑空するスカイクレーンと3本のナイロン製の懸架ケーブルで探査車を吊るし、パラシュート降下でゆっくりと地表に近づいて行きます。これで地上に降りる速度は時速2.7キロ。軟着陸というわけです。

さて、この複雑なプロセスに対して、地球からの無線操縦は出来ません。高温とスピードは、そのような手段を受け付けないのです。
すなわち、第一段階に入る直前のわずか数秒を使って、全操作のプログラムを送り込み、あとはそのプログラムが思惑どうりに機能して、目的を達成してくれることを祈るのみです。
その間7分。それが恐怖の7分間というわけです。

2012年8月6日未明、NASAに歓声が沸きました。すべては思惑どうりに運んだのです。大成功でした。
アメリカがその威信を掛け取り組んだ「火星へのビジョン」。その命運を掛けたキュリオシティの軟着陸は成功裏に終了しました。

着陸地点は過去に水の痕跡が発見された赤道付近の「ゲール・クレーター」です。これから2年間、搭載された10種類のハイテク機器を駆使し、火星の土壌や大気を分析して炭素や窒素、酸素などの痕跡を探ります。
火星探検は第二ステージへ入ったようですね。

経済的な失敗(リーマンショック)以降、アメリカを苦しめてきた威信の低下。アメリカの信用が少し回復されたようです。
宇宙開発に対する自信を取り戻し、また昔の強いアメリカになって欲しい・・・そんな気がいたします。

国際宇宙ステーション(ISS)の運用などは、すでに民間企業の仕事になっています。
日本も、今後のコウノトリの運用は、政府機関のJAXAを離れて、三菱重工業が引き受けるようです。

もっとも、宇宙技術の敵国への流出だけは気をつけてもらいたいですが・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿